大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和58年(行ケ)104号 判決

事実及び理由

一  請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本件考案の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二  そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。

1  成立に争いのない甲第九号証(本件考案の実用新案出願公告公報)によると、本件考案は、発光部に発光ダイオードを使用し、受光部に受光子を使用する反射式光電検出装置においては、「発光ダイオードと受光子の間隔を接近させて反射光の受光子への有効入射量を可及的に増加させること」(同公報の考案の詳細な説明中、第一欄第三六行ないし第二欄第一行)などを必要とすることに伴い、「多力な振動電流で駆動される発光ダイオードと大きな増巾度を有する増巾器の入力部である受光子とを近接して固定しなければならなくなりそうすれば発光ダイオードと受光子が静電結合、あるいは電磁結合を生じ、増巾器出力からは受光部に反射光が入射していないにかかわらず出力を生じて反射式光電検出装置の検出動作を不健全にする」(同第二欄第六行ないし第一三行)との知見に基づき、「この欠点を除いたものである」(同第二欄第一三行)ことが認められる。

2  甲第一号証に、本件考案の<1>の構成要件、すなわち「発光部Aに小型化された大きな振動電流を発する発振装置とその装置の大きな振動電流で駆動される発光ダイオードを使用し、受光部Bにホトトランジスタ、Cds等の半導体受光子とその受光子を入力部に接続した増巾度の大きい増巾器とを使用した反射式光電検出装置」と同一のものが記載されていることは、当事者間に争いがない。

そして、成立に争いのない甲第二号証によると、甲第二号証には、発光素子としてGaAs発光ダイオードを用いて成る発光部と受光素子としてシリコンホトトランジスタを用いて成る受光部とを有し、それらを窓ガラス付きのジアリルフタレート樹脂の成形品ブロツクによつて支持して成る反射式光電検出装置が記載されていることが認められる(この点は、「窓ガラス付き」とある点を除き、当事者間に争いがない。)。

原告は、甲第二号証には、反射式光電検出装置において、発光ダイオードと受光子とを、十分な厚みを持つジアリルフタレート樹脂のブロツク中に相互に近接して形成した二つの取付穴に、それぞれ挿入固定した装置が示され、このブロツクの材料として合成樹脂を用いる必然性はないから、これを金属板のような導電性を有する材質のものとしてよく、その場合、発考素子及び受光素子を電気的に絶縁するようにして両素子を取付穴に固定するため、両素子をそれぞれ絶縁物で取り巻いて取付穴に挿入することは、当業者にとつて自明な、普通の技術手段であるとして、本件考案の構成要件<2>のうちのaの要件、すなわち「充分な厚みをもつた金属板に接近させて形成した取付穴に前記発光ダイオードと受光子とを絶縁物で取巻いて挿入固定する」ことは、当業者が必要に応じてきわめて容易に推考し得た、単純な設計的事項である旨主張する。

しかしながら、前掲甲第二号証によると、同号証には、右ブロツクの材料を合成樹脂から金属に代えることを示唆する旨の記載がないことが認められ、しかも、原告主張のように、右ブロツク材料が合成樹脂でなければならないという必然性はないとは認めることはできず、原告主張のように、右材料として、合成樹脂に代えて金属を用いることが自明のことであるものとは到底認め難い。

そして、金属体に電子部品を取り付けるとき、物品を適当な材料により包囲した上で、金属板に形成された取付穴に挿入固定すること、その場合に電子部品と金属体とが電気的に接触するのを防ぐために電気部品を絶縁物で覆うことは、本件出願当時よく知られていた技術手段ということができるが、反射式光電検出装置においては、金属から成る右ブロツクを同装置に用いることが本件出願当時知られていたことを認めるべき証拠はないから、金属から成る右ブロツクの中に、発光ダイオードやホトトランジスタのような電子部品を挿入固定する際に、これら電子部品を絶縁物で取り巻くことが普通によく知られていた技術手段であつたということはできない。

してみれば、本件考案の<2>aの構成要件が、原告主張のように甲第二号証及び本件出願当時普通に行われていた技術手段から必要に応じてきわめて容易に推考し得た程度のものであると認めることはできないというべきである。

