東京高等裁判所 昭和58年(う)725号 判決
所論は,(一)本件土地につき,法人税法施行令68条1号ニにより同号ロに準ずる事実があって,その評価損を当期に計上し得る状態にあったのであるから,これを当期に計上したとしても,それは単に損金計上時期についての見解の相違に過ぎず,この点でも逋脱の犯意を欠いており,(二)交際費限度超過額について,重加算税の根拠規定である国税通則法68条と逋脱犯の根拠規定である法人税法159条は,その要件,効果がほぼ同様に規定されているところ,本件の場合,交際費限度超過額について,課税庁では重加算税を課していないのであるから,これと同様に考えれば,刑事罰の場面でも逋脱の犯意を否定するのが相当であると主張する。
しかしながら,(一)たな卸資産について,評価損が計上できるのは,法人税法施行令68条1号に規定する特定の事実が生じて,その価額が低下した場合に限られるのであって,単に物価の変動により時価が低下しただけでは,同号所定の事由に該当しないものと解されるところ,本件土地の評価が低下したのは,経済情勢の変動や需要の減退等によるものであって,同号所定の事由には該当しないから,当期中に低価格で売却処分がなされていない以上,当然に本件土地の評価による低下分を当期の損金に計上することはできないのであって,仮に被告人が確定申告時にそのように理解していたとしても,そのような法律の誤解により逋脱の犯意を否定する理由とすることはできないというべきである。のみならず,本件土地の評価損の計上について,被告人は,確定申告時には全く念頭になかったのであるから,そもそも逋脱の犯意を問題にする余地はない。(二)交際費限度超過額について,行政罰としての重加算税が課されない場合があるとしても,そのことから直ちに,その目的・性質・要件を異にする逋脱犯を審理する刑事裁判の場において,右と同様に扱い,逋脱の犯意を否定しなければならないものとは到底考えられない。
そうすると,被告会社において,期末たな卸土地の売却損の計上及び交際費限度超過額を損金に計上したことにつき,被告人の逋脱の犯意を認めて,本件逋脱罪の成立を肯定した原判決には,事実の誤認ないし法令適用の誤りはないから,論旨はいずれも理由がない。
……中略…
関係各証拠によると,土地付建売住宅部分の譲渡所得に対する土地重課税については,その適用がないものと考えてこれを全く申告しなかったことが認められる。しかしながら,租税特別措置法63条3項に規定する土地に該当しない以上,たとえ建売住宅付の土地であっても,すべて同条1項の規定が適用されるものであることは,これらの規定自体から明らかであるところ,本件建売住宅付の土地は右適用除外に該当しない土地であるから,これを譲渡して,その土地部分に対する利益を得た場合には,これに課される土地重課税を納付すべき義務のあることは蓋し当然である。しかるに,被告人は,同法の規定を誤解し,建売住宅付の土地については,土地重課税が課されないものと考え,その申告をしなかったというのであるから,それは法律の錯誤に過ぎず,それがやむを得ないとすべき特別の事情のない本件においては,逋脱の犯意を阻却するものではないというべきである。