大判例

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東京高等裁判所 昭和58年(う)748号 判決

被告人 山口照道

〔抄 録〕

軽犯罪法一条一二号は、同号所定の鳥獣類を逃がした場合、前段においてその故意犯を罰しており、所論のいう不作為犯は故意犯の一態様であって前段に該当するから、後段が右不作為犯に関する規定であると解することはできない。また、後段は、「監守を怠ってこれを逃がした」との文言からみても、過失犯として規定されていることが明らかである。そして、軽犯罪法一条一二号は、故意犯と過失犯とに対し、同一の法定刑を科しているけれども、いずれも軽易な犯罪として拘留、科料の法定刑を規定しているにすぎないから、必ずしも妥当でない立法ということはできず、所論のように、後段を故意犯と解釈すべき根拠となるものではない。また、これを過失犯と解すれば、その注意義務の内容が複雑となることは所論のとおりであるけれども、この点は開かれた構成要件として過失犯一般についていえることであり、本件について特殊なものではない。右条文が、所論のように罪刑法定主義に反するとは考えられない。<中略>

軽犯罪法一条一二号にいう「人畜に害を加える性癖のあることの明らかな鳥獣類」とは、その鳥獣類が人畜に害を加える性癖を有し、かつ、右事実が社会通念により明らかである場合を指すと解すべきであり、右のように解した場合、右法条が憲法三一条に違反しないことは明白である。

そこで、本件虎が右法条の定める鳥獣類に該当するか否かにつき検討すると、関係証拠によれば、虎は動物の中でも代表的な猛獣であること、動物園で飼育した虎であっても、生後六か月近くなると、飼育に従事する者をひっかいたりかみつくことがあり、次第に荒々しくなること(証人滝野豊の原審供述)、本件三頭の虎は、うち二頭は雄、一頭は雌であって、いずれも昭和五三年八月一一日被告人が設置した原判示の小動物園で生まれ、本件当時生後一一か月余の子虎であったが、その体長は一三〇ないし一四五センチメートル、体高は七五ないし八八センチメートル、体重は七四なしい八九キログラムとかなりの大きさに成長した虎であったこと、本件虎のうちの一頭は、本件脱出後、腰にかかった直径三、二ミリメートルの罠の針金を引きちぎって逃走し、更にその後榛沢弘芳方の庭で鎖につないで飼っていた犬をかみ殺したこと等の事実が認められ、以上の事実によれば、本件虎には人畜に害を加える性癖があり、そのことが社会通念により明らかであるから、本件虎は同法条の定める鳥獣類に該当する。

(船田 竹田 中西)

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