大判例

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東京高等裁判所 昭和57年(行ケ)193号 判決

1 請求の原因1ないし3の事実は、当事者間に争いがない。

2 そこで、原告主張の審決取消事由の存否について判断する。

(一) 本願考案が歩行用平板陸屋根であり、引用例記載の考案が陸屋根と異なる瓦棒葺き屋根であることは、当事者間に争いがない。

一般に、陸屋根とは、屋根面が水平又はそれに近い屋根を意味することは、当裁判所に顕著な事実である。そして、成立に争いのない乙第一号証ないし第三号証によれば、単位屋根板として左右両側の接続部間を平坦状にすることは、普通に知られていたものと認められ、特に昭和三年実用新案出願公告第三〇九四号公報(乙第一号証)記載のものは、単位屋根板として平板を用いた陸屋根構材と母屋との結合組成材に関する考案であると認められるから、陸屋根において歩行に適する平板陸屋根(なお、成立に争いのない甲第二号証、第三号証によれば、本願考案に係る「歩行用」平板陸屋根も、「歩行に適する」平板陸屋根という程度の意味であることが認められる。)は、本願考案の出願当時普通に知られていたとするのが相当である。そして、前掲乙第一号証ないし第三号証によれば、これらに記載された発明、考案は、いずれも単位屋根板を用いて屋根を構成する場合に、その板の左右両側を接続して屋根を構成するものと認められるから、このような構成も本願考案の出願当時普通に知られていることであり、一方、前掲甲第二号証、第三号証によれば、本願考案の歩行用平板陸屋根においては、単位屋根板を用いて屋根を構成するものであることが認められるから、接続を必要とする点においてこれらの周知技術と共通するものということができる。

したがつて、本願考案が歩行用平板陸屋根であり、引用例記載の考案が瓦棒葺き屋根であるけれども、本件口頭弁論の全趣旨によれば、両者は、左右両側に接続部である溝形湾曲部を有する単位屋根板使用の屋根である点で一致しているものであることが認められるから、前述の周知技術を用いて引用例記載の考案における左右両側の接続部間、すなわち左右両側の溝形湾曲部間を平板状にすることは、設計上の微差にすぎないというべきである。

原告は、本願考案の歩行用平板陸屋根と引用例記載の瓦棒葺き屋根とは、歩行の適否、資材鋼板の厚さ、加工上の難易等の点で相違すると主張する。

しかしながら、原告の挙げる相違点は、接続部の接続についての相違点ではなく、陸屋根に平板を用いる場合の平板についてのものであつて、前述のように歩行用陸屋根として平板を用いることが普通に知られている以上、その違いを格別のものとすることはできない。

(二) 成立に争いのない甲第四号証によれば、引用例記載の考案は左右両側の溝形湾曲部間を直上部2、平面部1、斜上り面部4で連続させた葺き屋根であつて、別紙図面(二)第1図、第2図からみて、人が歩行することができる平面部1を有するものであり、一方、溝形湾曲部は、本願考案の場合と同じく、本来歩行するためのものでなく(前掲甲第二号証、第三号証によれば、本願考案の溝形湾曲部には、両突条2、6間に嵌め込む防塵用キヤツプ14を設けることができるが、その強度については何らの記載もなく、かつキヤツプ14は必須の構成要件でないことは実用新案登録請求の範囲から明らかであつて、キヤツプをしない状態では溝形湾曲部は開口されたままである)、また使用されている釘8の寸法からみても溝形湾曲部の幅はそれほど大きいものではなく、その上辺にある折畳み縁6(折返し突条)、嘴上縁13(嵌合凹溝上方)はそれより更に小幅のものであつて傾斜もあまり急ではないから、これらが斜下りに形成されていても歩行の支障になる程度のものではないというべく、両者の作用効果に格別な差異があるとすることはできない。

したがつて、この点について、その作用効果に格別の差異を生じないから、単なる設計変更にすぎないとした審決の判断に誤りはなく、全体として、本願考案と引用例記載の考案とは、実質的に同一とするのが相当である。

(三) 以上の理由により、本願考案は引用例記載の考案と同一と認められるとした審決の判断は正当であつて、審決には原告主張のような違法はない。

3 よつて、審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとする。

〔編註〕 本願考案の要旨は左のとおりである。

左右両側を溝形に湾曲した一枚の単位屋根板イからなり、一方の溝形湾曲部1の左側上端に水平状の折返し突条2を、右側上端に内側方向に折曲した突条3を夫々形成して、両突条2、3間に嵌合空隙部4を設け、溝形湾曲部1より稍々小形の他の溝形湾曲部5には、隣位に位置する単位屋根板イの溝形湾曲部1に設けた突条3が嵌合する上方が水平状の嵌合凹溝6を上端に、他方溝形湾曲部5の延長部に突条2に係止する引掛部を形成すると共に、突条2と嵌合凹溝6との間に単位屋根板イを平坦状(昭和五四年七月九日付手続補正書(甲第三号証)の実用新案登録請求の範囲に「平担状」とあるのは「平坦状」の誤記と認める)に形成したことを特徴とする歩行用平板陸屋根。

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