大判例

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東京高等裁判所 昭和58年(ネ)1020号 判決

一 当裁判所も控訴人らの本訴請求は理由がなくこれを棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり、訂正、削除、付加するほかは、原判決の理由欄記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

1 原判決六枚目裏六行目の「直径一、長さ五の比率」を「直径一、長さ四・五の比率」に訂正し、同八行目ないし九行目の「その蓋体の構成は原告が請求の原因2(四)で主張するとおりであること」とあるを、「その蓋体の上端周縁部は弧状をなし、平面からみて外筒と二重の同心円を画き、その最内円内の中央に一文字状の模様が表わされていること」と訂正する。

2 同六枚目裏一〇行目ないし一一行目の「並びに同4(二)中、柵柱本体上端に出没自在の手掛のある蓋体が存すること」及び七枚目表二行目ないし三行目の「被告製品を示すこと当事者間に争いのない別紙図面と」並びに七枚目裏二行目ないし三行目の「柵柱本体の上端部に出没自在の手掛がある蓋体が存し、」をいずれも削る。

3 原判決八枚目裏一一行目の次に左のとおり付加する。

「控訴人らは、本件意匠の要部は、蓋体が断面逆U字状に膨出した堤状部と中央の凹陥部とから成り、凹陥部には一文字に表わされた出没自在の手掛が設けてあるという構成にあり、このことは本件意匠に係る物品は、これが施工されると、需要者によつて常に斜上方から俯瞰される性質を有するので、蓋体の部分が最も目に付きやすくその構成こそが商品選択を行う根幹をなすものであることからも明らかである旨主張するが、この主張もまた前同様本件意匠に係る物品が商品として流通過程におかれる場合のことを無視するものであつて、蓋体の形状、模様だけが本件意匠に係る物品の要部であるとすることはできない。控訴人らの主張は採用できない。」

二 よつて、被控訴人意匠が本件意匠に類似することを前提とする控訴人らの本訴請求は理由がなく、これを棄却した原判決は相当であるから、本件控訴は理由がないものとして棄却する。

〔編註その一〕 本件における事実関係は左のとおりである。

第一 当事者の求めた裁判

(控訴人ら)

1 原判決を取消す。

2 被控訴人日向野工業株式会社は、原判決別紙図面記載の地中より隠現させる柵柱を製造し、譲渡し、貸し渡し

てはならない。

3 被控訴人太田興業株式会社は、原判決別紙図面記載の地中より隠現させる柵柱を譲渡し、貸し渡してはならない。

4 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。との判決並びに仮執行の宣言。

(被控訴人ら)

主文同旨の判決。

第二 当事者の主張

当事者双方の主張は、次のとおり、訂正、付加するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。

一 原判決五枚目表三行目の「販売、頒布行為」を「譲渡、貸し渡し」に訂正する。

原判決五枚目裏二行目ないし六枚目表三行目を削除する。

二 控訴人らの補充した主張

柵柱を単純な円柱形とすることは、従来より極めて普通に知られるところである。したがつて、これら周知の円柱形を基本構成とする本件意匠が設定登録された所以は、専ら、各部の具体的な構成態様にみられる特徴であり、なかんずく、柵柱本体の上端部に、周縁が断面逆U字状に膨出した堤状部を形成し、その中央を円形凹陥部とした蓋体が設けられ、該凹陥部に、平面からは一文字に表われる出没自在の手掛が取付けられてなる構成態様にあるとするのが相当である。

このことは、本件意匠に係る物品が通常の施工に際しては、不使用時はもちろん、使用時においても、需要者の眼線の下方にあつて、常に斜上方から俯瞰される性質を有するので、右蓋体の部位が物品としては最も目に付き易い部位であり、この部位は、需要者が美感及び使い勝手を考慮して、商品選択を行う根幹をなすものであることからも明らかである。

したがつて、この蓋体の部位の構成態様こそ、本件意匠の意匠創作の主体をなし、彼我意匠を識別する意匠上の要部である。

三 被控訴人らの補充した主張

被控訴人意匠の特徴は、その外筒を、その直径が大、中、小で、各長さを異にする鍔部、管状膨出部、下部管体の三部より構成した点に存し、この特徴的構成は、本件意匠の外筒の、上下同一径の単純な円柱形の構成ときわだつた対比を示し、この構成の相違が、両意匠の全体的美観を著しく異なるものとしており、一般需要者がこの両者を混同する余地はない。したがつて、被控訴人意匠は本件意匠に類似するものではない。

控訴人らは、本件意匠の特徴的部分は、蓋体が断面逆U字状に膨出した堤状部と、中央の円形凹陥部とから成り、凹陥部には出没自在の一文字の手掛が設けてあるという構成に存すると主張するが、控訴人らの主張する蓋体の形状は、本件意匠に係る物品(地中より隠現させる柵柱)の有する機能から当然有すべき構成であり、極めて有りふれたものであつて、この蓋体の形状に本件意匠の特徴が存するとすることはできない。

すなわち、本件意匠に係る柵柱は、駐車場等の柵として、通常は本体を引き出し、これにより柵として機能させ、車の通過時には地中に納め、車が通過し得るようにする。このため、まず地中より引き出すための手掛が必要である。しかし、この手掛が突出していると車の通過時に破損するので、手掛を出没自在にするとともに、これを保護すべく手掛の周囲を盛上げているが、保護用の周囲(控訴人らのいう堤状部)が高過ぎて車の通過に支障の生ずることのない高さにしてあるのである。

控訴人らはまた、蓋体部分が使用時に最も目に付き易い部分であり、商品選択を行う根幹をなすものであると主張するが、本件意匠に係る物品は、地中に埋没された状態で販売される訳ではない。購入時に需要者は外筒に本体が収納された状態で展示されている商品に接するのである。この場合、意匠において外筒が最も大きな部分(ほとんどの部分)を占めるのであり、この部分に顕著な相違が存すれば、一般需要者が混同することはない。

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