大判例

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東京高等裁判所 昭和57年(行ケ)93号 判決

一 請求の原因一及び二の事実は当事者間に争いがない。

二 そこで、審決にこれを取り消すべき違法の点が存するかどうかについて検討する。

1 原告は、ライオンズクラブの日本における広範な活動にともなつて、本願商標と同一の構成によつてなるライオンズクラブのマークは、日本全国で各層各級の人々の目に触れるところとなつており、著名なものになつているから、その著名な標章によつて構成される本願商標からは「ライオンズクラブ・マーク」の称呼、あるいは、本願商標の構成に即して「ライオンズ・インターナシヨナル」の称呼のみを生じ、単に「ライオンズ」とのみ称呼されることはない旨主張する。

本願商標が別紙図面(一)に記載されたとおりの図形と文字との結合になる構成を有することは前示のとおりであり、該構成がライオンズクラブのマークとして採用されている標章と同一であることは当事者間に争いがない。しかして、成立について争いのない甲第四ないし第六号証によれば、ライオンズクラブの歴史及び日本における活動の規模、分野はいずれも原告主張のとおりであると認められるが、本願商標と同一の標章からなるライオンズクラブのマークが、「ライオンズクラブ・マーク」あるいは「ライオンズ・インターナシヨナル」とのみ称呼され、他にこれと異なる称呼を生ずる余地がないほどわが国において著名であることを認めるに足りる証拠はなく、したがつて、本願商標が、ライオンズクラブのマークと同一であることに即して「ライオンズクラブ・マーク」、「ライオンズ・インターナシヨナル」等と称呼されることがあるにしても、このことは、本願商標からその構成に即した別異の称呼を生じ、該称呼をもつて取引きされる場合があることをなんら妨げる理由にはならないものというべきである。

しかして、本願商標は、別紙図面(一)に記載のとおり、中央に「L」の文字を白抜きした小円を置き、全体がほぼその二・二倍の径を有する円形様にまとまるように、中央小円の周囲に、左右両側には各外側方を向いたライオンの横顔をそれぞれ描き、上方には該ライオンの頭部の間に「L・I・O・N・S・」の文字を、下方には該ライオンの顎の間に「INTERNATIONAL」の文字を、それぞれ外周部を縁取りして枠取つた中に左横書きに書してなるものであつて、該「L・I・O・N・S・」の文字部分は本願商標の上部中央に顕著に大書されており、それが一般にもよく知られて「ライオン」ないし「ライオンズ」と音読されている英語の「Lion」ひいてその複数形「Lions」と文字の配列を同じくすることとあいまつて、各文字の後に小さくピリオドが付されていることを考慮しても、これが「ライオンズ」と一般に音読されることは明らかである。してみれば、本願商標に接するものは、その上部に顕著に書された「L・I・O・N・S・」の文字部分を「ライオンズ」と読みながら本願商標を感得し、「ライオンズ」と読まれたところが、全体を一個のまとまつた円形様にしてライオンの横顔を配してなる点に特徴を有する本願商標の全体の構成によく適合することから、本願商標を特定するに当たり、これを「ライオンズ」と称呼して取引きを行うことが少なくないものと認めるのが相当である。

したがつて、本願商標からは「ライオンズ」の称呼を生じるものであり、他方、第一及び第二引用商標からはそれぞれその構成に即して「ライオン」の称呼を生じることは明らかであつて、右の両称呼を比較すると、審決の指摘するとおり、両者は、本願商標の称呼における末尾の「ズ」の音の有無にかかわらず、全体の語調、語感が近似したものとなり、聴者をして彼此聞き誤らせるおそれがあるものというべきであるから、本願商標と引用各商標とは称呼において類似した類似商標と認めることができる。

2 原告は、本願商標から「ライオンズ」の称呼を生じるとしても本願商標と引用各商標とは類似するものではないとして、本願商標には他と誤認、混同を生じない特段の事情がある旨を主張する(請求の原因三の2)。

(一) 原告の請求の原因三の2の(一)の主張は、その前段において「ライオンズ」は「ライオンズクラブ」の略称として著名であるから、人は「ライオンズ」の称呼を聞けば、それが「ライオンズクラブ」の「ライオンズ」を指しているか否かを直ちに判別できるとするものであり、後段において、本願商標は「ライオンズクラブ・マーク」として著名な標章によつてなるものであるから、わざわざ出所の混同を生じるような称呼「ライオンズ」のみで取引きされることは考えられないとするもので、前後明らかに矛盾するものであるのみならず、本願商標からは、「ライオンズ」の称呼をも生じることは前説明のとおりであり、本願商標に係る指定商品が「ライオンズクラブ・マーク」等と称呼して取引きされ、「ライオンズ」と称呼して取引きされることがないとは到底いうことができない。

(二) 請求の原因三の2の(二)において、原告は、本願商標と第一及び第二引用商標との間には、到底これが混同されることのないような外観上の顕著な差がある旨を主張するが、商品がその商標から生ずる称呼により、口頭によつて取引きされることがあることは当然で、その際称呼が類似している商品は互いに混同されるおそれがあることも、また当然で、両商品の商標の外観が異なつている場合にはその混同は生じないとすることはできない。

3 原告は、次に、本願商標の指定商品は帰属団体を表示したり、競技その他において記念品として用いられることを本来の用途とする「貴金属製のバツジ、メタル」であるとして、引用各商標の指定商品とは類似するものではない旨主張する。

しかしながら、本願商標の指定商品は、前示のとおり、第二一類「貴金属製のバツジ、メタル」であつて、商標法施行令、商標法施行規則に徴すれば、右指定商品は身飾品としての貴金属製のバツジ、メタルであると解されるから、これと引用各商標の指定商品中に含まれることの明らかな「硬質プラスチツクス製のバツジ、メタルないしはブローチ、ネクタイピン、ネクタイ止め」とを対比すれば、いずれも身飾品としてその用途、用法を同じくし、装身具店等においてともに販売されるほか、その需要者においても格別の差異はないものと認められるから、両者は類似した商品であるということができる。

4 以上のとおりであるから、本願商標は商標法第四条第一項第一一号の規定に該当し登録することができないとした審決の判断に誤りはなく、その他審決にこれを取り消すべき違法の点はない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註その二〕 本件登録商標に関する事項は左のとおりである。

原告は、昭和四五年七月二三日、別紙図面(一)記載のとおりの構成よりなる商標(以下「本願商標」という。)について、第二一類「貴金属製のバツジ、メタル、指輪、ペンダント、ロケツト、コンパクト」を指定商品として、昭和四五年商標登録願第七六三九六号による商標登録出願をしたところ、昭和五〇年一〇月三〇日に拒絶査定があつたので、昭和五一年二月一七日、これに対して審判を請求するとともに、同日付け手続補正書をもつて、指定商品を第二一類「貴金属製のバツジ、メタル」と補正したが、右審判の請求については、昭和五一年審判第一二八八号事件として審理された結果、昭和五六年一一月一六日、本件審判の請求は成り立たないとの審決があり、その謄本は、出訴のための附加期間を三か月と定めたうえ、昭和五七年一月一三日、原告に送達された。

〔編註その二〕本件に関する商標は左のとおりである。

別紙図面(一) 本願商標

<省略>

別紙図面(二)

第一図 第一引用商標

<省略>

第二図 第二引用商標

<省略>

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