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東京高等裁判所 昭和58年(ネ)2156号 判決 1984年6月27日

控訴人(原告)

中村広宣

被控訴人(被告)

高橋光雄

ほか一名

主文

一  本件控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の申立て

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人らは、控訴人に対し、各自金二四九二万一七五六円及びこれに対する昭和五五年二月二日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

4  仮執行宣言

二  被控訴人ら

主文一項と同旨

第二当事者の主張及び証拠

当事者双方が次のとおり付加したほかは、原判決事実摘示のとおりである(ただし、原判決四枚目裏末行の「関接痛」を「関節痛」に、同五枚目表三行目の「痛痕」を「瘢痕」に、同四行目の「長短」を「長差」に改める。)。

一  控訴人

被控訴人高橋には、前方注視を怠り漫然と自車を進行させたため、センターライン近くを進行してきた控訴人車の発見が遅れ、しかも、制限速度を超えて走行していたため、控訴人車との衡突を避けるために、直ちに停止し、あるいは、進路を変更する等の回避措置がとれなかつた過失がある。

二  被控訴人ら

控訴人の右主張は争う。

理由

当裁判所も、控訴人の本訴請求はいずれも理由がないものとして棄却すべきであると判断するが、その理由は、次のとおり付加するほかは、原判決の認定、判断と同一であるから、これを引用する。

控訴人は、被控訴人高橋には、前方不注視、制限速度超過の過失がある旨主張する。しかし、被控訴人高橋が本件事故現場にさしかかつた際、制限速度を超えていたことを認めるに足る証拠はなく、また、同人が前方を十分に注視していれば、どの程度の距離をおいて控訴人車を発見することが可能であつたかを確定するに足りる的確な証拠もない。もつとも、成立に争いのない乙第五号証によれば、控訴人は、実況見分に際し、三八メートル前方に被控訴人高橋運転の自動車を発見した旨の指示説明をしていることが認められるので、これを前提に、被控訴人高橋が右距離をおいて控訴人車を発見しえたとして、控訴人主張の回避措置をとりえたか否かについて検討すると、前記引用にかかる原判決認定のとおり、本件事故現場の制限速度は毎時四〇キロメートルであり、成立に争いのない乙第六号証によれば、控訴人車の速度は毎時約四〇キロメートルであつたことが認められるので、被控訴人高橋が右制限速度で進行していた場合には、仮に急制動の措置をとつたとしても、控訴人が同様の措置を講じていない本件においては衝突を回避することは不可能であり、また、両車が右速度のまま接近して衝突するまでの時間はおよそ一・七秒にすぎず、道路の幅員は片側二・七五メートル程度にすぎないので、仮りに被控訴人高橋において、急制動をかけながらハンドル操作等によつて衝突を回避しようとしても、これを回避することは著しく困難であつたといわざるをえない。したがつて、控訴人の右主張は、採用できない。

よつて、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であつて、本件控訴はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 杉山克彦 鹿山春男 赤塚信雄)

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