東京高等裁判所 昭和57年(行ケ)31号 判決
事実及び理由
一 請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。
二 第一及び第二引用例の発明の構成、本願考案と第一引用例の発明との構成上の一致点及び相違点が、いずれも審決認定のとおりであることは、原告も認めるところである。そこで原告が争う本願考案と第一引用例の発明との相違点(2)及び(3)に対する審決の判断について、検討する。
三 相違点(2)は、本願考案が構成において、選別盤を比重三以下の軽金属にするとともに、その選別盤にはプレス加工により作られる無数の凹凸からなる流動摩擦面を形成したのに対し、第一引用例に記載された発明の′構成では、撰粒盤を鉄製とし、無数の凹凸からなる流動摩擦面の加工手段を限定していない点にある。
撰粒盤が鉄製とされた第一引用例の発明に係る装置が鉄の錆やすい性質及びその重量に由来する請求の原因四、2、(一)記載のような欠点を有すること、これに対し、比重三以下の軽金属を選別盤の製作材料に用いた本願考案に係る装置が右欠点を是正し、請求の原因四、2、(二)記載のような利点(作用効果)を有することは、当事者間に争いがないところ、本願考案において用いられた比重三以下の軽金属は、第一引用例の発明に用いられた比重七・八の鉄に比し、軽量であり、錆にくく、加工しやすい金属であることは周知の事実というべく、従つて、鉄製撰粒盤の欠点を解消するため比重三以下の軽金属を用いて選別盤を製作しようとすることは、他にこれを妨げるべき特段の事由がない限り、当業者の当然に採用すべき慣用の技術手段といわなければならない。本件において右の特段の事由とみるべきものはあらわれていないから、選別盤の材料として鉄に代えて比重三以下の軽金属を選択採用したことは、当業者にとつて何らかの困難な技術的思考を要するものとは到底認めることができない。
そうであれば、構成を構成に結合することにより、本願考案の穀粒選別装置について前記のような作用効果が奏せられたとしても、それは、当業者が容易になし得るところというべく、この点に関する審決の判断に誤りはない。
四 次に、相違点(3)は、本願考案が
1 請求の原因三、2記載のとおり、第二引用例の発明に係る装置では、選別盤の裏側に揺動リンク(5)を設ける構成となつており、右揺動リンクが本願考案に係る装置の揺動杆に相当し、第二引用例の発明に係る装置では、揺動リンクに順次連結する腕杆(7)の一部及び本願考案の回転軸に相当するエキセンカム装置(6)が選別盤の外側にあることは、当事者間に争いがないところ、原告は、本願考案に係る装置においては、前記のように、選別盤の裏側に、揺動杆等選別装置に関する部材が設置されているため、腕杆エキセンカム装置等選別装置に関する部材が選別盤の外側にある第二引用例の装置に比し、選別装置の平面積が少なく同装置を籾摺装置にコンパクトに組込むことができるという点に進歩性がある旨主張する。
しかし、前記のとおり、本願考案の揺動杆に相当する揺動リンク(5)を選別盤の裏側に設けることは第二引用例の発明に示されており、選別盤の裏側に空間が生ずることは第二引用例の発明に係る装置だけでなく、成立に争いのない甲第三号証によれば、撰粒盤の支枠(2)を介して本願考案の揺動杆に相当する支杆(3)(4)を設ける第一引用例の発明に係る装置においてもみられるところである。そして、機械装置を構成する場合において、部材間に空間が存すれば、これをできるだけ利用して相互の組合せを考え、機械装置全体をコンパクトにするということは、当業者の当然に考慮すべき事柄であつて、成立に争いのない甲第二号証の一、二及び甲第四号証を対照して検討しても、本願考案の実施例として、選別盤の裏側に揺動杆(18)(18)のほか、可動支持枠(16)、回転軸(17)等必要な部材を組込んで平面積を少なくし、選別装置全体を籾摺装置にコンパクトに組込んだものが示されてはいるが、それが第二引用例のものに比べて格段にコンパクトな組合せを可能にしたとまでは認めるに十分ではないとするのが相当であるばかりでなく、籾摺装置との組合せに関する構成は、本願考案の要旨とするところではないのであるから、この点に関する原告の主張は理由がない。
