東京高等裁判所 昭和59年(行ケ)197号 判決
事実及び理由
一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本件考案の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。
1 (本件考案の技術的課題、構成及び効果)
成立に争いのない甲第二号証(本件公報)によると、本件公報の考案の詳細な説明の項に、本件考案の技術的課題、構成及び効果に関し以下のとおりの記載があることが認められる。
「この考案はズボンのポケツト用袋の改良に関し目的とするところはポケツト用袋の耐久性を向上させると共に装飾効果を良好とし更にポケツト用袋の縫製作業能率を向上させることにある。
普通、ポケツト用袋は、二枚のポケツト用袋片を合わせ上方に開口部を残して周縁を縫着しこれを裏返して更に周縁を縫着した構成であるが、裏返えして縫着する作業は能率的に悪いと共に、ポケツト用袋の周縁部は擦り切れによつて早期に破れる欠陥がある。
本考案のポケツト用袋を図において説明すると底部コーナー部1、1′を丸形裁断した二枚のポケツト用袋片2、2′が重合され、其の上方縁部3を残して周縁部4が、両側縁を中心に向けて折返えして折返えし縁5、5′を形成したテープ6の折返えし縁5、5′間に挟まれて縫着7され、且つ該テープの内側に沿つて補助的に縫着7′されて成るズボンのポケツト用袋の構成を要旨としている。
上述の如く底部コーナー部を丸形裁断した二枚のポケツト用袋片を重合して其の周縁部をテープの折返えし縁間に挟んで縫着したから、縫着されたテープはポケツト用袋片の形状に沿つて皺が形成されることなく美麗な縁取りが為し得、ズボンの履脱時に露見されるポケツト用袋の体裁が良くなり又、擦り切れの著しい周縁部が補強される効果がある。
更に上記構成したポケツト用袋の縫製は、同一平面を縫着することによつて出来るから従来の如き袋の裏返えし作業を必要とせず能率的に行うことが出来又、テープ縫着線と平行して其の内側に補助的な縫着が施されているからポケツト用袋内へ蔵納される品物の重み、嵩張りによつて生ずる生地引張力に前記縫着部が抵抗してテープ縫着部の負担を軽減しポケツト用袋の物品収容耐久力を向上する効果がある。」
2 (第一引用例記載のものの目的及び構成)
成立に争いのない甲第三号証(第一引用例)によると、
第一引用例記載のものは、ズボン用ポケツトに関するものであつて、ポケツト布地周縁部のテープを提供すること、擦り切れ摩耗に晒されているポケツト布地の周縁部の一部をテープで整えるとともに、仕立て屋が作るように丈夫で、かつ、機械で作るポケツトのように安価で簡単に形成できる縫着線を提供することを発明の目的としたこと(第一引用例第一頁第一ないし第一六行)、
第一引用例(本判決別紙図面(2)第1ないし第3図参照)には、ズボンのポケツト用袋において、一枚のポケツト布地12は縦方向に二つに折り返され、
(ア) ポケツト布地12のうち上側布地(原告が付した符号によれば本判決別紙図面(4)12b)の一方の側端部は、ポケツト開口部でズボン布地5の前身頃に縫い合わされるとともに、他方の側端部は、一方の側端部がズボン布地5の後身頃に縫着された小幅布地8の他方の側端部にそろえられ、ポケツト布地12の前記他方の側端部に縦方向に続く底部コーナー部は、その底部コーナー部を丸形裁断された小幅布地8と同様に丸形裁断されてそろえられており、また、底端部では二つに折り返されたポケツト布地12同士がそろえられており、そして、ポケツト布地12の前記他方の側端部、それに縦方向に続く丸形裁断された底部コーナー部及び底端部から成る周縁部は、その両側縁を中心に向けてそれぞれ折り返して折り返し縁を形成したテープ15の折返し縁間に挟まれて、いわゆるバウンド・シーム縫法により縫着されており(なお、テープ15が縫着しているポケツト布地12の前記他方の側端部は、ポケツトの端部13を越えて、ズボン布地5の後身頃の裏側に伸びており、ポケツト開口部に、ズボン布地5のうち後身頃の折返し部6と小幅布地8の端部が存するため、これらの部分を隠すために布地片17が供されている。この布地片17は、ポケツトの開口部の一端(後身頃の端部)に沿う縫目7によつて、その一端18が後身頃の折返し部6の反対側に折り返されて縫い着けられており、布地片17の反対側の他端は、ポケツト布地12の重ね合わせ部の内側に伸びてポケツト布地12に縫糸19によつて縫い着けられている。)
