大判例

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東京高等裁判所 昭和57年(行ケ)88号 判決

一 請求の原因1ないし3の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決取消事由の存否について判断する。

(一) 成立に争いのない甲第一号証、第三号証、第八号証、第一二号証によれば、本願考案の実用新案登録請求の範囲においては、本願考案の対象を家具としており、これを木製家具に限定していない。本願考案の明細書の考案の詳細な説明には、「従来、家具における抽斗の出し入れはとかく頻繁に行われるが、木質間の摩擦接による摩耗のために短期間で円滑な動きが得られなくなる。」(第一頁第一二行ないし第一五行)、「本考案は、かかる欠点を除去せんとするものであつて」(第二頁第一行、第二行)と記載されているが、実用新案登録請求の範囲に本願考案の対象を木製家具に限定して理解すべき何らの記載もない以上、詳細な説明における右の記載だけから、直ちに木製家具に限定されるものと解することはできない。

したがつて、本願考案の対象が木製家具に限定されることを前提に、木質の摺桟における木目の微妙な凹凸状態に追従するようにテープ材を貼着して木目の微妙な凹凸を利用することによる作用効果に言及する原告の主張は失当であることが明らかである。

のみならず、仮に、本願考案の対象が木製家具に限定されると解しうるものとして、原告が本願考案の特徴として主張するテープ材の厚み及び分子量について数値限定をした点について検討すると、まず、木質の摺桟における木目の微妙な凹凸状態が貼着後の滑り材(本願考案におけるテープ材)の接触摺動面となる面に現われるのは、滑り材が貼着される木質材の表面に、凹凸の微妙な形状を存在させ、かつ、それを害しない貼着の仕方によつて滑り材を貼着して初めて可能であり、滑り材の厚さを単に〇・一mmないし一mmと数値限定するのみで可能となるものではない。しかるに、前掲甲第一号証、第一二号証によれば、本願考案の明細書には、厚さ〇・一mmないし一mmのテープ材を摺桟上に貼着すること(第三頁第一行ないし第一三行)が記載されているのみで、滑り材の貼着される面の形状とか貼着の仕方については、何らの開示もされていない。したがつて、本願発明においてテープ材の厚さを数値限定した点についての原告の主張は、理由がない。

また、本願発明においてテープ材の分子量を数値限定した点については、超高分子量ポリエチレン樹脂が耐摩耗性において格別に優れていることは、前掲甲第一号証、第八号証によれば、本願考案の明細書に、「平均分子量としてかかる数値を示す超高分子量ポリエチレンは、物性的に表面がパラフイン状に滑らかであるとともに、蝋分が高度に潜在化し、かつ、耐摩耗性及び耐衝激性に非常に優れたものである。」(第二頁第一六行ないし末行、なお、ここに「かかる数値」とは、七〇万以上の分子量を含むものと解することができる。)と記載されていることが認められることからも明らかなように、普通に知られているから、滑り材として期待される耐摩耗性の点から分子量をどのくらいのものにするかという単純な選択に相当し、そのような選択は、格別考案力を要しない設計上の事項というべきである。したがつて、この点についての原告の主張も理由がない。

(二) 以上のとおり、本願考案においてテープ材の厚さ及び分子量について数値限定をしたことに格別の技術的意義は見出しえず、右数値限定によつて奏する本願考案の作用効果も、第一引用例及び第二引用例のものから通常予測されうる範囲内のものというべきであるから、これをもつて、格別のものとすることはできない。

(三) したがつて、審決を違法とする原告の主張は、いずれもその理由がなく、審決には、これを取消すべき違法の点はない。

三 よつて、審決の取消を求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却することとする。

〔編註〕 本願考案の要旨は左のとおりである。

抽斗を支持する摺桟上に粘度測定法で示される七〇万以上の超高分子量ポリエチレン樹脂を、厚み〇・一mmないし一mmのテープ材となして貼着させてなることを特徴とした家具。

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