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東京高等裁判所 昭和57年(行ケ)113号 判決

一 請求の原因1及び2の事実については、当事者間に争いがない。

二 そこで、審決を取消すべき事由の有無について判断する。

1 本願意匠の構成

成立に争いのない甲第二号証(本願類似意匠登録願書及び添附図面)によると、本願意匠の形態は、次のとおりのものと認められる。すなわち、下段から順次細径とした五本の異径管を所望の長さに伸縮自在に調節設定できるように嵌合させ、最下段の外筒管上端寄りに目盛函を配置し、最上段の内筒管先端に係留具を設けた構成であり、これを具体的にみると、最下段の外筒管は断面形状が円形の円筒管であり、下端に端末保護キヤツプを付置させ、外筒管上端寄りに配置された目盛函は、その背面側が横断面半円形となつてはいるが、扁平なほぼ直方体とみられる形状の上方一隅を台形状に斜切欠し、この領斜面に目盛窓を配置し、その下方隅は円弧状に角丸として、この目盛函を一方に大きく突出させて取付け、また、内筒管は順次内接摺動するように細径の円筒管とし、最上段の内筒管先端には、ほぼS型状の係留具を取付け、外筒管と中央三本の内筒管との各先端に取付けた短円筒形部材の上縁周側を円錐台形状としたものである(図面(一)参照)。

原告は、本願意匠についての審決の認定には見落しや誤認があると主張するが、審決が、本願意匠の要旨の認定において、原告指摘のように、目盛函の背面側が横断面半円形になつている点を明確に摘示してはいないとしても、これはこの点を看過したものではなく、本願意匠と引用意匠との意匠全体としての対比判断において、この点の差異を対比すべき要部としなかつたことによるものとみるのが相当であり、また、前記認定のとおり、目盛函の背面側が横断面半円形であるとしても、目盛函の形状を「扁平なほぼ直方体の上方一隅を大きく台形状に斜切欠し……」と表現した点を誤りということはできず、更に、外筒管と中央三本の内筒管との先端に取付けられた短円筒形部材の上縁周側を円錐台形状としたものを、原告は先端保護キヤツプであつて、審決認定のような締付リングではないというが、添附図面や「意匠の説明」に徴しても、各内筒管が専ら摩擦係止するような部材でつくられていることは直ちに理解できないところであるから、意匠に係る物品の通常の用い方や添附図面における図示等から、審決が締付リングと認定したことは、きわめて常識的かつ相当な認定というべきであり、右認定をもつて誤りとすることはできない。したがつて、本願意匠の形態に関する審決の認定には、違法とすべき誤りはない。

2 引用意匠の構成

成立に争いのない甲第三号証(昭和四八年四月一三日登録出願、昭和五二年七月一五日登録の第四六三四〇三号意匠に係る意匠公報)及び同第四号証の一(意匠登録願書及び添附図面代用写真)によれば、本願意匠の意匠登録出願より先願である引用意匠は、意匠に係る物品を「直線測定器」(出願の当初は「伸縮自在式直線測定器」)とし、被測定物の長さによりその測定主柱の長さを伸縮自在に調節設定できるものであり、その形態は、次のとおりのものと認められる。すなわち、下段から順次細径とした五本の異径管を所望の長さに伸縮自在に調節設定できるように嵌合させ、最下段の外筒管上端寄りに目盛函を配置し、最上段の内筒管先端に係留具を設けた構成であり、これを具体的にみると、最下段の外筒管は、断面形状において卵形の先細側の先端部を直線状に切欠した形状とし、下端に係留具付の端末保護のキヤツプを付置し、外筒管上端寄りに配置された目盛函は、その両側面の先に向かうにしたがつて厚味が薄くなつており、その下面も緩い上向きの傾斜面を形成しているが、目盛函全体としては、扁平なほぼ直方体の上方一隅を大きく台形状に斜切欠した形態とみられ、斜切欠した傾斜面に目盛窓を配置し、目盛函の先端面には水準器が取付けられ、この目盛函を外筒管の前記直線状に切欠した卵形の先細側の先端部の側に大きく突出させて設け、また、内筒管は、順次内接摺動するように細径とし、最上段の内筒管の先端の側方には、リブ状の突出部を形成して、長方形の板状体の先端が斜切欠された形状の計測片を、折たたみ自在に、かつ、右内筒管の軸方向に対し倒L字状に回転起立させうるように軸着した係留具を取付け、外筒管と中央三本の内筒管との各先端に取付けた締付リングの外周には、縦溝を入れ、両端周側を円錐台形に先細としたものである(図面(二)参照)。

原告は、引用意匠についての審決の認定には見落しや誤認があると主張して(a)ないし(g)の諸点を指摘するが、審決が引用意匠における目盛函の形態について、「扁平なほぼ直方体の上方一隅を大きく台形状に斜切欠」した形状と記述したことをもつて、直ちに引用意匠の目盛函が、両側面の先端に向かうにしたがつて次第に厚味が薄くなつていることを見落したものとは認められず、審決は、むしろ、この点の構成が、原告が指摘するその他の点と同じように本願意匠と引用意匠とを対比し類否の判断をするにあたつて特に対比すべき要部としなかつたことから、目盛函におけるこの点の形状をあえて摘示しなかつたものとみるのが相当である。