(イ) 縦方向に二つに折り返されたポケツト布地12の下側布地(原告が付した符号によれば本判決別紙図面(4)の12a)の一方の側端部13はポケツト開口部で小幅布片10とそろえられて折返し部を形成し、ズボン布地5の前身頃の折返し部9に重ねられて通し糸11によつて縫い合わされ、また、右小幅布片10はポケツト布地12との重ね合わせ部を形成しながらポケツトの内側に伸び、右小幅布片10の端部は縫い目14によつてポケツト布地12に縫い着けられている
構成(第一引用例第一頁第四〇行ないし第二頁第三八行)が開示されていること、
つまり、第一引用例記載のものにおけるポケツト用袋片の縫着の態様に限局してみれば、一枚のポケツト布地12は縦方向に二つに折り返され、上側布地12bと下側布地12aとは、その上下端縁(上方縁部と底端部)がそろえられて重ね合わされており、また、ポケツト布地12の上側布地の右側端部は、小幅布地8の右側端部とそろえて重ね合わされるとともに、ポケツト布地12の上側布地と小幅布地8とは、その底部コーナー部がそろえられて重ね合わされているのであり、以上のそろえて重ね合わされた右側端部、右底部コーナー部及び底端部は、いわゆるバウンド・シーム縫法によつて縫着されているものであること
が認められる。
3 (第二引用例記載のものの構成)
成立に争いのない甲第五号証(第二引用例)によると、第二引用例(別紙図面(3)第2図、第3図参照)には、ズボンのポケツト用袋において、底端部を半円形状に、つまり、底端部を左右対称の丸形状に裁断した二枚のポケツト布地1、2が重ね合わされ、これの両側端部及び底端部から成る周縁部が、長さ方向に一回折り曲げられた小布片8の両縁間に挟まれて、外側の縫目4によつて縫着され、かつ、テープを縫着した縫着線の内側にこれと平行して、内側の縫目3によつてポケツト布地を縫着した構成が開示されていることが認められる。
4 (相違点の看過について)
(1) 原告は、第一引用例は、本件考案における、底部コーナー部に丸形の周縁を設けた二枚のポケツト用袋片が重合され、その周縁部の三方を同一平面上で縫い着けるという本件考案の構成を開示していないと主張する。
なるほど、前判示の本件考案の要旨及び前記1、2で判示したところによると、本件考案と第一引用例記載のものとの間には、審決が認定した以外に、一応次のような相違点が存することが認められる。
<1> 本件考案は、二枚のポケツト用袋片が重合されたものであるのに対し、第一引用例記載のものは、一枚のポケツト布地12を折り返して重ね合わせるとともに、折り目線の反対側において、下側布地よりも延出した上側布地に小幅布地8が重合している点。
<2> 本件考案は、底部コーナー部が両方とも丸形裁断されているのに対し、第一引用例記載のものは、一方の底部コーナー部(ポケツト布地12の上側布地と小幅布地8が重合された底部コーナー部)だけが丸形裁断されている点。
<3> ポケツト用袋片のテープ縫着部分が、本件考案では、上方縁部を残した周縁部であるのに対し、第一引用例記載のものでは、上方縁部、折返し部を残した周縁部(すなわち、折り目線反対側の側端部、丸形裁断された底部コーナー部及び底端部)である点。
(2) そこで、<1>の相違点についてみると、本件考案のポケツト用袋において二枚のポケツト用袋片が重合された構成を具備するとの点(ポケツト用袋において、二枚のポケツト用袋片が重合された構成を持つものは、従来から一般に広く知られているものであり、第二引用例記載のものに係るポケツト用袋も、二枚のポケツト用袋片を重合させたものであつて、もともと新規なものでない。)は、それ自体当業者が実施上適宜なし得る事項であると考えられ、本件公報の前記記載に照らしても、特有の効果に結びつくものではなく、この点において格別の技術的意義を有するものではないということができる。
