東京高等裁判所 昭和57年(ネ)3324号 判決
後遺障害による逸失利益の算定は、自動車損害賠償保障法施行令二条別表(等級別後遺障害)(以下「自賠令別表」という。)及び労働基準局長通牒昭三二・七・二基発第五五一号別表「労働能力喪失率」によるのが妥当であるところ、自賠令別表のうち、視力障害に関する部分は、その趣旨に照らし、事故前は両眼とも正常であることを前提としていることは明らかであり、また両眼で物を見るという眼の身体的特性からいっても、両眼を一体とした視力を問題とすべきであるから、両眼に既に視力障害のあった者が事故により一眼について既存の視力障害の程度が重くなった場合に前出各別表を利用するにあたっては、事故前と事故後の両眼の状態についてそれぞれ対応する労働能力喪失率を出し、その差をもって当該事故による労働能力喪失率とみなすべく、被控訴人主張のように、他眼を捨象し、一眼のみに着目して考察すべきではない(この点、当事者間の損害賠償の場合と、公的保険である労災保険の保険給付の場合とで必ずしも一致すべきものではなく、後者においては、政策的配慮があっても然るべきである。)。
本件の場合、被控訴人は、前認定のように元来最高度近視者で、本件事故前にこれによる既往症もあり、その両眼の矯正視力は〇・三ないし〇・四であったのであるから、自賠令別表第九級の一に該当する障害が存在していたものであり、これに対応する労働能力喪失率は、三五パーセントとみるべきであったところ、被控訴人は、本件事故により左眼がほとんど失明の状態になり(これは「失明」と同視しうる。自賠令別表第八級の一参照)、右眼の視力が従前どおりで、全体として自賠令別表第七級の一に該当する障害者となり、これに対応する労働能力喪失率は五六パーセントとみるべきであるから、結局、本件事故に起因する被控訴人の労働能力喪失率は、その差である二一パーセントと認めるのが相当である。
(小堀 吉野 山崎)