大判例

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東京高等裁判所 昭和59年(ラ)472号 決定

【主文】

本件抗告を却下する。

【判旨】

本件抗告の趣旨及び抗告の理由は別紙記載のとおりであり、これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。

本件記録によると、東京地方裁判所八王子支部昭和五八年(ワ)第一一二五号地位確認等請求事件につき、同支部は、昭和五九年九月二一日の第七回口頭弁論期日において「本件を東京地方裁判所へ回付する。」旨の措置をとつたことが認められるところ、同支部においては、本件訴訟が地方裁判所及び家庭裁判所支部設置規則(以下「支部設置規則」という。)一条二項にいう「行政事件訴訟」に該当するので本庁で審理すべきであるとの見解のもとに事件回付の措置をとつたものと解せられる。

ところで、憲法七七条一項、裁判所法三一条一項によると、最高裁判所は、司法事務処理に関する事項について規則制定権を有し、地方裁判所の事務の一部を取り扱わせるため、その地方裁判所の管轄区域内に地方裁判所の支部又は出張所を設けることができるとされており、これに基づき最高裁判所は、支部設置規則を制定し、その一条一項で地方裁判所の支部の名称、権限、管轄区域を定め、同条二項で支部においては上訴事件及び行政事件は処理しない旨定めた。地方裁判所の支部は、右のとおり地方裁判所の事務の一部を取り扱うものであつて、訴訟法上は本庁と支部とは一体をなすものであり、支部設置規則一条一項及び二項の規定とも訴訟法上の管轄について定めたものではなく、裁判所内部の事務分配の基準を定めたにすぎないものと解すべきである。したがつて、地方裁判所の本庁と支部間あるいは支部相互間の事件の回付は、訴訟法上の手続ではないから、回付の措置に対しては、当事者は、訴訟法に準拠する不服申立はできないものといわなければならない(最高裁判所昭和四四年三月二五日第三小法廷決定・刑集二三巻三号二一二頁参照)。

よつて、本件訴訟が行政事件に該当するか否か、また、被告小金井市が本件訴訟につき弁論をなし応訴しているか否かを論ずるまでもなく本件抗告は不適法であるからこれを却下することとし、主文のとおり決定する。

(磯部喬 大塚一郎 佐藤康)

抗告の趣旨

東京地方裁判所八王子支部が昭和五九年九月二一日、同庁昭和五八年(ワ)第一一二五号地位確認等請求事件についてなした回付決定は、これを取消す。

との決定を求める。

抗告の理由

一、東京地方裁判所八王子支部昭和五八年(ワ)第一一二五号事件(以下「本件訴訟事件」という。)は昭和五八年八月二六日に同庁に適法に受理され、同年一〇月一九日に第一回口頭弁論が開かれて以来、七回の口頭弁論が既に開かれている。

しかしながら原裁判所は昭和五九年九月二一日に抗告の趣旨記載のような決定をなしたものであるが原決定は以下に述べる理由により違法である。

なお裁判所の各部(支部を含む)が係属した事件を同一裁判所内の他の部に回付することは訴訟法上の受訴裁判所の変更として、裁判(決定)をもつてなすべきであり、右回付の決定に対しては抗告することができることは判例上も明らかである。(東京高等裁判所昭和四二年(ラ)第三六四号、第三六五号、同年七月一四日第九民事部決定―別添のとおり)

二、原決定の理由とするところは、本件訴訟事件が公法上の権利又は法律関係であるので、地方裁判所支部設置規則(以下単に「規則」という。)第一条二項に該当するというものである。

しかし申立人の請求が規則第一条二項に該当するものではないことは本抗告状添付の昭和五九年九月二一日付準備書面において申立人が主張するとおりである。

三、さらに原決定は規則第一条二項の解釈をも誤つている違法なものである。

本件訴訟事件は八王子支部に提起され被告もためらうことなく応訴し、七回の口頭弁論が開かれた間、当事者双方から回付を求めたことは一度もなかつた。

地方裁判所の支部は本庁と一体をなして一つの管轄裁判所を構成するものである。規則第一条二項は裁判所の事務分配の定めにすぎず、支部に係属した事件を本庁に移すことは民事訴訟法上のいわゆる事件の移送には該らない。

しかし土地管轄の定めにおいて配慮される当事者の訴訟追行上の利益、殊に原被告が期日に出頭するための労力・費用の節約、立証の便宜については支部と本庁の間の事務分配に当つても当然考慮されねばならない。なぜならば広義の裁判所として制度上一体であつたとしても支部と本庁との間の距離は広義の裁判所双互間と同等又はそれ以上に隔たつている場合が多いからである。

故に、仮りに前記訴訟事件が規則第一条二項の適用を受けるとしても、応訴管轄(民事訴訟法第二六条)の準用により被告の応訴の時点で八王子支部において審理すべきことが確定しもはや本庁に回付することができなくなつたものと言うべきである。(同旨「鈴木忠一「実務民事訴訟講座一」四四頁)

したがつて原決定に合理性がないことは明らかであり、申立人はその取消を求める。

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