(3) <2>の相違点についてみるに、第一引用例記載のものは、一方の底部コーナー部を丸形裁断したポケツト用袋片についての構成を具備しており、また、第二引用例には、底端部を円形状に、換言すれば、ポケツト用袋片の底端部を左右対称の丸形状に裁断したポケツト用袋片が示されているから、ポケツト用袋片において、その底部コーナー部について左右とも丸形裁断することもまた、当業者が実施上適宜なし得る程度のことにすぎないというべきである。
(4) 相違点<3>についてみると、ポケツト用袋片の周縁部を縫着することの意義は、ポケツト用袋を形成するために重ね合わされたポケツト用袋片の周縁部の離隔を防止する点にあるものというべきである。そして、第一引用例記載のものにおいて、ポケツト布地12の折返し部をテープ縫着しなかつたのは、折返し部では、布地が連続していて端縁部がないから離隔は起こり得ず、特に縫着を必要としなかつたからである。これに対し、二枚のポケツト用袋片を重合した場合においては、上端縁を残した周縁部が縫着されなければ、ポケツト用袋が構成され得ないから、ポケツト用袋を構成するために、ポケツト用袋片の上方縁部を残した周縁部を縫着することは、当然に実施されるべき自明の事項であるといえる。
したがつて、二枚のポケツト用袋片を重合した本件考案において、上方縁部を残した周縁部をテープ縫着したことは、二枚のポケツト用袋片を用いたことによつて、当然実施されなければならない自明の事項にすぎないというべきである。
(5) 以上みたところによると、右各相違点は、技術的にみるといずれも些細な事項であつて、当業者が実施上適宜なし得る程度のことないし当然なされるべき自明のことにすぎないといえるから、審決がこのような形式上の相違点について説示していないことをもつてして、審決を取り消すべきものとすることはできない。
5 (作用効果について)
(1) 原告は、本件考案では、十分な大きさの半径の丸形の周縁を設けたポケツト用袋片二枚を同一平面で縫い着けるという構成と二枚のポケツト用袋片の周縁部をテープが周回して縫い着けるという構成とがあいまつて、縫着作業中にポケツト用袋片のずれ動き(滑り動き)の余裕を与えるので、ポケツト用袋片の間に滑りが生じても、ポケツト用袋片が平面の状態を維持しながら移動し、そのためにしわが生じないという効果を奏する旨主張する(取消事由の項2)。
しかし、前記1の本件公報の記載によると、本件考案の明細書に、縫着作業の進行中、ポケツト用袋片自体にしわが生じないという効果についての記載がないことが明らかであるから、原告の右主張は採用し得ない。
なお、右効果が、原告主張のように、ポケツト用袋片が二枚であることに基づくものであるとするならば、これは、従来からある二枚重ねの袋片から成るポケツト用袋の持つ効果と変わるものではないし、また、第二引用例記載のもののポケツト用袋においても、当然に奏する効果にすぎないというべきである。
(2) 原告は、本件考案では、ポケツト用袋片の二枚の各左右下隅が共に丸形裁断されて角張つておらず、左、右、底の三方の各周縁部がテープに覆われて、美麗な縁取りが形成され、また、擦り切れの生じやすい周縁部が補強され擦り切れを予防する効果があると主張する(取消事由の項3)。
まず、前記1の本件公報の記載によると、本件考案の明細書には、ポケツト用袋片の二枚の各左右下隅が共に丸形裁断されて角張つておらず、しかも左、右、底の三方の各周縁部がテープに覆われているので、ポケツト全体において、美麗な縁取りが形成されるとの点についての記載がないことが明らかであるから、原告の右主張は採用し得ない。