3  次に原告は、本件考案の構成要件<2>のb、すなわち「前記増巾器の接地点に前記金属板を接続してその金属板を零電位に保持し、該金属板によつて発光ダイオードと受光子の静電結合或は電磁結合を遮蔽したこと」について、発光ダイオードのような小型化された光源と半導体受光子とが近接配置され、光源からの発光を半導体受光子により電気的出力に変換し、それを増幅器で増幅するように構成された装置、例えば光結合回路や光電検出装置において、これら素子間の静電結合や電磁結合を回避、除去することは、甲第三ないし第六号証に示されるように、本件出願当時極めて普通の技術的課題であり、これを解決するための具体的手段として普通に用いられているものが、これら素子間に介在させた高導電率の金属体を接地することであることも当業者にとつて自明ないし容易に把握し得る事項であつたし、また、甲第七号証に示されるように、右高導電率の金属体を接地することによつて特に高周波において静電遮蔽と電磁遮蔽を同時に行うこともごく普通のこととされていたことであるから、右構成要件もきわめて容易に推考できた、単純な設計的事項にすぎない旨主張する。

(1)  まず、成立に争いのない甲第三号証によると、甲第三号証には、発光素子としてGaAsダイオードと、受光素子としてのシリコンホトトランジスタ又はホトトランジスタを対向配置し、これら素子間にシールド(遮蔽手段)を配置して成る光結合回路が記載されている(図17.107(a)・108本判決別紙図面(3)参照)ことが認められる(この点は、図面の摘示を除き、当事者間に争いがない。)。このように、甲第三号証には、発光ダイオードと受光素子との間にシールドを配置することが示されているが、甲第三号証に記載の装置は、これらの素子を対向させて成る光結合回路であつて、これら素子の間の配置関係が本件考案のものと異なつているものである。のみならず、甲第三号証には、右シールドがどのような目的で設けられたかについての記載がないのであつて、右シールドを設ける目的が、前記本件考案の目的、すなわち、高感度の検出装置を得るために発光ダイオードと受光子を近接固定した際、これら素子が静電結合や電磁結合を起こして誤動作するのを防ぐための目的をもつて行われたものと認めることはできないのである。

(2)  成立に争いのない甲第四号証によると、甲第四号証には、交流電源によつて点滅される発光素子としてのネオン放電管と、受光素子としてののCdSeセルとを対向配置し、これら素子間に導電性ガラスを配して電源からの静電誘導を遮蔽するとともに、これら素子にパーマロイ板を巻くことによりネオン放電管の放電に伴う磁気遮蔽を施したホトチヨツパ装置が記載されており(この点は当事者間に争いがない。)、ネオン管と光導電素子とから成る二つの素子の間に、導電性ガラスのシールドを配置することが示されていることが認められる。

しかし、甲第四号証記載の装置も、これら素子を対向配置させたホトチヨツパ装置であつて、これら素子の配置関係が、本件考案とは異なつているのである。なるほど、これら素子間に設けた右シールドの目的が静電誘導を遮蔽する点において本件考案の目的と一部一致するものということができるが、右にみたように、これら素子の配置関係が本件考案におけるのと異なつている以上、甲第四号証における右シールドが、本件考案におけるような反射式光電検出装置の静電結合及び電磁結合の遮蔽という目的を全面的に達成するための技術手段ということはできない。

(3)  次に、成立に争いのない甲第五号証によると、甲第五号証には、断続光を発する発光素子としてのネオン管と、受光素子としてのCdS等の光導電素子とをそれぞれ配置する光導電チヨツパにおいて、ネオン管には信号に比べ著しく大きな電圧を加えるので、静電的遮蔽を十分に行わなければスパイク電圧を誘導しやすいこと及びネオン管と光導電素子との間に、一端が接地された遮蔽体を設けていることが記載されており(この点は当事者間に争いがない。)、右装置も、右各素子を対向配置している光導電チヨツパ回路であることが認められる。

