東京高等裁判所 昭和59年(ネ)2135号 判決 1984年12月27日
控訴人 木村商事株式会社
右代表者代表取締役 香西九一
右訴訟代理人弁護士 中島皓
二瓶修
久保貢
荒井俊通
被控訴人 株式会社平和相互銀行
右代表者代表取締役 稲井田隆
右訴訟代理人弁護士 小林宏也
篠原煜夫
長谷川武弘
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
理由
当裁判所も、控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきものと判断するが、その理由については、原判決の理由中の説示と同じであるから、これを引用する。
控訴人において本件預託金返還請求権に対する転付命令が確定したことに基づき本訴請求が認容されるべきものとするのであれば、手形交換所規則の定めるところに従つて被控訴人に異議申立提供金が返還されうるよう、先ず不渡事故解消届を提出することを持出銀行に依頼すべきなのである。それをしても、被控訴人から手形振出人に対する反対債権をもつて相殺されるから手形債権の満足が受けられなくなるというのでは、ひつきよう、本訴請求の理由なきことを自認するに帰する。相殺の意表示があつてもその効力を争いうるとの見通しのもとに事故解消届を提出してもらつた場合に、結局相殺が認められて転付命令の実効を収めえない結果に終つたとしても、もともと右相殺が認められる実体関係にあつたのであればやむを得ないところであり、控訴人にとつて、事故解消届が提出されたことによつて失うところは何もない。事故解消届が提出されれば手形振出人が不渡処分を免れるが、不渡処分は、個々の手形債権者の利益を保護することを直接の目的とする制度ではないことに思いを致すべきである。
よつて、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却する
(裁判長裁判官 横山長 裁判官 尾方滋 浅野正樹)