大判例

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東京高等裁判所 昭和58年(ネ)1367号 判決

1 被控訴人は、右請求は訴の変更にあたるところ、控訴人は訴変更についての所定の手続をしていないと主張し、控訴人は、これを争って、右請求は単に攻撃防禦方法を予備的に追加したものにすぎず、請求自体を変更するものではないから、訴変更の手続は必要がないと主張するから、考えるに、控訴人の当初の請求(主位的請求)は、債権者代位権を行使して訴外伊藤に代位し、同人の被控訴人に対する売買契約解除に伴う前渡金返還等を求めるものであるところ、本件予備的請求は、新たに被控訴人の訴外伊藤との共同不法行為を理由とする損害賠償を求めるものであって、その請求の趣旨及び原因を変更するものにほかならず、したがって、単なる攻撃防禦方法の変更にとどまるものではなく、訴の変更にあたるものというべきである。そして、本件記録によれば、控訴代理人が昭和五四年九月一一日以前の原審口頭弁論期日において本件予備的請求の趣旨及び原因を記載した昭和五一年一二月九日付準備書面を陳述し(なお、昭和五五年三月一八日午後一時三〇分の原審新第三回口頭弁論期日において右同様の記載のある昭和五四年一二月一日付準備書面が陳述されている。)、これによって訴変更の手続が履践されていることが明らかである。

2 次に、被控訴人は、右訴の変更は請求の基礎に同一性がないから許されないと主張するが、被控訴人が右訴の変更について異議を述べることなく弁論をした場合には請求の基礎の同一性の有無にかかわらず訴の変更を許容すべきものであるから、先ず被控訴人が異議を述べたかどうかについて検討するに、本件記録によれば、被控訴代理人が昭和五四年九月一一日以前の口頭弁論期日において、本件予備的請求が主位的請求と請求の基礎を異にすること等を主張して、右請求の却下を求める昭和五三年四月一八日付準備書面を陳述したことは認められるが、右準備書面の陳述が控訴人の前記昭和五一年一二月九日付準備書面の陳述後直ちになされたのか、その後弁論を経た後になされたのか、明らかにし得ない。しかし、その後昭和五五年三月一八日午後一時三〇分の原審新第三回口頭弁論期日において、前記のとおり控訴代理人が改めて本件予備的請求の趣旨及び原因を記載した昭和五四年一二月一日付準備書面を陳述したのに対して、被控訴代理人も同期日において右請求が主位的請求と請求の基礎の同一性を欠く等の主張の記載のある昭和五五年三月一日付準備書面を陳述していることが明らかであり、その他弁論の全趣旨に照らせば、被控訴人は本件予備的請求(訴の変更)について異議を述べたものと認めるのが相当である。

3 よって進んで、本件予備的請求が主位的請求たる前渡金返還請求と請求の基礎に同一性を有するかどうかについて判断する。

控訴人の主位的請求は、控訴人の訴外伊藤に対する債権の取立権能に基づくものであって、その訴訟物は訴外伊藤の被控訴人に対する売買前渡金返還請求権であるのに対して、本件予備的請求にあっては、その訴訟物は控訴人の被控訴人に対して有する不法行為による損害賠償請求権であり、したがって、両請求はその対象たる債権の帰属主体を異にし、その内容も異なる点において訴訟物は別個であり、請求の基礎に同一性を欠くものとみるのが妥当のようであり、原審もその見解に立ったもののようである。

しかしながら、さらに両請求を仔細に検討するに、主位的請求において控訴人の主張する控訴人と訴外伊藤との間及び訴外伊藤と被控訴人との間の各本件土地売買契約の成立時期、売買代金の額、支払時期及びその方法その他契約成立の経過によれば、訴外伊藤は、被控訴人から本件土地を買受けてこれを控訴人に転売したことになるが、その実質は、被控訴人と控訴人との売買に名義上の売買当事者として介在するにすぎず、控訴人が訴外伊藤に対して支払った売買代金はそのまま訴外伊藤の被控訴人に対する売買代金の支払いに充てられるとの趣旨が窺われるのであり、控訴人は、その支払った売買代金を取戻して原状回復を計る方法として、一は訴外伊藤を介して被控訴人に対し自ら支払った売買代金の返還を求めるものであり、一は直接被控訴人に対し、右売買代金を騙取されたとしてその返還に代えて損害賠償を求めるものであって、両請求とも社会的経済的にみて同一ともいうべき取引関係を基礎とするものであるうえ、その審理のための証拠資料はほぼ共通と認められるのである。してみれば、両請求は、その請求の基礎を同一にするものと認めるのが相当であり、本件予備的請求はこれを訴の変更として許容すべきである。

(森 片岡 小林)

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