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東京高等裁判所 昭和58年(ネ)1213号 判決 1987年6月29日

昭和五八年(ネ)第一二一三号事件控訴人・同第一一七五号事件被控訴人(以下「第一審原告」という。) 株式会社諸江製作所

右代表者代表取締役 諸江秀一

右訴訟代理人弁護士 松本昌道

正田茂雄

右訴訟復代理人弁護士 笠原克美

昭和五八年(ネ)第一一七五号事件控訴人・同第一二一三号事件被控訴人(以下「第一審被告」という。) 新日本貿易有限会社

右代表者代表取締役 村田宏

昭和五八年(ネ)第一二一三号事件被控訴人(以下「第一審被告」という。) 村田宏

右両名訴訟代理人弁護士 植田義捷

昭和五八年(ネ)第一二一三号事件被控訴人(以下「第一審被告」という。) 株式会社三井銀行

右代表者代表取締役 関正彦

右訴訟代理人弁護士 各務勇

牧野彊

主文

一  本件各控訴をいずれも棄却する。

二  前記第一二一三号事件の控訴費用は第一審原告の、前記第一一七五号事件の控訴費用は第一審被告新日本貿易有限会社の各負担とする。

理由

一  第一審被告新日本貿易に対する請求について

当裁判所も第一審原告の第一審被告新日本貿易に対する本訴請求は、原判決が認容する限度で理由があり、その余は理由がないと判断する。その理由は、次のとおり付加し、訂正し、削除するほかは原判決理由説示(二二丁表一行目から二八丁表末行目まで)のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決二二丁裏一〇行目「甲」の次に「第一号証、」を、同末行目「結果(」の次に「原審」を各加入し、二三丁表一行目「被告村田本人の供述」を「第一審被告新日本貿易代表者兼第一審被告村田本人尋問の結果(原審第一回)」と訂正し、同二行目末尾に「他に右認定を左右するに足りる証拠はない。」を、同四行目「成立」の前に「前掲甲第一号証」を各加入し、同行目「第一、」を削除する。

2  同二四丁表一行目「成立に争いのない」を「前掲」と訂正し、同行目「一号証、」の次に「成立に争いのない乙第三号証の一ないし三、第四、第五号証の各一、二、第六号証、第七、第八号証の各一、二、第九号証、第一〇号証一ないし五、第一一、第一二号証の各一ないし三、」を加入し、同三行目及び同四行目から五行目にかけての各「第一、二回」を各「原審第一、二回・当審」と訂正する。

3  同二五丁裏一〇行目及び二七丁表一行目の各「第一回」を各「原審第一回・当審」と訂正し、二六丁裏四行目「本人の」の次に「原審」を、二七丁表一行目「原告」の次に「代表者」を、同一〇行目「こと、」の次に「前掲」を、同丁裏七行目「供述」の次に「(原審第一、二回・当審)」を各加入する。

二  第一審被告銀行に対する契約上の請求について

当裁判所も第一審原告の第一審被告銀行に対する契約上の請求は理由がないと判断する。その理由は、次のとおり付加し、訂正するほかは原判決理由説示(二八丁裏一行目から三三丁裏二行目まで)のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決二八丁裏六行目「弁論」の前に「成立に争いのない甲第一号証、第二号証、第一審原告代表者本人尋問の結果(原審第一回)により真正に成立したと認められる甲第五号証、第六号証及び」を加入し、同八行目「成立」から同一〇行目「号証」までを「前掲甲第一、第二号証、第五、第六号証、成立に争いのない丙第一ないし第七号証」と、同末行目及び三〇丁表末行目の各「第一」を各「原審第一」と各訂正し、同三〇丁表末行目の「でき」の次に「ず、他に右認定を左右するに足りる証拠は」を加入する。

