大判例

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東京高等裁判所 昭和58年(ネ)528号 判決

控訴人は、控訴人が第一審原告となり被控訴人を第一審被告とする当庁昭和五八年(ネ)第一一七五号、一二一三号売買代金等請求控訴事件において、控訴人がその支払を訴求している売買代金債権を自働債権として相殺を主張するところ、右事件については第一審において、昭和五八年四月一八日、控訴人の請求のうち、一二八四万八〇六〇円及びうち一二三〇万八〇六〇円に対する昭和五四年七月一四日から、うち五四万円に対する同年九月二六日から支払済みまで年六分の割合による金員の支払を求める部分が認容され、現に控訴審(当庁)に係属中(本判決と同日に判決言渡し)であること、本件相殺の抗弁は、分離前の昭和六〇年三月一一日の当審第一一回口頭弁論期日においてされたことは、当裁判所に顕著な事実である。

そこで、既に係属中の別訴において訴訟物となっている債権を他の訴訟において自働債権として相殺の抗弁を提出することができるかにつき検討する。民事訴訟法二三一条が二重訴訟を禁止する趣旨は、審理の重複による無駄を避けるための訴訟経済上の要請と複数の判決において互いに矛盾した既判力ある判断がされるのを防止するためであるが、相殺の抗弁が提出された自働債権の存在又は不存在の判断が相殺を以って対抗した額について既判力を有するとされていること(同法一九九条二項)、相殺の抗弁の場合にも自働債権の存否について矛盾する判決が生じ法的安定性を害しないようにする必要があるが、理論上も実際上もこれを防止することが困難であること等の点を考えると、同法二三一条の趣旨は、同一債権について重複して訴えが係属した場合についてのみならず、既に係属中の別訴において訴訟物となっている債権を他の訴訟において自働債権として相殺の抗弁を提出する場合にも同様に妥当するものといわなければならない。

してみると、本件の場合にも同法二三一条を類推適用するのが相当であるから、控訴人の右の相殺の抗弁は理由がない。

(鈴木 時岡 宇佐見)

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