大判例

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東京高等裁判所 昭和59年(ネ)1627号 判決

「抗弁3は、亡亀市の代理人である被控訴人が融資を受ける前提として、ひろい建設の借入金の担保として本件土地建物に抵当権等の担保を設定することを諒承したうえでその設定登記手続に必要な書類を金在九に交付し、同人が右書類を使用してひろい建設への所有権移転登記を経由したものである以上、民法九四条二項、一一〇条の法意に照らし、右登記に基づき本件土地建物がひろい建設の所有に属するものと過失なく信じてこれを担保に取った控訴人に対しては、被控訴人は、右登記が経由される原因となる行為をしたものとして、右登記が真実の権利に合致しないと主張することを許されないものとされるべきであるという趣旨と解される。しかしながら、右主張のように、不実登記につき民法九四条二項、一一〇条の基礎にあるいわゆる権利外観ないし禁反言の法理を援用することは、登記という権利の外観の存在に原因を与えた者としての責を問うことによって真実の権利者の主張を排し、登記を信頼して取引関係に入った第三者の保護をはかろうとするものであるから、右法理の援用が肯定されるためには、その結果として真実の権利者が失権(本件に則していえば、抵当権等の負担の引受)の不利益を被らされてもやむを得ないと認められるような、保護に値する事情が第三者について認められる場合でなければならない。ところが、本件は、前示認定のとおり、控訴人がひろい建設の所有権取得登記を信頼し、本件土地建物を担保に取って金員を貸与したのではなく、金員の貸与後たまたまひろい建設の所有名義とされた土地建物を担保に徴した事案であるから、ひろい建設の所有権取得が否定され、右物件による控訴人の債権回収が出来なくなっても、もともと本件土地建物を回収の引当てとはしないで金員を貸付けた控訴人にとって、不慮の損失というべきものは存しない。控訴人が右物件を担保に取ったことで安心して、債権回収のための他の有効な手段や機会を逸した等、不実登記を信頼したばかりに債権を実質的に放棄ないし喪失したことになるような特段の事情のある場合は格別としても、かかる特段の事情の存在については、本件においては何らの主張も立証もない(弁論の全趣旨に徴すれば、かかる特段の事情は存しないことが推認される。)。してみれば、本件においては、前記法理に則り、被控訴人の真実の権利主張を排してまで控訴人の利益を保護すべき事情は認められないものというべきであるから、抗弁3も所詮失当たるを免れない。

(横山 尾方 浅野)

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