しかし、甲第五号証記載の装置におけるこれら素子の配置関係は本件考案のものと異なるものであり、甲第五号証における各素子間に設けた静電的遮蔽の目的は、スパイク電圧の誘導の防止にあるのであるから、本件考案における前記目的と全面的に一致しているものではない。

(4)  さらに成立に争いのない甲第六号証によると、甲第六号証には、As2S3の光パイプの一端に発光素子としてのGaAs発光ダイオードを、他端に発光素子としてのホトトランジスタを含むマイクロ回路をそれぞれ固定し、該マイクロ回路を収容する遮蔽用金属容器(光パイプのための開孔を備え、マイクロ回路を支持するTO-5ヘツダ上に置かれる)を接地することによつて静電結合に対する十分な遮蔽を行う光結合回路が記載されており(この点は当事者間に争いがない。)、このように対向配置された発光ダイオードとホトトランジスタから成る素子の間に、金属容器による、静電結合に対する遮蔽手段が設けられていることが認められるが、この装置も、これら素子を対向配置させて成る光結合回路であつて、これら素子の配置関係は本件考案のそれと異なるものであるし、また、静電遮蔽を設けた目的も、本件考案における遮蔽の目的とは全面的に一致しているものではない。

(5)  以上みてきたところによると、甲第三ないし第六号証にそれぞれ記載されている発光素子と受光素子との配置関係は、いずれもそれらを対向配置させたものであつて、本件考案の反射式光電検出装置の構成のように、それらを並べて配置させたものではないのである。したがつて、右甲号各証のそれぞれの遮蔽の目的も本件考案の遮蔽の目的とは全面的に一致しているものではない。そうすると、右甲号各証は、小型化された光電装置の発光素子と受光素子との間に遮蔽を設けるという技術手段がよく知られたものであることを示しているということはできるにしても、これらから直ちに、小型化された反射式光電検出装置において、発光素子と受光素子とを近接配置する場合に、これらの素子を挿入固定する金属板によつて静電結合及び電磁結合の遮蔽を行うという点までが、本件出願当時よく知られた技術手段であるとか、自明の技術手段であることを示すものということはできない。

(6)  さらにまた成立に争いのない甲第七号証によると、甲第七号証には、主として高周波における電磁界の影響を防止するため、高導電率の金属で対象物を覆い、かつ該金属を接地することによつて、静電遮蔽と電磁遮蔽とを同時に行い得ることが記載されていることが認められる。このように、甲第七号証には、高導電率の金属体を接地することによつて、静電遮蔽と電磁遮蔽を同時に行う技術手段が示されているが、そこには、右技術手段を反射式光電検出装置における発光素子と受光素子との間の静電遮蔽及び電磁遮蔽に使用する旨の直接的な記載、あるいはそれを示唆する記載はない。のみならず、甲第七号証においては、右技術手段を前記甲第三ないし第六号証に示されているような、発光素子と受光素子を対向配置させた関係にある装置に遮蔽として適用することができる旨の記載も見いだすことはできないのである。そうすると、甲第七号証に記載のものを介在させても、甲第三ないし第六号証に記載されている遮蔽の目的を、本件考案における前記遮蔽の目的と全面的に一致させることが予期できたものと認めることはできないというべきである。

(7)  したがつて、本件考案の構成要件<2>のbは、甲第三ないし第七号証に基づききわめて容易に推考できた程度のことにすぎないとする原告の主張は理由がないというべきである。

4  なお、原告は、本件考案の構成要件<2>の容易推考性の有無を判断するには、いわゆる「寄せ集め」という特殊な類型にはめこまないで、むしろより一般的な「転用」の類型に則つてその判断を行うべきであるのに、審決は前者の類型で判断したから、右判断と本件考案の構成要件<2>の容易推考性を否定した判断との間には、論理的飛躍があると主張する。

