東京高等裁判所 昭和58年(ラ)125号 決定
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【判旨】
一本件抗告の理由は、
1 相手方を債権者、抗告人を債務者とする東京地方裁判所昭和五六年(ケ)第六三四号不動産競売事件につき、同裁判所は、昭和五六年五月二二日の不動産競売開始決定において、その請求債権に申立どおり別紙1記載の債権(以下「旧債権」という。)を表示しながら、相手方の更正決定の申立に基づき昭和五八年二月一六日請求債権を別紙2記載の債権(以下「新債権」という。)に更正する旨の決定をした。
2 しかし、新債権は、旧債権とその内容を異にするばかりでなく、金額は大幅に増額され、弁済期日も旧債権は昭和五六年五月二〇日であるのに新債権のそれは競売開始決定後である昭和五七年一〇月三一日とされている。民事執行法二〇条によつて準用される民事訴訟法一九四条によれば、更正決定が許されるのは、「違算、書損其ノ他之ニ類スル明白ナル誤謬アルトキ」に限られ、しかも、それが記録上明らかである場合に限定されることは判例通説の一致して認めるところであるが、原決定は、これらの要件が充足されていないにもかかわらず、明白なる誤謬があるものとして請求債権を更正したもので、違法である。
というものである。
二そこで、判断するのに、記録によれば、抗告の理由1の事実が認められる。また、相手方の更正決定申立書によれば、新債権は、元金債権、利息債権、損害金債権から成つているところ、そのうち元金債権は、旧債権に対応する三口の合計三六〇〇万円の借入金債務の外、二八五六万円の約束手形金債務と二八九万四九七〇円の借入金債務の総合計六七四五万五一七〇円の債務について、抗告人と相手方が昭和五五年一〇月二一日準消費貸借契約を締結した結果成立した債権であることが認められる。そうであるとすれば、新債権と旧債権とは全く別個の債権というべきであるが、記録によつても、相手方が当初から新債権に基づいて本件不動産競売を申し立てる趣旨であつたことを認めるに足りる資料はない(なお、新債権の弁済期日は、本件不動産競売申立時より後である昭和五七年一〇月三一日であるから、もし、相手方が新債権に基づいて競売を申し立てたとすれば、弁済期未到来によつて右申立は却下される筋合にあつた。)。
ところで、競売開始決定を更正する場合においては、民事執行法二〇条により民事訴訟法が準用され、同法二〇七条、一九四条によつて、競売開始決定に当該決定書及び手続の全過程から「違算、書損其ノ他之ニ類スル明白ナル誤謬」がある場合に限つて更正が許されるものであるところ、前記の事実からすると、本件不動産競売開始決定に請求債権として掲げられた債権の表示に、本来新債権を掲記すべきであつたものを誤つて旧債権を掲記した、という明白な誤謬があつたとは到底認めることができない。そうすると、更正することができないのにこれを許した原決定は違法といわざるをえず、本件抗田は理由がある。
(岡垣學 磯部喬 川﨑和夫)