東京高等裁判所 昭和58年(ネ)2293号 判決
三 そこで被控訴人らの使用貸借の主張について検討する。
これまで認定した事実関係のもとでは、控訴人が二番一〇の土地を取得すると同時に千枝子との間に本件土地の使用関係が生じたことになるが、その性質は、親族間のことでもあって判定しにくいけれども、これを使用貸借と認めるのが相当であり、すなわちキン(編注・控訴人の祖母)が控訴人の親権者(実、利子)を代理し、千枝子に対し本件建物所有を目的として期間の明示なく無償使用を認めた関係になるというべきである。
右のように本件使用貸借は、一応本件建物所有の目的であるが、民法五九七条二項の趣旨及び賃貸借との対比を考えると、本件建物が腐朽・消滅するまで継続すると解するのは相当ではなく、ただ相当期間本件建物を存置するというものであるといわざるを得ない。
そして右のような目的の場合も、借主の死亡による使用貸借終了(民法五九九条)を排除しないと解すべきであるから(相続人に対しても貸与する旨明示の約定があれば別と考えられるが、本件ではそのような事実は認められない。)、千枝子が昭和五二年三月二九日死亡したことにより一旦終了すべきところ、その後も、千枝子を相続した被控訴人らが本件建物を存置、所有することに控訴人が異議を述べなかったと認められるから、引続き前同様の使用貸借関係が控訴人と被控訴人らとの間に黙示的に生じたものと解すべきである。
ところで、本件建物は貸家であって千枝子取得当時から山室浅雄が賃借居住していたことは、当事者間に争いがないが、≪証拠≫によると、山室は昭和五八年六月下旬本件建物を退去し、その後は空家状態であり、被控訴人も一回だけ管理のため泊ったことがある程度であることが認められる上、本件建物は昭和二二年以前の古い建築に係り、≪証拠≫によっても、相当傷みがはげしいことが認められ、これらの事実と被控訴人らの借用以後でも六年余(千枝子借用からは二五年)を経過したことを合わせ考えれば、本件建物所有の目的は山室の退去とともに完了し、被控訴人らが本件土地を使用収益するに足りる期間を経過したものといわなければならない。
控訴人が昭和五八年七月七日の原審口頭弁論期日で本件土地の使用貸借契約の解約を申し入れたことは記録上明らかであるところ、前認定のところから、右使用貸借は終了し、被控訴人らは本件土地の占有権原を失ったものと判断する。
(小堀 時岡 山崎)