原告の主張の趣旨は必ずしも明瞭でないが、審決は、本件考案は、「甲第一号証に記載された公知技術に対し甲第二号証に記載された公知技術及び甲第三~七号証に記載された周知・慣用の技術を単に転用したにすぎず、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである」旨の原告の主張に対し、甲第二号証の反射式光電検出装置は発光ダイオードと受光子との静電結合及び電磁結合を遮蔽することはできないし、右装置におけるブロツクを単に金属に変換したところで本件考案の構成要件<2>が得られるものではなく、また、甲第三ないし第六号証には右構成要件<2>が記載されていず、甲第三ないし第六号証記載の装置には右構成要件<2>に基づく審決説示の本件考案特有の作用効果を期待できず、さらに甲第七号証にも右構成要件<2>が記載されていないとして、原告の前記単なる転用の主張は(それが主張自体としては単なる転用の類型に該当するものであるとしても)、右の諸点において単なる転用の要件を満たしていないと判断した趣旨であることは、審決の理由を通覧すれば明らかである。そして、審決は、その説示に付加して、「甲第二~七号証に記載された事項を単に寄せ集めても、前記構成要件<2>を得ることはできない。」として、本件考案が甲第二ないし第七号証記載の技術の単なる寄せ集めによつて構成されたものでもないと判断したのである。要するに、審決は、原告の単なる転用の主張を排斥し、これに付加して単なる寄せ集めでもないと説示して本件考案の容易推考性を否定したのであるから、この点を正解しないで審決を論難する原告の前記主張は失当といわざるを得ない。

5  原告は、反射式光電検出装置において発光ダイオードと受光子との間の静電結合及び電磁結合を遮蔽することによつて、極めて高い感度と安定度を得ることができるという本件考案の作用効果は、甲第一、二号証記載の公知技術、甲第三ないし第七号証各記載の周知・慣用の技術によるそれぞれの作用効果が加算的に奏されるもので、これらのものから当然に予測できるものにすぎないと主張する。

しかしながら、本件考案は、反射式光電検出装置において生じる前判示の技術課題、すなわち、「発光ダイオードと受光子の間隔を接近させて反射光の受光子への有効入射量を可及的に増加させること」などを必要とすることに伴い、発光ダイオードと受光子とを近接して固定しなければならなくなつたことから起こる静電結合あるいは電磁結合によつて、「増巾器出力からは受光部に反射光が入射していないにかかわらず出力を生じて反射式光電検出装置の検出動作を不健全にする」ことを防ぐという技術課題を解決するために考案されたもので、右のような技術課題は甲第一ないし第七号証のいずれにも存しないし、その解決手段についての記載も存しないことは、前記3において判示したところから明らかである。

そうすると、右技術課題及びその解決手段である本件考案が奏する作用効果は、いずれも甲第一ないし第七号証の記載からきわめて容易に予測できたものとは到底認め難い。

6  終わりに、請求の原因四3における原告の主張(被告の主張に対する反論)のうち、以上の当裁判所の認定、判断に牴触する内容のものを取り上げて判断を加えておく。

(1)  請求の原因四3(1)において原告は、発光素子と受光素子とを近接配置することにより光路長を短くし、受光素子の受光量を増大させる必要があることは、反射式光電検出装置のみならず、透過式光電検出装置においてもいえることであり、本件考案の実用新案公報の考案の詳細な説明にも明示されておらず、しかもこれら素子を近接配置することによりこれら素子間に生じる静電結合又は電磁結合に基因して発生する不正信号をなくしておくことが望ましいことは、透過式光電検出装置であつても同じである旨主張する。

そこでこの点について検討するに、まず、確かに、透過式光電検出装置においても、発光素子と受光素子とを近接配置すれば、その間の光路長は短くなり、これら素子間に静電結合及び電磁結合が多くなるということは技術常識であるということができる。しかし、まず透過式光電検出装置の場合は、通常、光パイプや光遮蔽体等を用いることによつて、光路は外部に対して閉じられた回路になつていて、発光素子の光がほとんど全部受光素子に伝達されるように構成されているばかりか、外部の光が受光素子に伝達されないような構造になつている。これに対して、反射式光電検出装置の場合は、光案内路は一応設けられているものの、発光素子の光が反射体で反射を受ける際に一時的に装置の外部に出るように構成されている点において、光路の一部は外部に対して開光路になつているのであつて、右開光路部で光の損失が生じるだけでなく、外部の明るさの影響も受け、さらに、光が反射体で反射を受ける際も相当量の反射損失を被ることが技術常識であるというべきである。したがつて、反射式光電検出装置では、その感度を高めるために、光路長の程度が技術課題となる度合いが、透過式のものよりもはるかに高いものということができる。本件考案の実用新案公報の考案の詳細な説明にもこの点につき明示の記載があることは前記1認定のとおりである。

