東京高等裁判所 昭和57年(ラ)701号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【判旨】
一抗告人は「原決定を取消す。」との裁判を求めた。その理由とするところは、原決定は、本件差押物件の最低売却価額が手続費用及び差押債権者の債権に優先する債権を弁済して剰余の見込みがないとの理由で、本件強制競売手続を取り消したが、抗告人に優先する債権者である大蔵省は、既に差押債務者の他の不動産を差し押えており、右差押えによる競売手続が進行すれば、当然に大蔵省に配当がなされ、本件優先債権は大巾に減額し、本件において優先債権を弁済して剰余の生ずる見込みがないとの事態はなくなるのであるから、最低売却価額と優先債権額とを比較して形式的に判断した原決定は誤りで、取り消すべきである、というにある。
二記録によれば、本件強制競売手続は、抗告人の元本四〇〇〇万円及びこれに対する昭和五六年一一月二九日から支払いずみまで年三割の割合による遅延損害金に基づく申立てにより開始されたものであるところ、東京都葛飾都税事務所長から昭和五五年度及び昭和五七年度固定資産税、昭和五六年度自動車税の各滞納金合計一三万一三九〇円及び延滞金(昭和五八年一月末までの延滞金の額は二四万二〇〇〇円)、東京都葛飾区長から昭和五五、五六年度の特別区民税、都民税の各滞納金合計二三七万五九七〇円及び延滞金(昭和五八年一月末までの延滞金額は五二万五四〇〇円)、葛飾税務署長から昭和五二ないし五六年度源泉所得税滞納金合計一六〇一万七八一七円、加算税一九七万五一六六円及び延滞金(昭和五八年一月末までの延滞金額は四七三万二五三四円)の各交付要求がなされたが、一方評価人中見利夫の評価によれば、本件差押物件の価額は一五五一万円であつて、原裁判所は右評価に基づいて最低売却価額を右同額に決定し、抗告人主張とおりの理由をもつて、本件強制競売手続を取り消す旨の決定をしたことが認められる。
三右認定の交付要求債権は、国税又は地方税であつて、抗告人の債権に優先することが明らかであるところ、右認定事実によれば、本件最低売却価額をもつてしては、手続費用及び右優先債権を弁済して剰余を生ずる見込みのないこともまた明らかである。
仮に抗告人主張のように滞納国税について別途に競売手続が進行中であるとしても、同手続により国税に弁済充当される確定金額が不明であるから、本件においては、右滞納国税全額を優先債権として取り扱わざるを得ないし、そうである以上、原決定は相当であり、なんら違法の点はないというべきである。
(中島恒 真榮田哲 塩谷雄)