東京高等裁判所 昭和59年(ラ)188号 決定 1984年7月19日
抗告人 小林平吉
右法定代理人後見人 小林茂一
右代理人弁護士 鈴木俊
相手方 有限会社よもぎ商事
右代表者代表取締役 丸井久男
主文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
一 抗告人の抗告理由は、別紙(一)記載のとおりである。
二 そこで判断するに、本件記録によれば、相手方は中島淳一を債務者として昭和五〇年六月一七日、被担保債権の範囲を「証書貸付取引、手形貸付取引、手形割引取引による一切の債権、相手方が第三者から取得する手形・小切手上の債権」とする根抵当権の実行のために、請求債権を別紙(二)記載のとおりとして抗告人所有の不動産の競売を申し立て(新潟地方裁判所長岡支部昭和五〇年(ケ)第二四号)、同裁判所は同年六月一八日右申立てどおり不動産競売手続開始決定をしたこと、その後相手方は右請求債権の表示を別紙(三)のとおり変更する旨を申し立て、これに応じて右競売手続開始決定中の請求債権の表示を右申立のとおり更正する旨の原決定がされたことが認められる。
ところで、当初の競売手続開始決定における請求債権の表示である別紙(二)の記載は手形債権(手形保証による債権)そのもの、手形貸付による金銭消費貸借契約上の債権のいずれを請求債権とする趣旨かやや明確を欠き、右表示は別紙(三)のとおり記載すべきところを明らかな誤謬により右のように表示したものといいうるかどうかは問題なしとしない。したがつて、原決定におけるような請求債権の表示の変更を本来の意味での更正決定として行いうるかどうかには疑問があるが、原決定は、これを実質的にみれば、一個の根抵当権に基づく競売手続の途中で請求債権の表示を変更するものにほかならず、その結果として請求債権の同一性が維持されると否とにかかわらず、かかる性質の裁判として原決定はなお適法たるを失わないものというべきである。
三 よつて、原決定は相当であつて、本件抗告は理由がないからこれを棄却する
(裁判長裁判官 鈴木重信 裁判官 加茂紀久男 梶村太市)
<以下省略>