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東京高等裁判所 昭和58年(ネ)1718号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一1 被控訴人が控訴人に対し、本件建物を、請求原因1の(一)、(二)の約定で貸し渡したことは、当事者間に争いがない。しかし、被控訴人と控訴人が、右契約締結に当たり、無催告解除の特約を合意したことを認めるに足りる証拠はない。

2 <証拠>を総合すると、次の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

(一) 控訴人の賃料等の支払は、本件契約締結の当初から遅れがちであり、その遅延の状況は、請求原因2の(一)記載のとおりであつた。

(二) 控訴人は、昭和五七年六月分以降の賃料については、月額七万円に減額する旨の合意が成立したとして、毎月金七万円しか支払わなくなり、本訴提起後においても、後記のように右合意の成立を認めるに足りる資料がないにもかかわらず、右主張を固執し、右金額以上の支払をする意向がない。

(三) 被控訴人は、控訴人に対し、昭和五七年八月分から同年一〇月分までの賃料等を一週間以内に支払われたい旨及び右期間内に支払のないときは本件賃貸借契約を解除する旨を記載した同年一〇月七日付け書面を、内容証明郵便をもつて、本件契約書(甲及び乙各第一号証)に控訴人の住所と記載された控訴人肩書地(なお、被控訴人に右以外の控訴人の連絡先は明らかにされていなかつた。)あてに送付したところ、同月九日の配達の際控訴人は不在であり、その後一〇日間の保管期間中にも控訴人が新宿北郵便局まで受け取りに行かなかつたため、結局、右書面は被控訴人に返還され、控訴人に到達しなかつた。

右認定のような事情のもとにおいては、被控訴人が相当の期間を定めて延滞賃料の催告をすることは、控訴人側の事情により不可能かつ無意味であり、また、控訴人側の右認定のごとき背信性に鑑みれば、被控訴人に右催告を要求することは酷であるというべきであるから、被控訴人は催告をすることなく本件賃貸借契約を解除することができると解するのが相当である。

3 被控訴人が、本件訴状に、本件賃貸借契約を解除する旨を記載して本訴を提起したこと、右訴状は、昭和五八年一月一五日から同年三月一九日の間に三度にわたつて、控訴人にあてて特別送達の手続がとられたが、いずれも受取人不在、保管期間経過の理由で還付されたため、昭和五八年四月四日、東京高等裁判所内郵便局の書留郵便に付して送達されたこと(なお、原審は同年三月一七日付け通知書を通常郵便により控訴人に送付し、右の送達方法により訴状の送達を行う旨の予告を行つたこと)は、本件記録上明らかである。そして、右書留郵便が控訴人に現実に到達したことを認めるに足りる適確な証拠はない。しかしながら、控訴人は、原判決(この正本も昭和五八年六月一三日、書留郵便に付して送達された。なお、原審は同日付通知書を通常郵便により控訴人に送付し、判決正本を右送達方法により送達したこと及び控訴期間は同日から二週間である旨を通知した。)に対し、同月二七日、本件控訴の申立てをしたことが本件記録上明らかであるから、遅くとも右同日前記解除の意思表示は控訴人に到達したものと解するのが相当である。

そうすると、本件建物賃貸借契約は、遅くとも昭和五八年六月二七日、被控訴人の解除により終了したものといわなければならない。

(杉山克彦 鹿山春男 赤塚信雄)

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