2 次に、原告が主張する選別盤支持の強固さ及び同盤の揺動運動の正確さについて検討する。前掲甲第二号証の一、二及び甲第四号証によると、本願考案に係る装置では、選別盤の裏側を揺動杆(18)(18)を介して下方の回転軸(17)に軸装する可動支持枠(16)の両端に連結したのに対し、第二引用例の発明に係る装置では、本願考案の揺動杆(18)(18)に相当する複数の揺動リンク(5)(5)の下端が筐体の底壁に、上端が選別盤の裏側に連結し、そのうちの一つのリンクが腕杆(7)を介して本願考案の回転軸(17)に相当するエキセンカム装置に連結しており、この両者を対比すると、選別盤支持の強固さ及び同盤の揺動運動の正確さにおいて、本願考案のものが第二引用例のものより構成上勝つているとは一概にいい得ないものがあり、かえつて、その構成は前者の方が複雑であり、後者は選別盤が揺動リンクを介して筐体と直結しているため、見方によれば、後者の方が安定性があり、右の二点においてすぐれているといえないこともないと認めるのが相当であり、更に、本願考案において、原告が強調するように選別装置と籾摺装置を一体化するとなると、前掲甲第二号証の二によつて認められるように、回転軸(17)を籾摺装置(7)の上部に軸装し、更にその上部に選別盤が設置されることとなり、原告の指摘する強固さ及び正確さの二点において、本願考案が勝つているとみるのは疑問であるといわざるを得ない。なお、原告は、ロツド(26)と選別盤、可動支持枠、回転軸等の連結から、右の強固さ及び正確さを主張するが、ロツド(26)と他の部材との連結方法は、本願考案の要旨とはされていないのであるから、ロツド(26)の機能を前提として第二引用例の発明と比較することは相当とはいい難い。
3 また、原告が主張する可動支持枠(16)による選別盤の角度調整機能については、前掲甲第三号証(第一引用例)に選別盤の角度を任意に調節する事例が示されていることからみて、本願考案において、選別盤を支持する可動支持枠によりその角度を変更できるようにすることは、第一引用例の発明と比較して、格別差異があるものとはいえず、本願考案に進歩性を認めるべき根拠とするに足りない。
五 以上のとおり、原告の主張する審決取消事由はいずれもその理由がなく、本願考案が第一、第二引用例記載の発明及び出願前周知、慣用の技術に基づき、当業者が極めて容易になし得るものであるとした審決の判断に誤りはないというべきである。
六 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。
〔編註その一〕本願考案に関する事項は左のとおりである。
一 特許庁における手続の経緯
原告は、昭和五二年一二月七日、名称を「揺動式穀粒選別装置」とする考案(以下、「本願考案」という。)につき実用新案登録出願(昭和五二年実用新案登録願第一六五一七〇号、昭和四九年三月一四日に出願した特願昭四九―二九五一七号につき昭和五一年三月二六日に分割出願した特願昭五一―三三三一七号を、昭和五二年一二月七日に実用新案法八条一項により出願変更したもの)をしたが、昭和五四年一〇月一一日に拒絶査定を受けた。そこで、原告は、同年一二月五日、審判の請求をし、右審判請求は、昭和五四年審判第一四九二五号として審理されたが、昭和五六年一二月二日、「本件審判の請求は成り立たない。」との審決があり、その謄本は、昭和五七年一月二〇日、原告に送達された。
二 本願考案の要旨(
〔編註その二〕本件に関する図面は左のとおりである。
第1図面(本願考案にかかる装置)(1)
<省略>
第1図面(2)
<省略>
第1図面(3)
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第2図面(第1引用例の発明に係る装置)(1)
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第2図面(2)
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第2図面(3)
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第2図面(4)
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第3図面(第2引用例の発明に係る装置)(1)
<省略>
第3図面(2)
<省略>
第3図面(3)
<省略>