東京高等裁判所 昭和57年(行ケ)9号 判決
当事者間に争いのない請求原因事実によると、本件商標と引用商標の各指定商品とは、互いに類似しないと認めるのが相当であり、したがつて、これを類似商品とみて、本件商標の登録を無効とした本件審決は、認定判断を誤つたもので、違法として取消すべきものである。
よつて、本件審決を取消す。
〔編註〕 本件における審決理由の要点および審決取消事由は左のとおりである。
2 本件審決の理由の要点
(一) 本件商標の構成、指定商品は、前記1の(一)のとおりである。
(二) これに対し、請求人が引用する登録第四一二四五五号商標(以下「引用商標」という。)は、ゴシツク体で「KENT」の欧文字及び「ケント」の片仮名文字を上下二段に横書して成り、旧第一八類「理化学、医術、測定、写真、教育用の器械器具、眼鏡及び算数器の類並にその各部」を指定商品として、昭和二四年六月一〇日に登録出願され、昭和二七年六月一二日に設定登録され、昭和四七年六月一九日にその商標権について存続期間更新の登録がなされたものである。
(三) そこで、先ず、本件商標と引用商標との類否についてみると、両者は、共に、「ケント」の称呼を生ずるものであることが明らかであるから、称呼を共通にする類似の商標である。
次に、両者の指定商品の類否について検討すると、本件商標の指定商品は、前記のとおり、「運動用特殊衣服」であり、引用商標の指定商品の「教育用の器械器具」の中には、アレイ(唖鈴)、バーベル、体育・体操用器械器具等の商品が含まれるところ、両商品は、共に、運動具店(いわゆるスポーツ店)で販売され、販売店舗を同じくすることが多く、また、その需要者(スポーツ愛好者)層を同じくすることも少なくない等密接な関係にあるから、両商品は、互いに類似する商品とみるのが相当である。
(四) よつて、本件商標は、商標法第四条第一項第一一号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第四六条第一項の規定によりその登録を無効とすべきである。
3 本件審決の取消事由
本件商標と引用商標とが称呼を共通にする類似の商標であることは争わないが、本件審決は、両商標の指定商品が互いに類似する商品であるとした点において判断を誤つたものであるから、違法として取消されるべきである。その詳細は以下のとおりである。
(一) 本件商標の指定商品である「運動用特殊衣服」は、「ユニフオーム及びストツキング、アノラツク、ヤツケ、柔道衣、剣道衣、グランドコート」をいうものとされ、いわゆる運動着全般を指すものであるが、このような運動着全般と引用商標の指定商品に含まれるアレイ、バーベル等とは、必らずしもその用途が同一であるとはいえず、また、生産部門、原材料、品質において全く異なるものである。
(二) アレイ、バーベル等は、専ら運動具店で販売され、その需要者も体育・体操の専門家ないし多少とも運動を専門的に行なつている人に限られている。これに対し、近時、人々のスポーツへの関心が高まり、スポーツ人口が増加するに伴ない、衣服フアツシヨンのスポーツ化が進行し、運動用特殊衣服は、いわゆるスポーツウエアとして、運動の際のみでなく、一般の街着としても着用されることが多くなり、その結果、本件審決当時には、それが運動具店に限られることなく、むしろ、多くはデパート、専門店その他一般の衣服販売店で他の一般の衣服と同様に販売され、必らずしも運動を専門としない者もこれを購買することが多くなつていた。
このように、「運動用特殊衣服」は、運動具店においてアレイ、バーベル等と共に販売されることがあつても、それは極めてわずかの例外的場合に限られ、また、デパートその他の衣服販売店と運動具店とでは一般に需要者層を異にするものであることは、明らかな事実である。
(三) そして、右(一)、(二)の事実を考え合わせると、「運動用特殊衣服」と「アレイ、バーベル等」とは、取引の実際において、これに類似の商標が使用されていたところで、商品出所の混同を惹き起すおそれはないものであり、このような場合には両商品は互いに類似しないとするのが相当である。
(四) しかるに、本件審決は、この点の認定判断を誤り、極めてわずかの例外的場合をとらえて、「運動用特殊衣服」と「アレイ、バーベル等とは販売店舗を同一にする場合が多く、需要者層を同一にする場合も少なくないとして、両商品は互いに類似するものとしたうえ、本件商標を商標法第四条第一項第一一号に違反して登録されたものでその登録を無効とすべきものとしたのであるから、違法として取消を免れない。
二 被告は、適式な呼出を受けたが、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しないので、原告主張の請求原因事実をすべて明らかに争わず、これを自白したものとみなされる。