次に、発光素子と受光素子の静電結合又は電磁結合の点についてみても、反射式光電検出装置の場合、光路長を短くすれば必然的にこれら素子の間隔が極端に近くなることはその構造から明らかなことであり、これら素子が相当近接すれば、それに相応して静電結合又は電磁結合が可及的に増大するであろうことも、当然に予測できることである。したがつて、静電結合又は電磁結合は、反射式光電検出装置の方が透過式の装置に比べてはるかに大きな技術課題として取り上げなければならない点であるということができる。そして透過式光電検出装置においても、これの素子が近接配置されれば、不正信号が導出されることがあることは、成立に争いのない甲第二八号証(米国特許第三、四三六、五四八号明細書)によつて認められるところであるが、右不正信号の発生の割合はこれら素子の近接の程度によつて左右されるものであることは技術常識というべきであり、既に述べたように、これら素子は反射式光電検出装置の方が透過式の装置に比べて極端に近接配置されなければならないものであるから、不正信号の発生の度合いは、反射式光電検出装置の方が、透過式の装置に比べて大きいものというべきことは明白である。

そうすると、発光素子と受光素子の近接配置、すなわち光路長の短縮の技術課題、並びにこれら素子の静電結合及び電磁結合の遮蔽の技術課題は、いずれも反射式光電検出装置に特有のものであるというべきであつて、前記原告の主張は理由がない。

(2)  請求の原因四3(2)において原告は、甲第三ないし第六号証に示されているホトチヨツパ等の透過式装置においても透過損失は反射式光電検出装置の反射損失と同様なものとして認識でき、この透過損失による受光量の減少は解決すべき技術課題の一つであり、この点において技術的事情は反射式光電検出装置と共通するものがあるところ、もともとこれらの透過式装置と本件考案の反射式光電検出装置とは、同一技術分野に属する装置であるといえるものであるから、一方の技術手段を他方に転用することはきわめて容易である旨主張する。

確かに成立に争いのない甲第二七号証の一ないし三(最新電子部品ハンドブツク、昭和五〇年一〇月三〇日電波新聞社発行)によると、同書第三四二ないし第三四五頁に、反射式のホトセンサが光結合素子(そこでの定義によれば、「電気的には絶縁され、光学的には結合されている発光部と受光部を持つ光電変換素子」)の構造例(第三四三頁図2)として記載されていることが認められ、また、原告の主張のように、ホトチヨツパにおいても発光ダイオードと受光子とが対向配置された透過式でなければならないという必然性はないとしても、このことから直ちに、反射式の光電検出装置に生じる技術課題が、透過式の装置においても技術課題として把握し得るものということはできない。また、成立に争いのない甲第二四号証の一ないし八、第二五号証の一ないし八によると、特許庁編IPC特許・実用新案国際特許分類表第二版及び同庁編JPC特許・実用新案分類表改訂第三版においては、光電検出装置における透過式のものと反射式のものとを特に区別して掲げていないことが認められるが、右各分類表は、特許及び実用新案の文献の抽出のために、便宜上技術分野を区分けし細分化しているものであるから、右二つの装置が右各分類表に区別して掲げられていないからといつて、このことから直ちに、この二つの装置が同一の技術分野に属するものと断定することはできないというべきである。それゆえ、右分類表の区分方法から、甲第三ないし第六号証で記載されている技術手段が反射式光電検出装置と技術的親近性を有し、前者の技術手段をきわめて容易に後者に転用することが可能であると認めることもできない。

(3)  請求の原因四3(3)において原告は、本件考案の要旨でいう「電磁結合」の意味自体が不明であるし、少なくとも静電結合に関する限り、甲第三ないし第六号証記載の装置と本件考案との間においてその遮蔽の目的に本質的な差異はない旨主張する。

