東京高等裁判所 昭和58年(う)1869号 判決
被告人 加藤照雄 外二名
〔抄 録〕
鑑信雄作成の鑑定書その他の関係証拠によれば、本件で大麻取締法の規制対象である大麻とされている植物は、被告人加藤同根本の指示により梱包された空輸貨物一〇個のなかのビニール袋にそれぞれ一体として詰められている淡灰緑色の葉・小枝・種子等の乾燥植物であること、右植物は大麻草の全草を乾燥させたもので種子を含んでいること、その総量が約四八、一四〇グラムであること、右大麻草全体のなかで種子の占める割合が僅かであることが認められる。ところで、同法にいう大麻とは、大麻草及びその製品であって、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く)を除いたものである(同法一条本文、但し書)が、大麻草の成熟した茎が規制対象から除外される趣旨は繊維製品としての麻の製造流通使用を規制外に置くためであることにかんがみれば、大麻草の成熟した茎は、右製品を得るのに適した状態に達した茎の部分が大麻草から分離されてそれに適する形状になったものを言うと解すべきである。したがって、小枝を含めて本件大麻草が右但し書にいう成熟した茎に当らないことは明らかである。尤も種子については、同法の昭和二八年法律一五号による改正前後の規定内容及び附則に照らすと、大麻草の種子が同法の大麻草から除かれているものと解される。しかし、右規制の対象から除外されるのは、他の大麻草の部分から分離されている種子だけであると解すべきであり、他の大麻草のなかに僅かの量の種子が一体となって混在している場合には種子を含めた大麻草全体が規制の対象となると解するのが相当である。そうすると、右植物の総量を大麻密輸入罪の対象と認定した原判決に誤りはない。右所論は採用できない。
(海老原 杉山 新田)