東京高等裁判所 昭和58年(行ケ)259号 判決
一 請求の原因一ないし三は、当事者間に争いがない。
二 そこで、原告が主張する取消事由の存否について検討する。
成立に争いのない甲第二号証、第三号証、乙第一号証によれば、本願発明の構成は、特許請求の範囲に記載されたとおり、ガス多量流出を自動で止める方法であつて、それ以上具体的な限定がないことが明らかである。
そして、引用例に記載のものは、流体自動停止活栓に関するものであり、この活栓はガスの供給、停止のために用いられ、特にガスの供給時にゴム管が外れ、ガス流出量が増大することにより、自動的にガスの流れを停止せしめるように構成されているから、そこには、ガス多量流出に際して自動的にガスの流出を停止する方法が開示されているということができる。
そうすると、本願発明は引用例に記載されたものと同一であることは明らかである。
1 構成上の差異があるとの主張について
原告は、本願発明が引用例と具体的構造において異なる根拠として、本願明細書添付第1図面、第2図に示されたものをあげるが、これらは一実施例に過ぎず、特許請求の範囲はおろか発明の詳細な説明にも、本願発明を右実施例の実施態様に限定する旨の記載はないから、この点の主張は採用することができない。
2 用途が異なるとの主張について
原告は本願発明が引用例のものと相違する根拠として用途の違いをいうが、特許請求の範囲にその主張するような用途の限定がないばかりでなく、発明の詳細な説明にも、「ガスの流れる量が定めた量を超える時、自動で弁が閉る様に成つて居るのです。」と記載されているだけで、何ら用途を限定する示唆もうかがえないから、その主張は採用することはできない。
3 作用効果の相違があるとの主張について
前記のとおり、本願発明はガス多量流出を自動で止める方法に関するものであつて、発明の詳細な説明に「ガスの流れる量が定めた量を超える時自動で弁が閉る様に成つて居るのです。」と記載されていることにかんがみれば、ガスの流れに異常を生じた場合、流出ガス量が基準状態を超えたことにより弁が自動的に閉まるものと理解することができるが、引用例にも同じくガス多量流出を自動的に止める方法が示されているのであつて、ガスの流れる量が基準状態である定めた量を超えると自動的に弁が閉まるものであつて、その技術的意義において本願発明と異なるところがなく、その作用効果も相違がないものといわねばならず、原告が主張する効果の違いとするところは、明細書上の根拠もないから、採用することはできない。
三 そうすると、本願発明を引用例のものと同一とした審決には原告の主張するような判断の誤りはないから、その取消を求める原告の本訴請求は理由がなく、棄却を免がれない。