東京高等裁判所 昭和59年(行ケ)148号 判決
事実及び理由
一 請求の原因一ないし三の事実は当事者間に争いがない。
二 そこで、原告ら主張の審決取消事由について検討する。
1 原告ら主張の審決取消事由1の点について
(一) まず、本件考案について検討する。
(1) 成立に争いのない甲第二号証(本件考案の実用新案公報)によると、本件考案は、レストラン、ホテル、喫茶店などで使用される遊ぎ装置を組み込んだテーブルに係るものであり(明細書1欄一五―一七行)、右遊ぎの内容については、実用新案登録請求の範囲の上で特段の限定はないが、考案の詳細な説明の項及び図面には、対戦者二人がそれぞれランプ点灯用操作ボタン(6、6)を押しかわすことによつて、表示板5に設置されたそれぞれ三個の弾丸及び矢を表示するランプ(12、13)を順次点灯させ、どちらかのキールランプ(14、15)が点灯するまで相争うものが実施例として示されていることが認められる(明細書2欄六行―一七行、図面第一、第三図)。
(2) 次に、本件考案における天板と表示板との関係についてみるに、当事者間に争いのない実用新案登録請求の範囲の記載によると、右請求の範囲には、この点については、「天板1に遊ぎ装置の表示板5を天板1と同一平面となるように設け」とのみ規定されており、前掲甲第二号証によると、考案の詳細な説明の項には、一本案遊ぎ装置付きテーブルは、天板に遊ぎの表示板を天板と同一平面となるように設け」(1欄二五―二六行)、「5は平板1と同一平面になるように設けた遊ぎ装置の表示板」(同欄三七―三八行)と記載されているにとどまるが、これらの記載と図面(第一、第三図)とを併せ考えると、具体的には、天板1に穿設した孔にこれとは別体の表示板5を間隙のないように嵌込み、両者が同一平面となつて、テーブルの表面を構成する構造のものと解するのが相当である。
なお、被告らは、本件考案の表示板は、文字、絵柄、模様、図形などの形態を映像として上方から透視できるものであると主張し、前掲甲第二号証によると、本件考案の実施例としては、ライフルマン、インデアンの絵柄の描かれたものが示されているが、前述のとおり、実用新案登録請求の範囲の記載からすれば、本件考案の表示板を被告らの主張するようなものに限定することはできない。
(二) 次に、上述の点に関連して引用例のものを検討する。
(1) 成立に争いのない甲第三号証によると、引用例に記載の発明は、ゲーム装置を備えたテーブルに係るものであり、その実施態様として記載された遊ぎの内容は、二人の競技者がテーブルの上板55の下面に設けられた各自の押ボタン30をできるだけ短時間内に迅速に押すことにより、テーブルの中央ランプ28から直線上二方向(外方向)に向けてそれぞれ三個並んだランプ(50a、50a′、51及び50b、51′など)を勝者側に点灯させ、どちらかのランプの点灯が最も外側のランプ(51又は51′)に至るまで相争うものが記載されていることが認められる。
(2) そこで、右引用例におけるランプの表示機構がテーブル板とどのような関係で設置されているかについて検討するに、前掲甲第三号証によると、引用例には、前記上板55に複数個の窓が設けられ、それぞれの窓の下方には、前記ランプが設けられ、競技者はこの窓を通過する光によつてどのランプが点灯しているかを知ることができる旨が記載されていることが認められる。そして、右甲号証によれば、引用例には、右窓が、どのような構造を有し、前記上板にどのように設置されているかについて具体的には記載されていないが、「板は、ゲーム装置にもかかわらず板のテーブルとしての使用を少しも害しないという利点をもつている。」(訳文一一頁一二行―一四行)との記載があることが認められる。これらのことからすれば、右窓は、上板にただ単に穴が穿たれたままのものではなく、テーブルとして使用するのに支障がないよう、例えば水などがテーブル下に洩れないようにするため、ランプの光を透過する材料によつて上面が同一平面になるよう閉塞されていると解すべきは当然である。なお、このことは前記のフラツシユランプ28についても同様であつて、これが上板上に突出していると認めるべき根拠は全くない。
(三) 以上(一)及び(二)に記載の事実関係を前提として本件考案と引用例に記載のものとを対比するに、本件考案の実施例として示された遊ぎ内容と引用例のそれとは同旨のものであり、また、本件考案の天板が引用例における上板に相当するものであることは明らかである。そして、両者の遊技内容が同旨のものであることからすれば、引用例のものにおけるランプ(28、50a、50a′、51、50b、51′など)は、本件考案におけるランプ(16、12、13、14、15など)に対応し、遊ぎ装置としての表示機能という観点から見ると、引用例のものにおける前記各ランプが存在する窓の周辺部は、全体として本件考案における前記各ランプを備えた表示板に相当し、ただ、本件考案は、右表示板が上板と別体であるのに対し、引用例のものは、個々の窓が上板と別部材で構成され、これら各窓を一体的に遊ぎ内容の表示部としてとらえた場合には、上板と一体をなしている点で両者相違するものである。
しかし、引用例のもののように表示部が上板と一体的に構成されて遊ぎ内容の表示機能を果すものについて、その表示機能を果す部分を上板と別体に構成した上これを基体である上板に同一平面となるよう嵌込むことは、少くとも当業者にとつては引用例に開示されたところから極めて容易に想到できる程度のものと解すべきである。このことは、本件考案の明細書に右の点についての着想の困難性及び別体としたことによる特段の効果についての記載が見当らないことに照らしても明らかである。
そうすると、引用例には、本件考案にいう天板に遊ぎ装置の表示板を天板と同一平面になるように設けることは全く示唆されておらず、本件考案が引用例のものから極めて容易に想到できるとはいえないとした審決の判断は誤りである。
2 原告らの審決取消事由2の主張について
前掲甲第二号証によると、本件考案の作用効果として、審決が前掲理由の要点4に認定したとおりの記載があることが認められる。
しかしながら、前記1に詳述したところから明らかなとおり、引用例のものもその構成に照らしてこれと同様の効果を奏するものというべきである。
したがつて、右の作用効果は、本件考案に特有のものということはできず、審決のこの点に関する認定判断も誤つている。
3 以上のとおりであるから、原告らの審決取消事由は理由があり、審決は違法として取消を免れない。
三 よつて、原告らの本訴請求を認容する。
〔編註その一〕本願考案の要旨(実用新案登録請求の範囲)は左のとおりである。
天板1に遊ぎ装置の表示板5を天板1と同一平面となるように設け、その天板1と支持脚4との間に遊ぎ装置の収納箱2を設け、かつ該収納箱2内に遊ぎ装置の制御装置18を設け、この制御装置18を平板1に設けたコイン投入口7に接続する収納箱2内のコイン検出機構により働かせるようにし、コインをロツク装置つきの金箱25へ集荷するように構成してなる遊ぎ装置つきテーブル。(別紙(一)図面参照)
〔編註その二〕本件に関する図面は左のとおりである。
別紙(一)
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