しかしながら、前掲甲第九号証によると、本件考案の実用新案出願公告の考案の詳細な説明中、第三欄第一、第二行に「多大な振動電流を駆動電流とする発光ダイオード2」と記載されていることが認められ、この記載からすると、本件考案の雑音放射の原因となる電磁結合は、発光ダイオードに供給される振動電流によつて生じることが明らかである。そうすると、本件考案の要旨でいう「電磁結合」の意味自体が不明であるとの原告の主張は理由がないものというべきである。また、不正信号の発生の点は甲第三ないし第六号証記載の装置にも存在することであるが、その発生の度合いは透過式光電検出装置について前記(1)において述べたと同様に、反射式光電検出装置の方が、透過式装置に比べて大きいものである。これと異なる見解に立脚して甲第三ないし第六号証記載の装置と本件考案との間において静電結合遮蔽の目的に本質的な差異はないとする原告の主張も失当である。

(4)  請求の原因四3(4)において原告は、本件考案における、発光ダイオードや受光子を金属板で支持する機能、並びに、金属板そのものの概念がいずれも明白でないと主張する。しかしながら、前記本件考案の要旨には、「充分な厚みをもつた金属板に接近させて形成した取付穴に前記発光ダイオードと受光子とを絶縁物で取巻いて挿入固定する」との記載があつて、この記載によると、発光ダイオードと受光子の二つの素子は、その具体的態様はともかくとして、絶縁物に取り巻かれ、金属板の取付穴に挿入固定されていることが明白であり、また、これら素子が金属板の取付穴に挿入固定されていることからすると、金属板の厚みは、これら素子を固定するのに十分な厚みのものということができる。そうすると、原告主張のように、これら素子を金属板で支持する機能についても、金属板そのものの概念についても、不明のものであるなどということは到底いい難い。

原告は同じく請求の原因四3(4)において、一般に柔軟性を有する充填物で物品を取り巻き、取付穴に挿入固定するという支持構造、支持機能はしばしば見受けられるものであるから、本件考案における支持機能はこれからきわめて容易に類推できる程度のものである旨主張する。しかし、本件考案における挿入固定する構成が単に支持機能にとどまるものでなく、絶縁物で絶縁する機能を有するものであることは、前記の本件考案の要旨から明らかである。原告の右主張も理由がない。さらに原告は請求の原因の同じ個所で、発光ダイオードあるいは受光子には金属ステムを有するものがあることを理由として、支持のために金属板が用いられていても、金属板は静電結合の遮蔽に格別寄与しないと主張する。しかし、原告が指摘する甲第一、二号証には、発光ダイオードあるいは受光子に金属ステムを有するものがあるとの記載はないし、他にこの点を認めるべき証拠はない。原告の右主張も理由がない。

(5)  そして、右(1)ないし(4)で判断を加えた以外のその余の原告の主張は、前記2、3においてした認定、判断を左右するものではない。

7  以上判示したところによると、審決が「本件考案は、甲第一~七号証に記載された事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認めることができない。」とした認定、判断に誤りはなく、審決には、原告主張の違法は存しないということができる。

三  よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却することとする。

〔編註その一〕本件考案の要旨は左のとおりである。

発光部Aに小型化された大きな振動電流を発する発振装置とその装置の大きな振動電流で駆動される発光ダイオードを使用し、受光部Bにホトトランジスタ、CdS等の半導体受光子とその受光子を入力部に接続した増巾度の大きい増巾器とを使用し、充分な厚味をもつた金属板に接近させて形成した取付穴に前記発光ダイオードと受光子とを絶縁物で取巻いて挿入固定すると共に前記増巾器の接地点に前記金属板を接続してその金属板を零電位に保持し、該金属板によつて発光ダイオードと受光子の静電結合或は電磁結合を遮蔽したことを特徴とする反射式光電検出装置。

(別紙図面(1)参照)

〔編註その二〕本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面(1)

<省略>

(以下省略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!