大判例

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東京高等裁判所 昭和58年(ネ)150号 判決

民法七一一条は、生命侵害に対する被害者の父母、配偶者及び子の慰謝料請求権についての規定であるが、同条所定の近親者に該当しない者であっても、被害者との具体的生活関係に照らし、被害者との間に同条所定の近親者と実質的に同視しうべき身分関係が存在すると認められる場合には、慰謝料請求権の主体となりうると解すべきであり、また、身体傷害の場合においても、本人の生命を害された場合にも比すべき又は右場合に比して著しく劣らない程度の重大な精神的苦痛を被ったと言いうるときは、近親者の慰謝料請求権は肯定されると解するのが相当である。

しかしながら、本件において、幸子の弟妹である控訴人らと幸子との生活関係について見るに、≪証拠≫によれば、幸子は、控訴人らの長姉であって、昭和二二年ごろ旧制女子商業学校を卒業後直ちに県信用組合連合会事務員に就職し、生家を出て独立して生活していたが、昭和四〇年ごろ勤務先を退職し、当時静岡市内に居住していた四歳年下の控訴人小林淑恵方に身を寄せ、同控訴人方の家事の手伝いをし、昭和四四年ごろ山形木材株式会社に再就職した後もひきつづき同控訴人方に寄宿していたこと、幸子は、昭和四八年ごろリウマチで手足が不自由になり、遠距離の通勤に支障をきたすようになったため、同控訴人方を出て勤務先の近隣の借家に転居したが、その後も時おり同控訴人方に出入りしていたこと、幸子の弟妹中同女と最も親密な間柄にあったのは控訴人小林淑恵であるが、幸子と同控訴人との関係すら叙上の程度のものであって、通常の姉妹としての付合い関係の域を越えるものではなく、まして他の控訴人らは幸子と盆、正月に実家で顔を合わせる程度で、日ごろの交際はなかったこと、以上の事実を認めうるにとどまり、右認定事実からは、控訴人らと幸子との間に実質上親子と同視しうる身分関係が存在したものとは到底認めることができず、他に右のような身分関係の存在を肯認しうる証拠は見当たらない。

そうすると、控訴人らは本件事故について固有の慰謝料請求権を有するものといえないことが明らかである。

(吉江 近藤 川上)

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