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東京高等裁判所 昭和57年(行ケ)144号 判決

事実及び理由

1  請求の原因1ないし3の事実は、当事者間に争いがない。

2  そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。

(一)  本件考案の実用新案登録請求の範囲に記載された構成が原告主張(事実摘示第二4(一)冒頭の(1)ないし(4)参照)のとおりであり、袋体の底部に設けた開口部の一片を延長して舌片部を形成することを構成要件の一つとするものであることは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第二号証によれば、本件考案に係る袋体は、被収納物を底部開口部より収納し、袋体を吊下げた状態で被収納物を展示するために使用するものであることが認められる。

ところで、成立に争いのない甲第三号証によれば、第一引用例記載の発明は、「陳列棚のピン又はくぎに吊下げる型のプラスチツク袋の製造方法及び製造装置に関するものである。更に詳しくは、袋の上方を溶着して、商品封入用仕切部と他の仕切部とに区分し、該他の仕切部に、例えば厚紙片のような丈夫で堅い材料を挿入せしめた型の袋に関する」(第一欄第一〇行ないし第一七行)ものであつて、第一引用例には、「このように加熱体132は袋を個々に溶断するだけでなく、袋の前側と隣接する袋の後側とをシールする。」(第五欄第九行ないし第一一行)、「前述したように、ウエブは、その中心線で折り曲げられないので、一方が他方よりも長く伸びた延長部21となる。この延長部は第7図及び第9図に最もよく表われているように、それぞれの袋の底部に舌片部として形成される。この舌片部は、袋に内容物を入れる際に、その開口を容易にする。この袋は、普通、短い方のパネルの下端で熱シールされ、シール後に延長部21は通常切断される。」(第六欄第二九行ないし第三六行)との記載があり、かつ、右発明によつて製造された袋体の拡大図として別紙図面(二)第7図が示され、「第7図において、ミシン目41は区域199内に設けられ、該区域にわたり、折り曲げられたウエブの二枚の層が袋の上部区画と下部区画とを区分するように相互に熱溶着されている。」(第六欄第五八行ないし第六一行)と記載されていることが認められ、これらの記載及び図面によれば、第一引用例記載の袋体は袋本体の底部開口部の一方が延長して舌片状の形状をなすプラスチツクフイルム製の吊下げ袋であり、底部開口部より被収納物を収納し、袋体を陳列棚のピン又はくぎに吊下げた状態で被収納物を展示するため使用されるものと認められる。

したがつて、本件考案に係る袋体と第一引用例記載の袋体は、共に底部に舌片部を有する下部開口型の、吊下げ状態で被収納物を展示することに使用するプラスチツクフイルム(ウエブ)製の袋体であつて、吊下げ等のために使用される上部区画と被収納物が納入される下部区画とを区分けする区域が熱溶着されている点で構成を同じくするものである。

(二)  原告は、本件考案の舌片部は、明細書全体の記述及び願書添付の別紙図面(一)から明らかなように、袋本体の底部開口部を封緘する目的のために設けられた開閉自在な封緘片であつて、本件考案は、右の構成を採用した結果、舌片部を適宜に折り返して底部開口部を完全に密封することができ、また、商品封入後も開閉自在なこの開口部から商品を自在に出し入れできるという顕著な作用効果を奏するものである旨主張する。

前掲甲第二号証によれば、本件考案の明細書の考案の詳細な説明には、本件考案の具体的説明として、「本考案袋体の開口部5における構成は図面に示す如く、袋本体1の底部を開口部5の一片を延長して舌片部b′を(「とを」は「を」の誤記と認める。)形成し、該舌片部b′の上に適当な接着剤層6を設け、該層上に離型材7が付与されている。このような接着剤層6を付与することにより、舌片部b′を適宜に折返して有利に密封することができる。」(本件考案の公報第三欄第一行ないし第七行)、「更に本考案袋体においては、袋本体の上部に区画シール部を介して従来の口紙に相当する挿入片を介在せしめて成るため、包装製品出し入れ用の開口部を袋本体の底部に形成して成るものである。その結果、包装製品の出し入れを著しく円滑に行うことができる。また、この開口部の一片を延長して舌片部として成るため、舌片部を適宜に折返して開口部を完全に密封することができる等の実用的効果が得られる。」(同第四欄第一七行ないし第二五行)との記載があり、かつ舌片部b′上に接着剤層6を設け、該層上に離型材7が付与されている別紙図面(一)第1図及び第2図が示されていることが認められる。

