大判例

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東京高等裁判所 昭和57年(行ケ)135号 判決

事実及び理由

一  請求の原因一ないし三の事実は当事者間に争いがない。

二  そこで、原告が主張する審決取消事由の存否について検討する。

成立に争いのない甲第二号証によれば、本件考案は、その実用新案登録請求の範囲において、「鉛、又はほぼ同効質製のウエート粒子3・3を前記芯索2とともに防蝕被覆し」としているが、被覆する材料の構成や被覆態様については何ら限定しておらず、考案の詳細な説明における「ウエート粒子3・3及び芯索2をともに樹脂膜で防蝕被覆し」(公告公報2欄四行・五行)も前後の記載からみて、防蝕被覆の一実施例を示すものに過ぎない。したがつて、原告が本件考案の特徴とするウエート粒子3・3と芯索2の防蝕被覆とは、防蝕被覆した状態にある物であれば、表面に塗布したものであれ、樹脂液等に浸漬して被覆したものであれ、管状・帯状等の樹脂膜を適宜な方法で被覆せしめたものも実施の態様としてすべて含まれるものといわねばならない。

そして、本件考案の目的、効果については、「人体に無害の鉛製のカーテン用の重錘紐の提供を目的とする。」(公告公報1欄二行、三〇行)、「元来鉛は空気に触れると表面が容易に酸化して脆くなり、未酸化部分の鉛から脱落して行く。若し、室内に裸の鉛製品があると脱落した酸化塩は室内に堆積し人体に触れ、又は人体に吸入されて人の健康を害ねることになる。この考案の重錘紐1においては鉛製のウエート粒子3・3が芯索2とともに防蝕被覆されているので重錘紐1を挿入したカーテン6内でウエート粒子3・3を酸化することはなく、又カーテン6を洗濯しても洗濯液に冒されることもない。」(公告公報2欄七行ないし一六行)とするほか、格別の記載はない。

そうしてみると、本件考案における防蝕被覆とは、外気と接触しないよう鉛表面を他物により遮断することを技術内容とし、これによつて鉛の酸化を防ぎ、酸化による脱落を防止し、さらには洗濯液にも冒されない効果を生ずるものであるが、それ以上、酸化防止、防蝕効果についての具体的内容、程度については、格段の指摘はない。

ところで、成立に争いのない甲第四号証によれば、第二引用例には、「カーテンや衣服の裾部にその垂下性を改善するために鉛線を装着した場合には、この部分の屈曲性が著るしく減殺されてカーテン等に要求される性状を損うことになるし、断片状の鉛を使用したとしても、屈曲性は良好であつても、全面に均等な垂下形状をもたらすことができなくなる。そのうえ鉛はこれが接触する部分の布等を汚染するので好ましくない。」(1欄二九行ないし三六行)との記載があり、その発明の目的として、「この発明は常に均一な重錘効果を保持し、しかも全体的にすぐれた可撓性ならびに耐疲労性を有する線状重錘体を容易に得ることを目的とし」(2欄九行)と記載され、その重錘体の製造方法として、線状の比重の大きい鉛等の軟金属を冷間延伸の可能な軟質合成樹脂チユーブで被覆し、ついで内部の軟金属のみを所定間隔ごとに圧切し、その後被覆材である軟質合成樹脂チユーブを延伸してその直径を縮少させ、特に切断された金属線相互の間隙部においてくびれさせて、圧切された軟金属を緊持させることが記載され(公告公報2欄一二行ないし三八行および5欄七行ないし6欄六行参照)、また、この重錘体はカーテン衣服等の裾にとりつけたり、組紐等に配して重錘ロープとすることができる点も開示されている(4欄三六行ないし四二行)。

したがつて、第二引用例には、本件考案におけるウエート粒子3・3に相当する所定間隔で配設された鉛等の線状重錘体を樹脂膜で被覆したものが示されており、その被覆によつて鉛表面を外気から遮断し、本件考案と同様に鉛の酸化を防ぎ、酸化による脱落を防止する効果を奏することが認められ、当然洗濯液にも冒されない効果を奏することも明らかであり、前掲認定にてらし、本件考案との間に防蝕被覆の効果にとりたてて差異あるとは認められない。

そして、成立に争いのない甲第三号証によれば、第一引用例には、重錘体において鉛等の軟金属をあらかじめ芯索上に配設する技術手段が示されており前掲甲第二号証、第四号証によれば、右配設の技術手段を第二引用例における鉛等の軟金属の連結手段に適用して本件考案のように構成することは、当業者であれば格別の考案力を要しないものと認められる。

三  そうすると、本件考案を第一引用例および第二引用例に示された技術から極めて容易に考案することができたとした審決の判断に誤りはなく、その取消を求める原告の請求は理由がなく、棄却するほかない。

〔編註〕本願考案の要旨は左のとおりである。

芯索2にほぼ一定のピツチで配設された鉛、又はほぼ同効質製のウエート粒子3・3を前記芯索2とともに防蝕被覆した後、中空の編紐5内に挿通して形成されたカーテン用の重錘紐。

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