東京高等裁判所 昭和59年(う)863号 判決
被告人 永末隆晴
〔抄 録〕
なお、職権を以て調査してみると、原判決は、その法令の適用において、原判示第二の行為と原判示第三の行為とについて、一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるとして、刑法五四条一項前段、一〇条により一罪として重い原判示第二の罪の刑で処断するとしているのであるが、原審で取調べられた関係各証拠によれば、原判示第二の行為にかかる覚せい剤は、被告人方四畳半の間のベッドの脇におかれていたジャンパーの右ポケットに入っていたものであるのに対し、原判示第三の行為にかかるけん銃用実包五発及び散弾銃用実包四発は右四畳半の間の木製引戸脇におかれていた小型ビニール製バッグに入っていたものであって所持の態様もかなり異なっていること、また、右覚せい剤は昭和五九年一月一五日に被告人が新宿で購入取得したものであるのに対し、右実包九発は昭和五二年四、五月ころに被告人が磯貝波男から入手したものであって、所持するにいたった経緯も全く異なっていることが認められるのであり、これらの事実関係に照らせば構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとにおいてもこれを一個の所持とみる余地はなく、したがって、原判示第二の罪と原判示第三の罪とは観念的競合の関係に立つものではなく、両者は併合罪の関係に立つというべきであるから、原判決はこの点において法令の適用を誤ったものといわざるをえないが、右の法令適用の誤りは、最終的に処断刑の範囲に差異を及ぼしていないので、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りとはいえない。
(石丸 礒邊 日比)