東京高等裁判所 昭和59年(う)583号 判決
被告人 大谷正
〔抄 録〕
論旨を検討するに先立ち、職権を以て調査するに、原判決は、その理由中罪となるべき事実第三の道路交通法違反の事実を摘示するに際し、卒然として、被告人は「公安委員会の運転免許を受けないで、昭和五九年三月一日午後二時四六分ころ、普通乗用自動車(栃五六ね二一三七号)を運転したものである」と判示するのみであって、右犯罪の行われた場所を明示していないことが明らかである。然るところ、犯罪の場所は、通常は、有罪判決に示すべきものとされている「罪となるべき事実」そのものではなく、これを特定するための要素に過ぎないが(本件の場合、犯罪の日時及び使用車両が右程度に特定されている以上、「罪となるべき事実」の特定に欠けるところはない。)、本件のような運転違反に属する犯罪にあっては、被告人の所為が道路交通法所定の「運転」行為に該るというためにはその所為が同法所定の「道路において」なされたものであることを確定する必要があるから(同法二条一項一七号、同項一号参照。)、犯罪の場所を明示することは、「罪となるべき事実」の摘示に不可欠であるといわざるを得ない。従って、原判決は、原判示第三の事実理由の摘示に不備があるというべきであるが、右事実は原判示第一、第二の事実と併合罪の関係にあるものとして一個の刑が科されているので、原判決は結局全部破棄を免れない。
(草場 半谷 龍岡)