東京高等裁判所 昭和58年(行ケ)85号 判決
一 請求の原因一ないし三の事実は当事者間に争いがない。
二 そこで、審決取消事由の存否について判断する。
右争いのない本願発明の明細書の記載によれば、その特許請求の範囲の項には、単に抽象的な希望事項を述べるにとどまり、スプリングの引力を利用して自動で回転する原動機をいかなる技術的構成によつて実現するのか全く記載されていないし、また、その発明の詳細な説明の項にも、本願発明にかかる原動機は燃料を使用しないので、排気ガスがなく空気のために良く、費用がいらないという単なる希望事項を述べるにとどまり、図面の簡単な説明の記載(成立に争いのない乙第五号証)及び添付図面(成立に争いのない乙第二号証・昭和四九年八月一八日付手続補正書の添付図面)を参照しても、本願発明の、従来技術との関連における具体的な解決課題、その課題を解決するために講じた技術的手段と作用、その技術的手段を採用したことによる具体的な本願発明特有の効果を全く理解することができない。
したがつて、本願発明の明細書の特許請求の範囲は、発明の構成に欠くことができない事項を記載したものとはいえないし、発明の詳細な説明は、本願発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載したものとはいえないことが明らかであるから、本願発明の明細書が特許法第三六条第四項及び第五項に規定する要件を満たしていないとした審決の判断は正当であつて、審決に原告主張の違法の点は存しない。
三 よつて、審決が違法であるとしてその取消を求める原告の請求は理由がないから、これを棄却することとする。