大判例

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東京高等裁判所 昭和59年(う)104号 判決

原判決は,薬事法2条1項2号にいう「医薬品」の意義について,「薬事法の立法趣旨が,医薬品の使用によってもたらされる国民の健康への積極・消極の種々の弊害を未然に防止しようとする点にあることなどに照らすと,同法2条1項2号にいう医薬品とは,その物の成分,形状,名称,その物に表示された使用目的・効能効果・用法用量,販売方法,その際の演述・宣伝などを総合して,その物が通常人の理解において『人又は動物の疾病の診断,治療又は予防に使用されることが目的とされている』と認められるものをいい,これが客観的に薬理作用を有するものであるか否かを問わないと解するのが相当である」としたうえ,右基準に照らして本件「ビバ・ナチュラル」は前記法条にいう「医薬品」にあたると判断している。

しかし,原判決が,「ビバ・ナチュラル」の形状,外箱のレッテル,小売価格,用法用量の表示等から右品が外観上医薬品に相当程度近似していると判示しているのは事実誤認であり,また,原判決が,右品の販売形態及びその際の演述・宣伝において,被告人らが販売の目的で医薬品的効能効果について言及したと判示しているのも事実誤認である。

したがって,原判決の示した前記基準によっても本件「ビバ・ナチュラル」は前記法条にいう「医薬品」にあたらないのに,これをあたるとした原判決の判断は,判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認である。

以上のようにいうのである。

そこで検討すると,原判決は,薬事法2条1項2号にいう「医薬品」の意義について所論指摘のとおりの見解を示しているのであるが,その見解は当裁判所も正当としてこれを是認することができる(最高裁判所昭和56年(あ)第58号同57年9月28日第三小法廷判決・刑集36巻8号787頁参照)。

そして,原判決挙示の関係証拠によれば,原判決が,本件「ビバ・ナチュラル」について,その形状が顆粒状粉末1グラム入りのアルミ袋が1箱に30包入っているもので,医薬品の形状に類似し,昭和52年4月20日ごろ以降に販売した分については,外箱に東京都医師協同組合連合会推奨品のレッテルが貼られ,小売値が1箱4,500円で,普通の海藻の市価と比較して高価であり,本件販売に当たって使用された効能書や宣伝用パンフレットの説明文中には「1箱(30包入り,1か月分)」との表示があって,1日1包の処方を指示しているとみられる旨認定説示しているところは,いずれもこれを肯認することができる。

原判決の認定した右の諸事実に加えて,1箱4,500円の前記小売値が「ビバ・ナチュラル」の外箱に表示されていること,及び右箱内に入れてある厚目の紙を使用した印刷物にも1日1包の処方を指示したとみられる記載があること(押収してある海藻のエキス,ビバ・ナチュラル((30包入))1箱,当庁昭和59年押第26号の13)など,関係証拠上明らかな諸事実を併せ考えると,「ビバ・ナチュラル」のアルミ袋30包を納めてある箱の外部に「ビバ・ナチュラルVIVA-NATURAL」のほか「海藻のエキス」,「健康食品」と表示してあるうえ,その箱の中に入れられている約7センチメートル平方大の注意書の中に「当製品・海藻のエキス『ビバ・ナチュラル』は薬ではありません。」との記載があること(前同号の13)を考慮に入れても,原判決が結論として,本件「ビバ・ナチュラル」が「外観上医薬品に相当程度近似しているとの印象を否めない。」とした判断は,相当としてこれを是認することができる。

また,原判決挙示の関係証拠によれば,原判決が,被告人らは,本件「ビバ・ナチュラル」の販売に当たって,「ビバ・ナチュラル」が紹介された雑誌や新聞記事のコピー,宣伝用パンフレット,各販売先において小売に使用するためのポスターを多数作成して各販売先に配布しているが,これらはいずれも「ビバ・ナチュラル」の医薬品的効能効果について直接又は間接的に言及したものであること,被告人鈴木において昭和52年7月ごろ作成した「治験例集計紙A・B」は「ビバ・ナチュラル」の薬理作用を明示したものであるが,被告人らは,これをコピーして,自ら企画した海藻についての医学博士の講演の際参加者に「ビバ・ナチュラル」の試供品と共に配布したり,その販売に当たって右治験例集計紙を添付し,若しくはこれを示して口頭で内容を説明したりしていること,被告人らの本件販売先中,小向医院以外の販売先については,いずれも各販売担当者において本件「ビバ・ナチュラル」が肝臓,高血圧,便秘等に効果がある旨の薬効を口頭で告げており,小向医院への販売については,「ビバ・ナチュラル」を郵送販売するに際し,被告人鈴木が,「ビバ・ナチュラル」は高血圧,動脈硬化,肝臓疾患等に効果がある旨記載してあるポスター2枚を添付して送付したことが認められる旨説示しているところも,すべてこれを肯認することができる。

所論は,被告人らの右諸行為は,いずれも販売を目的とした医薬品的効能効果の言及ではないとし,これを肯定した原判決の認定判断を種々論難している。

たとえば,所論は,「治験例集計紙A・B」は学術資料として発表されたものであるから,これを薬品の効能書とみるのは事実誤認であると主張するが,仮に右書面が当初学術資料として発表されたものであったとしても,被告人らが「ビバ・ナチュラル」の薬理作用を明示したこれらの書面をコピーして,自ら企画した海藻についての医学博士の講演の際参加者に「ビバ・ナチュラル」の試供品と共に配布し,またその販売に当たって右書面を添付し,若しくはこれを示して口頭で内容を説明していることが認められる以上,原判決がこれを本件「ビバ・ナチュラル」販売の際の演述・宣伝の一方法として認定説示したのは当然である。その余の所論も,採用の限りではない。

以上要するに,原判決が,本件「ビバ・ナチュラル」は外観上医薬品らしい印象を人に与えるものであることを否定できないとしたうえ,被告人らがその販売に当たって医薬品的効能効果を演述・宣伝した旨認定し,これらを総合して判断すれば,本件「ビバ・ナチュラル」は,一般通常人の理解において,人の疾病の治療又は予防に使用される目的をもつと認識されることが十分に認められ,薬事法2条1項2号にいう「医薬品」にあたるとした判断は正当である。

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