東京高等裁判所 昭和59年(ネ)352号 判決
控訴人は、抗弁として、被控訴人の控訴人に対する本件通知は清算金がないとしているが、これは本件土地の客観的な取引価額と極端に相違するから、本件通知は無効である旨主張するので、別断する。
仮登記担保契約に関する法律二条一項に基づき債権者から債務者に通知すべき清算金の見積額は、必ずしも客観的に正当な清算額と一致している必要はないものと解すべきである。通知された清算金の見積額が客観的に正当な清算額と相違しているときは、債務者はこれを争い同時履行の抗弁権を行使し、客観的に正当な清算金の交付と引換に所有権移転の本登記に応ずれば足りるのであり(仮登記担保法三条二項参照)、通知された清算金の額(又は清算金がないと認めたこと)が不当であるからといって、直ちに清算金に関する通知が無効になると解することはできない。
本件において、裁判所の認定する本件土地の評価額は被控訴人の評価額よりも多く、本件通知のうち、本件土地の評価額は一〇二五万六四〇〇円であって清算金はないとする部分は誤りであり、被控訴人が控訴人に対して清算金四二八万三五七五円を支払う義務があることは後記のとおりであるが、その故に本件通知が無効となっって通知のない状態になると解することは、到底できない。
ところで、≪証拠≫によれば、控訴人は本件通知に示された清算期間内に債務の弁済をしなかったものと認められるから、被控訴人は、右清算期間の満了の日である昭和五六年四月一四日の経過により本件土地の所有権を取得したものというべきである。
(川添 新海 佐藤)