大判例

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東京高等裁判所 昭和58年(ネ)84号 判決

被控訴人井原がその所有にかかる本件土地を昭和五〇年六月以来被控訴人金澤に対して建物所有の目的で期間の定めなく賃貸し、被控訴人金澤がその地上において本件建物を所有してきたが、被控訴人井原が昭和五七年一〇月四日被控訴人金澤に送達された本件訴状をもって賃料不払を理由に右賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしたことについては、当事者(被控訴人両名及び控訴人。以下、これに同じ。)間で争いがない。また、控訴人が本件建物を目的とする任意競売事件において、昭和五七年一〇月八日売却許可決定を受け、同年一一月一〇日代金を納付して本件建物の所有権を取得したこと及び控訴人が右建物とともに本件土地の賃借権を取得したとして、昭和五八年一月七日、被控訴人井原を相手方として浦和地方裁判所に対し借地法九条ノ三に基づき賃借権の譲渡の承諾に代る許可を求める申立てをし、右事件が同庁昭和五八年(借チ)第一号競売にともなう土地賃借権譲受許可申立事件として係属していることは、被控訴人井原においてこれを認め、被控訴人金澤においても明らかに争わないところである。

本件控訴は、以上の事実関係から、被控訴人金澤の本件土地に対する賃借権が存続している限り、前記競売により本件建物所有権に従たる権利としてこれを同被控訴人から承継取得し、前記借地非訟事件においてその申立てを認容する裁判が確定することを条件に右借地権取得をもって被控訴人井原に対抗しうる地位を取得すべき立場に立った控訴人が、その地位を擁護するため、民訴法七一条により被控訴人両名間の前記賃貸借契約解除を原因とする建物収去土地明渡請求訴訟に対する参加の申立てをするとともに提起したものであり、本件建物を収去して本件土地をその所有者である被控訴人井原に明渡すべき義務の存否に関する紛争の主体たる地位は、控訴人に承継されたものというべきであるから、右参加申立ては適法であり、右建物収去土地明渡義務の存否、したがってその理由となる本件土地賃貸借契約解除の当否は、同法六二条の準用により、当事者間で合一にのみ確定されるべきものといわなければならない。

ところで、前叙のとおり控訴人は前記借地非訟事件において賃借権の譲渡の承諾に代る許可の申立てを認容する裁判が確定することにより、はじめて被控訴人井原に対抗することができる借地権を取得することになるが、一般に借地法九条ノ三による申立てがされたとき、その裁判確定までの間、建物買受人の敷地占有を無権原なものとして、直ちに土地所有者(賃貸人)への明渡し及び損害金の支払を実行させるならば、買受人が後に譲渡許可の裁判を得ても占有の回復等に困難を来たすことは必定であるし、また同条の立法趣旨が建物買受人の敷地利用権の安定を図ることにあることは疑いのないところであるから、同条の裁判手続進行中は、建物買受人の敷地占有をもって確定的に無権原なものとすることは相当でなく、土地所有者(賃貸人)が明渡請求権及びこれに付随する損害賠償請求権を行使することは許されないと解される。したがって、控訴人は、被控訴人井原に対し、右譲渡許可の申立てを棄却若しくは却下する裁判が確定し、又は、許可の申立ての取下げによって事件が終了したときにおいてのみ、本件土地の明渡義務及び不法占有を理由とする損害賠償義務を負うものというべきである。そして、本件土地の賃料が月額金三万五〇〇〇円であることは当事者間に争いがないから、被控訴人井原の控訴人に対する建物収去土地明渡請求及び建物所有権取得の日の翌日より損害金の支払を求める請求は、前記裁判の確定又は取下げによる事件の終了により、同被控訴人の承諾に代る許可の裁判を得られないことに確定したことを前提としてのみ認容されるべきものといわなければならない。

(横山 尾方 浅野)

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