2  同三三丁表五行目「により、」の次に「第一審原告に対する直接の債務負担を約したものではなく、したがつて、」を加入する。

三  第一審被告銀行に対する損害賠償請求について

当裁判所も第一審原告の第一審被告銀行に対する損害賠償請求は理由がないと判断する。その理由は、原判決三四丁表一、二行目の「磯部光彦」を「本間信光」と、同二、三行目の「被告新日本貿易」を「被振込人」と各訂正し、同九行目「ことに」から同丁裏二行目末尾までを次のとおり訂正するほかは、原判決理由説示(三三丁裏三行目から三四丁裏四行目まで)のとおりであるから、これを引用する。

「ものである。

右の事実関係によれば、第一審被告銀行は、第一審被告新日本貿易からの振込依頼の撤回の申入れに対し、第一審原告の意思いかんに拘わらず振込依頼の撤回を承諾しうるというべきであるから、第一審原告の意思を確認する等の措置を採るべき義務はなく、第一審被告銀行が第一審原告への照会等をすることなく振込依頼の撤回を承諾したことをもつて違法とはいえない。したがつて、その結果、第一審被告銀行が円貨代り金を第一審被告新日本貿易の預金口座に振り込み、第一審原告が第一審被告新日本貿易から債権の弁済を受けることが困難となつたとしても、これらの行為が第一審原告に対する不法行為には当たらない。」

四  第一審被告村田に対する請求について

当裁判所も第一審原告の第一審被告村田に対する請求は理由がないと判断する。その理由は、次のとおり付加し、訂正し、削除するほかは原判決理由説示(三四丁裏五行目から三七丁表四行目まで)のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決三五丁表七行目「争いのない」の次に「甲第二〇号証ないし第二三号証、」を加入し、同九行目「第一、二回)」を「各原審第一、二回・当審)及び弁論の全趣旨」と訂正し、同丁裏一〇行目「被」から三六丁表八行目末尾までを削除し、その後へ次のとおり加入する。

「第一審原告の右のような態度から第一審原告との信頼関係が失われたことを察知した第一審被告村田は、これに対する対抗手段を講ずるべく、第一審被告新日本貿易の代表者として、昭和五四年六月六日頃本件依頼書の写し各一通を第一審原告に交付し、従前同様輸出円貨代り金が第一審原告名義の預金口座に振込送金されると信じている第一審原告から同月二六日本件(3)及び(4)の商品を第一審被告新日本貿易宛引渡しを受けたこと、その後前記のとおり第一審被告銀行に対し振込依頼を撤回し、円貨代り金を第一審被告新日本貿易の普通預金口座に入金させ、これを引き出したが、これらを第一審原告には秘匿していたこと、その後、第一審被告新日本貿易は、第一審原告に対し同被告が本訴で主張するような総代理店契約違反による損害賠償請求権を有する旨主張して、右代金の支払を拒否していること、第一審被告新日本貿易は当時からみるべき資産はなく、第一審原告は、第一審の仮執行宣言附勝訴判決によつても第一審被告新日本貿易から現実に回収を受けることは困難であること、以上の事実が認められ、第一審被告村田の本人尋問の結果(原審第一、二回・当審)中前記認定に反する部分は前掲各証拠に照らし措信することができず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。」

2  同三六丁表九行目「原告」の前に「なお、」を加入し、同行目及び同丁裏一行目の各「第一、二回」を各「原審第一、二回・当審」と各訂正し、同三行目から三七丁表三行目までを削除し、その後へ次のとおり加入する。

「右認定の事実によれば、第一審被告村田は、振込依頼の撤回により結果的に第一審原告をして第一審被告新日本貿易からの代金の回収を困難にしたものといえるが、円貨代り金の振込送金は第一審原告に事実上商品代金の回収を容易にする効果が付与されているにとどまるものであり、しかも、第一審被告村田は第一審被告新日本貿易の代表者として同被告と第一審原告との取引上の紛争解決の対抗手段として行動したもので、犯罪行為ないし公序良俗に反する行為に該当するとまではいえず、また、第一審原告の代金債権が消滅するものでもないから、第一審被告村田の右行為が第一審原告に対する不法行為に当たるとはいえない。」

五  結論

以上の次第で、第一審原告及び第一審被告新日本貿易の本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却する

(裁判長裁判官 鈴木弘 裁判官 時岡泰 宇佐見隆男)

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