しかしながら、本件考案の実用新案登録請求の範囲には、舌片部について、「袋体の底部に設けた開口部の一片を延長して舌片部を形成」すると記載されているのみであること前説示のとおりであり、前掲甲第二号証によれば、この舌片部を袋本体の底部開口部を封緘する目的のために設けられた開閉自在な封緘片に限定する記載はないことが明らかである(本件考案の実用新案登録請求の範囲には、舌片部の機能について限定がなされていないことは当事者間に争いがない。)。

原告は、考案の技術的思想及び構成は、実用新案登録請求の範囲の記載のみならず、明細書及び願書添付図面の全体から認定すべきものである旨主張するが、右主張の趣旨が考案の技術的思想及び構成を実用新案登録請求の範囲の記載を離れて判断することができるというのであれば、到底許容できないものであり、これを本件に則してみると、本件考案における舌片部がどのような構成のものであるかを判断するに当たり、明細書の考案の詳細な説明に前述のとおり本件考案の具体的説明として、袋本体の底部開口部を封緘する目的のために設けられた開閉自在な封緘片が記載され、また願書添付図面にそのような構成のものが図示されているとしても、このことから直ちに、実用新案登録請求の範囲の記載に関係なく本件考案における舌片部を開閉自在な封緘片に限定し、これ以外の構成を排除するものであると解することはできない。むしろ、「袋体の底部に設けた開口部の一片を延長して舌片部を形成」するとしている本件考案の実用新案登録請求の範囲の記載からすれば本件考案の舌片部は、袋体の底部に設けた開口部の一片を延長して形成するものであれば、原告主張の開閉自在な封緘片に限定されることなく、このような封緘片以外のものも含むというべきであり、このように解しても、被収納物を袋本体の底部開口部より収納し、袋体を吊下げた状態で被収納物を展示するために使用するという本件考案の技術的思想に何ら抵触するものではない。

したがつて、本件考案における舌片部の構成が袋本体の底部開口部を封緘する目的のために設けられた開閉自在な封緘片に限定されるとする原告の主張は失当であり、このように限定されることを前提とする前記作用効果についての主張も、その前提を欠き理由がない。

してみれば、本件考案における舌片部は、第一引用例記載の袋体のように、袋本体の底部開口部の一片を延長して形成した舌片部を商品挿入後に熱シールするものも含むというべく、本件考案と第一引用例記載の袋体との間には、前記(一)認定の事実に照らし、舌片部の目的、構成、作用効果において、差異があるものとすることはできない。

(三)  以上のとおりであつて、本件考案における舌片部と第一引用例記載の袋体における舌片部に差異があるとは認められないから、本件考案における袋体と第一引用例記載の袋体とは、袋本体の底部に設けた開口部の一片を延長して舌片部を形成してなる袋体である点において一致するとした審決の判断には誤りがない。

したがつて、本件考案は、第一引用例及び第二引用例に記載された技術内容に基づいて、当業者が必要に応じきわめて容易に考案できたものとした審決の判断は正当であつて、審決には原告主張の違法はない。

3  よつて、審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求は失当として棄却する。

〔編註その一〕本願考案の要旨は左のとおりである。

プラスチツクフイルムより成る袋体の上部内にプラスチツクより成る挿入片を介在せしめ、袋本体形成の熱溶断シール時に上記挿入片を同時に袋本体に熱溶着し、且つこの挿入片の隔離のための区画シールを熱溶着により設け、しかも袋体の底部に設けた開口部の一片を延長して舌片部を形成して成ることを特徴とする袋体。

(別紙図面~参照)

〔編註その二〕本件に関する図面は左のとおりである。

別紙

(一)

<省略>

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