大判例

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東京高等裁判所 昭和59年(ラ)39号 決定

本件記録によれば、抗告人は、原告として東京地方裁判所に対し相手方を被告として詐欺に基づく損害賠償金九〇万円の支払を求めて本訴を提起したことが認められる。そうすると、本訴は、その訴額が九〇万円であって九〇万円を超えないから、裁判所法二五条、三三条一項一号の規定(昭和五七年法律第八二号による改正後のもの)により簡易裁判所の管轄に属し地方裁判所の管轄に属しないものというべきところ、本件記録によれば、相手方の住所は千葉県流山市であることが認められるから、本訴は、流山市を管轄区域とする松戸簡易裁判所の管轄に属するものというべきであり、また、本訴は、金銭債権の支払を求めるものであり、特段の事情が認められないので、民法四八四条後段によりいわゆる持参債務として抗告人の住所がその履行地と解され、本件記録によれば、抗告人の住所は東京都江戸川区であることが認められるから、本訴は、東京都江戸川区を管轄区域とする江戸川簡易裁判所の管轄にも属するものということができる。

そうすると、江戸川簡易裁判所をその管轄区域とする原裁判所は、民事訴訟法三〇条二項により相当と認めたときは本訴について自ら審理裁判をすることができたのであり、また、同法二六条により原裁判所に応訴管轄を生じる余地もあり、更に、同法三一条の三の規定も存するのであるから、原裁判所としては、移送について相手方の意見を聞くとか、一応口頭弁論期日を開き相手方の応訴態度を見るとかしたのちに移送するかどうかを決定するのが相当であったというべきである。

ところで、本件記録によれば、本件訴状は昭和五八年一一月二八日東京地方裁判所に受付けられたこと、原裁判所は、同年一二月八日抗告人に対し本訴の移送等についての意見を求めるための事務連絡をしたが、抗告人から何らの回答がなかったので、移送について相手方の意見を聞くことなく、また、一応口頭弁論期日を指定して相手方の応訴態度を見ることもなく、昭和五九年一月一一日本訴を松戸簡易裁判所に移送する旨の原決定をしたこと、原決定正本はその後昭和五九年一月三〇日に抗告人に送達されたこと、抗告人は、右送達前原裁判所に対し同年一月一七日受付及び同月一九日受付の各書面をもつて本訴を原裁判所において審理裁判することを求める旨の意見を述べ、前記抗告の理由(三)、(四)記載と同様の理由を挙げたことが認められる。

以上の事実によれば、原裁判所が原決定をしたことが適切な措置であったかどうかの点については疑問の余地があるが、しかし、抗告人が抗告理由として主張している事実をすべて参酌しても、なお原決定に取消すに足りる違法があるとまではいうことができない。

(川添 新海 佐藤)

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