もつとも、前記1のとおり本件公報の考案の詳細な説明の項には、「底部コーナー部を丸形裁断した二枚のポケツト用袋片を重合して其の周縁部をテープの折返えし縁間に挟んで縫着したから、縫着されたテープはポケツト用袋片の形状に沿つて皺が形成されることなく美麗な縁取りが為し得、ズボンの履脱時に露見されるポケツト用袋の体裁が良くなり」(第二欄第八ないし第一四行)という記載があり、右記載に「美麗な縁取りが為し得」とあるのは、テープにしわが形成されないことに基づくものであつて、更にいえば、底部コーナー部を丸形裁断し、ポケツト用袋片の周縁部にバウンド・シーム縫法によつてテープを縫着したために奏される効果であることが明らかである(右効果は、単にポケツト用袋片の左、右、底の三方の各周縁部がテープで覆われていることによるものではない。)。しかし、第一引用例記載のものにあつても、一方の側端部、丸形裁断した底部コーナー部及び底端部において、バウンド・シーム縫法によりテープが縫着されているのであるから、縫着されたテープには、しわが形成されず、美麗な縁取りがなされ得るという効果が奏されることが自明であつて、右記載に係る効果が本件考案にとつて格別のものということはできない。
次に、前記1のとおり本件公報の考案の詳細な説明の項に、「底部コーナー部を丸形裁断した二枚のポケツト用袋片を重合して其の周縁部をテープの折返えし縁間に挟んで縫着したから、(中略)擦り切れの著しい周縁部が補強される効果がある。」(第二欄第八ないし第一五行)との記載がある。この記載に係る効果は、ポケツト用袋片の周縁部にバウンド・シーム縫法によりテープを縫着した構成から生じるものと解されるが、バウンド・シーム縫法を採用するのは、もともと、布地周縁部の補強及び装飾を目的とするためであることは、自明のことであり、第一引用例記載のものにおいても、ポケツト用袋片の一方の側端部及び上方縁部を除いた周縁部に、バウンド・シーム縫法によりテープを縫着する構成を採用したことによつて、バウンド・シーム縫法によつた部分では、当然に右効果を奏するものということができる。右効果は、擦り切れの著しい周縁部に、バウンド・シーム縫法による縫着をすることによつて生じる自明のものにすぎない。
(3) 原告は、本件考案では、二枚のポケツト用袋片を重ね合わせ、右上隅から右下隅の丸形縁(底部コーナー部1)、下端縁、左下隅の丸形縁(底部コーナー部1)、左上隅に至るまでの周縁部を、この順序に従つて同一平面上で縫い着けるので、一工程で仕上がつて縫着作業が容易であり、袋の裏返し作業等を必要としないなどの効果を奏すると主張する(取消事由の項4)。
しかし、本件考案は、ズボンのポケツト用袋に関するものであるから、原告が主張する、右のポケツト用袋の縫製についての効果は、本件考案の直接の効果とはなり得ない。しかも、原告主張の右効果は、第二引用例記載のもののポケツト用袋の縫製においても、同様なものとして奏し得ることが明白であつて、本件考案にとつて格別のものということはできない。
(4) 原告は、本件考案では、ポケツト用袋片の周縁部が一枚のテープで覆われているので、第一引用例記載のものよりも外観がすつきりしていて、装飾効果が優れて著明であり、かつ、均一であるという効果を奏すると主張する(取消事由の項5)。
しかし、右の点は、技術的な意義を持つものではなく、自然法則を利用した技術的思想の創作に基づく効果に、単に付随して招来したものにすぎないから、考案の効果とは到底いえない。原告の右主張は採用し得ない。
(5) 原告は、前記1のとおり本件公報の考案の詳細な説明に記載の、「ポケツト用袋内へ蔵納される品物の重み、嵩張りによつて生ずる生地引張力に前記縫着部が抵抗してテープ縫着部の負担を軽減しポケツト用袋の物品収容耐久力を向上する効果」(第二欄第二〇ないし第二四行)は、本件考案に格別のものである旨主張する(取消事由の項6)。
右効果は、テープ縫着線と平行してその内側に補助的な縫着が施されているという構成に基づくものであるが、第二引用例記載のものにおけるポケツト用袋にあつても、外側の縫目4と平行してその内側に補助的な内側の縫目3が施されているという構成を有している。そして、第二引用例記載のもののポケツト用袋片の周縁部に縫着されたテープは、バウンド・シーム縫法によつて縫着されたものではないが、このテープ縫法の相違が、内側の縫着に基づく機能に影響を与えるものと考えることはできないから、第二引用例記載のものも、右効果を奏し得るものであることは、自明のことというべきである。したがつて、右効果が、本件考案にとつて格別のものということはできない。
