大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和58年(ラ)79号 決定

民事執行法一九三条一項にいう「担保権の存在を証する文書」(それが強制執行における債務名義に準ずるものであるか否かの点はしばらく措く)とは、公文書である必要はないが、文書自体から担保権の存在が証明されるものでなければならないと解するのが相当である。

抗告人が本件において提出した文書が抗告人主張の動産売買の先取特権の存在、すなわち抗告人と債務者との間における本件物件の売買(以下「本件売買」という)の事実を証明するに足りるものであるか否かについて検討する。

1 《証拠》(報告書)、《証拠》(納品書)及び《証拠》(請求書)には本件売買の存在を肯定する趣旨の記載があるが、これらはいずれも抗告人側で一方的に作成した文書であるから、本件売買の事実を証明するに足りないことは明白である。

2 《証拠》(貨物受領書)及び《証拠》(「証」と題する書面)によれば、債務者と第三債務者との間における本件物件の売買の事実と右物件が抗告人から第三債務者に直送された事実が認められる。

本件売買と関連性のある文書は以上のとおりであるが、抗告人と債務者との間に取引主体として第三者が介在する可能性を否定することができないから、これらの文書だけでは本件売買の事実を証明するに足りないものというべきである。

よって、抗告人提出の資料では「担保権の存在を証する文書」の提出があったとはいえないとして、本件債権差押命令の申立てを却下した原決定は相当であ<る。>

(岡垣 山田 磯部)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!