東京高等裁判所 昭和57年(行コ)260号 判決 1983年4月27日
東京都小平市小川町一丁目九七〇番一一号
控訴人
内田和子
右訴訟代理人弁護士
菊地一二
同都東村山市本町一丁目二〇番二二号
被控訴人
東村山税務署長
宮澤義幸
右指定代理人
櫻井登美雄
同
中村正俊
同
堀田逸夫
同
須藤勉
右当事者間の昭和五七年(行コ)第二六〇号所得税額査定金額に対する更正決定取消請求控訴事件について当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人
原判決を取消す。
昭和五五年三月二二日付で東村山税務署長が控訴人に対してなした昭和五一年度分所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分はこれを取消す。
との判決
二 被控訴人
控訴棄却の判決
原審訴訟の経過
1 昭和五六年九月二一日午前一〇時の第二回口頭弁論期日に控訴人は出頭しなかった。
2 昭和五六年九月二五日午前一一時三〇分控訴人の住所において、昭和五六年一〇月二六日午前一〇時の口頭弁論期日呼出状ならびに被控訴人準備書面の送達が行われ、控訴人同居者内田正がこれを受領した。
3 同年同月同日午前一〇時の第三回口頭弁論期日に控訴人は出頭せず、被控訴人代理人らは弁論しないで退廷した。
4 控訴人は昭和四七年一月二六日までに期日指定の申立をしなかった。
第三控訴人の当審での主張
1 控訴人は訴訟追行の熱意があったが、期日呼出状の存在に気がつかなかったために、期日指定の申立を三ケ月以内にしなかったに過ぎない。
2 通常民事訴訟では休止満了となっても再訴が可能であるが、行政事件抗告訴訟においては、出訴期間の定めがあるため、再訴ができない。
3 それ故本件においては憲法第三二条の趣旨にのっとり期日指定の申立を許し、控訴人の訴訟追行を許すべきである。
理由
行政事件たる抗告訴訟に関しても、行政事件訴訟法第七条により民事訴訟法第二三八条が適用されることはいうまでもなく、同条の要件が充足される限り、期日に欠席し、あるいは期間内に期日指定の申立をしなかった理由の如何にかかわらず同条が適用されるから、控訴人が期日呼出状の存在に気づかず、そのために期日に欠席し、期間内に期日指定の申立をしなかったとしても、同条による擬制取下の効果を否定できない。また本件において取下とみなされた場合に再訴ができないのは、取下とみなされたことの直接の効果ではなく、出訴期間の定めがあることによるものであり、出訴期間の定め自体が憲法第三二条に違反しない以上、本件につき民事訴訟法第二三八条を適用することが憲法第三二条の趣旨にもとるともいえない。それ故控訴人の主張はいずれも理由がないというべきで、本件の終了を宣言した原判決は正当である。よって本件控訴はこれを棄却することとし、訴訟費用につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 石川義夫 裁判官 寺澤光子 裁判官 寒竹剛)