そして、審決が、本件考案と第一引用例記載のものとの間の相違点について判断するに当たり、第二引用例に、本件考案の右効果を期待した構成が記載されていると認定した点にも、誤りはないというべきである。
(6) 原告は、本件考案のポケツトの製造に当たつては、第一工程において、二枚の布を同一平面に広げて重ね合わせ、別紙図面(1)の第1図のとおりほぼ矩形状で、二個所の底部コーナー部1、1′を丸形とした形状に裁断し、これを連続して行い、第二工程では、連続してテープ6の縫着が行われるので、ポケツトが連続して完成するという効果が奏されると主張する(取消事由の項7)。
しかし、この点は、本件考案のポケツト用袋の製造工程に関する事項であるし、前記1の本件公報の記載によると、その考案の詳細な説明の項には、一切記載されていない事項であることが明らかである。右考案の詳細な説明の項の「更に上記構成したポケツト用袋の縫製は、同一平面を縫着することによつて出来(中略)能率的に行うことが出来」(第二欄第一六ないし第一九行)るとの記載においても、原告主張の右効果が記載されているということはできない。
(7) 原告は、本件考案では、テープに二本の折返し縁があるので、テープの両側縁からテープの生地の織糸のほつれが生じることはないと主張する(取消事由の項8)。
しかし、前記1の本件公報の記載によると、その考案の詳細な説明の項には、テープの両側縁からテープの織糸のほつれが生じることがないとの点が記載されていないことが明らかであるし、また、この点は、バウンド・シーム縫法によつて縫着されたテープが本来的に奏する効果にすぎないものというべきである。
さらに原告は、第二引用例記載のものでは、内側の縫目3は、ポケツトの実質上の大きさを限定する目的のためのものであるとされているが、前記1の本件公報の考案の詳細な説明の項に記載の、「ポケツト用袋内へ蔵納される商品の重み、嵩張りによつて生ずる生地引張力に前記縫着部が抵抗してテープ縫着部の負担を軽減しポケツト用袋の物品収容耐久力を向上する効果」を奏するとの本件考案の効果については、何らの示唆もされていないと主張する(取消事由の項8)。
しかし、第二引用例記載のもののポケツト用袋においても、外側の縫目4と内側の縫目3を有するのであり、この点で、本件考案の構成と異ならないのであるから、第二引用例記載のものも、本件明細書に記載の右効果を当然に奏するものというべきである。原告の右主張は理由がない。
なお、原告は、本件考案の内側の縫着線とテープ縫着線とが相乗効果を発揮して、第一、第二引用例記載のものの個々の効果の総和以上の物品収容耐久力が増加するという効果を奏する旨主張するが、前記1のとおり本件公報の考案の詳細な説明の項には、「テープ縫着線と平行して其の内側に補助的な縫着が施されているからポケツト用袋内へ蔵納される品物の重み、嵩張りによつて生ずる生地引張力に前記縫着部が抵抗してテープ縫着部の負担を軽減しポケツト用袋の物品収容耐久力を向上する効果がある。」と記載されているから、商品の重み、嵩張りによつて生ずる生地引張力は、専ら内側の縫着線に作用するものと考えられ、内側の縫着線とテープ縫着線とが相乗効果を発揮することについては、その根拠を見いだし難い。したがつて、原告主張の右の点も、理由がない。
6 (総括)
以上みてきたところによると、原告主張の審決取消事由はいずれも理由がなく、本件考案は、第一、第二引用例記載のものに基づいてきわめて容易に考案をすることができたものとした審決の判断は、正当である。
三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却することとする。
〔編註その一〕本件考案の要旨は左のとおりである。
底部コーナー部を丸形裁断した二枚のポケツト用袋片が重合され、その上方縁部を残して周縁部が両側縁を中心に向けて夫々折返えして折返えし縁を形成したテープの折返えし縁間に挟まれて縫着され、且つ該テープ縫着線の内側にこれと平行してポケツト用袋片を縫着されて成るズボンのポケツト用袋。(別紙図面(1)参照)
〔編註その二〕本件に関する図面は左のとおりである。
別紙図面(一)
<省略>
別紙図面(二)
<省略>
<省略>
別紙図面(三)
<省略>
(以下省略)