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東京高等裁判所 昭和59年(て)36号 決定 1984年3月06日

石原鬨一

昭一七・二・一六生 無職

主文

本件は、逃亡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当する。

理由

石原鬨一は、アメリカ合衆国において不法領得にかかる自動車の国外運搬の罪を犯し、日本国内に逃亡した逃亡犯罪人であるとして、アメリカ合衆国から日本国に対し、日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約(以下単に条約という。)九条一項に基づき仮拘禁の要請があり、逃亡犯罪人引渡法(以下単に法という。)及び逃亡犯罪人引渡法による審査等の手続に関する規則所定の手続を経由して、昭和五八年一二月九日東京高等裁判所裁判官の発布した仮拘禁許可状により同五九年一月一一日仮拘禁され、現に東京拘置所において拘束中の者であるが、同年二月七日アメリカ合衆国から日本国に対し条約八条に基づいてその引渡し請求があり、同月八日東京高等検察庁検察官は法八条により当裁判所に対し審査請求をした。

そこで一件記録を調査して検討すると、本件引渡請求が条約及び法の定める手続に合致していることが認められ、当裁判所の審問の結果によれば、アメリカ合衆国から引渡しを求められている逃亡犯罪人石原鬨一が、現在東京拘置所に拘禁され、当裁判所の審問期日に出頭した石原鬨一と同一人物であることが明らかである。

そして、同人が、引渡し犯罪にかかる行為(その要旨は別紙のとおり。)を行つたことを疑うに足りる相当な理由があること、右行為が条約二条一項に規定する犯罪であり、アメリカ合衆国の法令により五年以下の拘禁刑もしくは五〇〇〇ドル以下の罰金又はその併科にあたる罪とされ、これが日本国において行われた場合日本国の法令により横領罪として五年以下の懲役に処すべき罪に該当すること、引渡犯罪にかかる裁判が、日本国の裁判所において行われた場合には、日本国の法令によつて刑罰を科し、これを執行することができるものであることが認められ、また、右同人は日本国民で法二条九号に該当するが、条約五条により日本国は、その裁量により同人をアメリカ合衆国に引き渡すことができることも明らかである。

その他、本件請求が、条約、法に規定する引渡しを制限する事由に該当する事由も認められない。

よつて、本件は逃亡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当すると認められるので、法一〇条一項三号により、主文のとおり決定する。

(裁判官 鬼塚賢太郎 苦田文一 中野保昭)

別紙

逃亡犯罪人は、昭和五四年六月一六日ころから昭和五六年八月二五日ころまでの間、一九回にわたり、かねてオコナーズ・バナー・カー・リーシング社ほかリース会社七社からリース契約に基づき借り受け保管中の右各リース会社所有にかかる自動車二一台を、ほしいままに、日本国所在トランス・ワールド社に売却した上、アメリカ合衆国カリフオルニア州ロスアンゼルス郡から日本国に運搬したものである。

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