引用意匠の認定について、審決を違法ならしめるような見落しや誤りは認められない。

3 類否の判断について

成立に争いのない乙第一号証ないし同第八号証(乙第五号証は実用新案公報、その余はいずれも意匠公報)によれば、樹高測竿尺、計尺棒など間隔測定杆ないしは間隔測定具といわれる器具には、細部をみると種々の構成のものが周知であるが、従来、一般に知られたこの種物品に共通の意匠としては、概ね、次のような基本構成を具えるものであつたことが認められる。すなわち、下段から順次細径とした断面形状を主として円形とする異径管を伸縮自在に嵌合し、外筒管の下端には端末保護キヤツプを付置し、間隔測定杆ないしは間隔測定具で被測定物に係留する必要があるものにあつては、最上段の内筒管の先端に適宜の形状の係留具を取付けると共に、外筒管と内筒管との各先端には、円筒の上縁周側を円錐台状とした先端保護キヤツプないしは締付リングが取付けられたものである。

この種物品に係る従来周知の意匠が共通してもつ基本的構成が右のようなものであるとすると、本願意匠と引用意匠とは、「最下段の外筒管上端寄りに、扁平なほぼ直方体の上方一隅を大きく台形状に斜切欠し、切欠傾斜面に目盛窓を形成した態様の目盛函を一方の側に大きく突出するように設けた構成」において、従来みられなかつた特異なものと認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。したがつて、審決が、右の共通点を指摘したうえで、「就中、目盛函において扁平なほぼ直方体の上方一隅を大きく台形状に斜切欠し、切欠傾斜面に目盛窓を形成している点は、看者に両意匠の特徴を最も強く印象づける点であつて、両者の類否判断を左右する支配的主要部と認められる。」としたのは正当であり、この点の原告の主張(取消事由(二)(2))は理由がない。

そして、前記認定事実に徴すると、本願意匠と引用意匠とは、具体的態様においても、最下段の外筒管の下端に端末保護キヤツプを装着させ、上端寄りに配置された目盛函は、扁平なほぼ直方体とみられる形状の上方一隅を台形状に斜切欠し、この傾斜面に目盛窓を配置し、この目盛函を一方の側に大きく突出させて取付け、また、内筒管は順次内接摺動するように細径として、最上段の内筒管先端には係留具を装着し、外筒管と中央三本の内筒管の各先端にはほぼ円筒状の部材(先端保護キヤツプないし締付リング)が取付けられている点で共通しているものと認められる。

したがつて、これと同旨の審決の両意匠についての対比判断には何ら誤りはない。

ところで、意匠の類否判断にあつては、両意匠の個々の構成部分のわずかな差異にとらわれることなく、意匠の全体を間接的に対比観察して全体として看者にその視覚を通じて違つた印象を与えるか否かをみるべきものであるが、本願意匠と引用意匠とは、前記の各共通点の故に、測定杆と目盛函とが組合わされた意匠全体から受ける感じをきわめて似通つたものとしていると認められる。この点、原告は、目盛函下方隅の形状、外筒函の形状、外筒管と中央三本の内筒管の先端に取付けられた部材の形状ならびに係留具の形状などの差異を、審決は過小評価したと主張する(取消事由(二)(1)、同(三))が、これらの形状の差異は従来周知の意匠に基づいて、きわめて容易になしうる細部の改変にとどまり、意匠全体の感じや印象を左右する特徴のある構成部分とは認められない。

また、本願意匠と引用意匠の形態についてすでに認定したところ及び前掲甲第二号証及び同第三号証によると、目盛函の形状について原告が相違点として指摘する諸点(取消事由(一)(3)(a)ないし(d))は、これを認めることができるが、これらの相違点も、意匠全体として観察した場合には、直線構成の測定杆(主柱)に対して目盛函を極端に一方の側に突出させて形成しているという共通の印象を強めることに寄与しているものと認められ、看者が、右の各相違点から引用意匠にはない特段異別の感じや印象をうけるとみることはできず、むしろ、前記の両意匠に共通の印象のなかに包摂されてしまう程度の微差とみるべきである。

以上のとおりであるから、両意匠の間に部分的な差異があつても、全体として観察した場合には、両者は類似しているものというほかないとした審決の判断には何ら誤りはない。

そして、本願意匠とその先願である引用意匠とが意匠に係る物品を共通にしていることは争いがないところであるから、本願意匠は、意匠法第九条第一項の規定によつて登録を受けることができないとした審決の結論は正当であり、審決には、原告主張のような違法の点はない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註〕 本件に関する意匠は左のとおりである。

図面(一)

<省略>

図面(二)

<省略>

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