大判例

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東京高等裁判所 昭和59年(ラ)457号 決定

【主文】

本件抗告を却下する。

【判旨】

本件抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりである。

家事審判法一四条は、家事審判に対しては最高裁判所の定めるところにより即時抗告のみをすることができる旨規定し、これを受けた家事審判規則は、同審判に対し即時抗告をすることができる場合をそれぞれ個別的に明文をもつて規定しているのである。

ところで、同法及び同規則には、不在者の財産管理人選任の取消申立に対する却下の審判に対して即時抗告をすることができる旨の規定がない。したがつて、原審判に対しては即時抗告をすることができないものといわなければならない。

してみれば、本件抗告は不適法であり、却下を免れない。

よつて、主文のとおり決定する。

(宍戸清七 安部剛 笹村將文)

抗告の趣旨

原審判を取り消す。

との裁判を求める。

抗告の理由

一 原審判は抗告人の申立を却下したが、その理由とするところは、同裁判所が不在者趙碧の財産管理人として山本忠義を選任した審判が昭和五〇年(家ロ)第八五号不在者の財産管理に関する処分取消申立事件についての昭和五九年九月七日の同裁判所の審判(以下、八五号事件という)により、不在者趙碧本人が自ら財産を管理することができるようになつたことを理由として取消されたのであるから抗告人の申立の利益がないというにある。

たしかに、東京家庭裁判所は、昭和五九年九月七日、不在者趙碧財産管理人山本忠義の選任を取消す旨の審判をし(八五号事件)、その理由として、現在北京市に在住する申立人趙碧が、右財産の所有者本人であることが認定できるとしている。

二 然し、右八五号事件審判は明白に誤つた審判である。

すなわち、趙欣伯の妻である趙碧は既に、一九四七年三月一五日北京の冀東地方法院検察処で病死しており、また、趙欣伯も同審判書理由中にあるように、北京監獄で囚われ中に一旦保釈されたのでなく、一九四六年に刑死したのであることは当時の「大公報」や「長春日報」の記事で明白である。

また、真の趙碧は日本語がとても上手であると板垣大将未亡人が証言しているにもかかわらず東京家庭裁判所の同審判の申立人である「趙碧」は日本語を片言しかしやべることができないこと、元財産管理人故鈴木弥之助および辻内富士雄も同人が替玉であると指摘していること、さらに、申立人「趙碧」の写真と、趙欣伯一家の写真とを比較しただけでも一見別人であると明らかに認められること等を考え併せると同審判の申立人である「趙碧」は真の趙碧の替玉であることは明白である。

同審判は、申立人である「趙碧」が左利きであつたとか、すでに報道されたことのある貴金属宝石類の指摘が真実に近いなどを理由にあげているがこれらの事実は右申立人と真の趙碧との同一性をうらづける資料とは到底なりえないものである。

趙国忠が趙欣伯、趙碧の唯一人の子であることは、台湾高等法院の公開の法廷における審理によつて明らかにされているところである。

なお、前記審判は真の趙碧と申立人の同一性を認定するについてのほとんど唯一の証拠というべきものを、同裁判所書記官が板垣喜久子に電話連絡をした際に同人から趙碧と称する女性から「話の内容及び顔の輪郭が若い頃の不在者趙碧と同じである」と聞いた旨の報告書に求めている(同審判書理由第二項2)。

しかし、このように同審判における最も重要な事実について書記官が単に電話連絡の際に聞いたという言葉から認定するというのは、採証法則からみても極めて不合理というべきである。

よつて、右八五号審判の誤りは明白であり、かかる誤つた審判にもとづいてなされた本一五号審判も誤りである。

三 然るに、東京家庭裁判所は、趙国忠の申立(一五号事件)に対してはまつたく耳をかさず、審尋その他の手続をもとることなく非公開で今回の決定をし、趙国忠の申立に対しては、「すでに財産管理人の任務を解いたので申立の利益はない」との理由でこれを却下した。しかし、これは裁判の名に値しないものである。

八五号事件は趙碧の在日財産の数ある自称相続人ないし趙碧本人を名のる者のうちの一人に関するものであり、趙碧の相続人であることを主張する複数の者から出されていた同一の申立があるにも関わらず、そのうちの一名の者のみについて審尋・審判を行い、その余の者についてはなんらの手続もおこなわないでおきながら一の事件についてのみ結論を一方的に出した後で、その審判が出たことを理由として他の申立を却下するというものであつて、極めて不公平な審判手続であるといわざるを得ない。かかる著しく違法な原審判は取消されるべきは当然である。

四 家事審判法および家事審判規則によれば、原審判に対する抗告を規定する該当条文が見当らず、従つて、本件抗告が許されないがごとくであるが、それは法の不備というべきである。本件審判は、単に、不在者財産管理人を解任する効果を発生するのみであつて、その理由中の判断は、その財産の帰属を最終的に決定するものではないといえようが、右申立人がこの審判によつて右財産の処分をするおそれがあるので、これを取消す必要性があるのである。

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