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東京高等裁判所 昭和59年(行ケ)208号 判決

二 そこで、本願商標と引用商標の類否を検討する。

1 本願商標が「ユベキノン」、引用商標が「ユビキナン」の称呼を生じ、いずれも五音構成で、このうち第一、第三、第五のひとつおきの各音を共通にし、差異のある第二音(「ベ」と「ビ」)及び第四音(「ノ」と「ナ」)はいずれもそれぞれが同行音の近似音であること、両者を一連に称呼した場合語韻語調において相似のものとして聴取され、また、両者がいずれも特定の観念を有しないものであること、したがつて、両者は呼称上混同されるおそれがあると認めるのが相当であることは、すべて前記審決の理由の要点3の判断に示されるとおりである。

2 原告は本願商標のうち「ベキ」「ノン」につき、引用商標のうち「ユビキ」「ナン」につきそれぞれ連想すべき意味を列挙し両者の別異感を主張するが、商標は一連の語として称呼され、それがそのまま聴取されるのであり、特に本件商標及び引用商標のように全体として特定の観念を有しない造語にあつては、聴者はかかる一連の称呼のうちの一部分について分断されたものとして個別に特定の意味を感得した後において改めて全体を対比しその類否を判断するものではなく、全体的な言葉のひびきから受ける印象によつて直感的にこれを判断するのが通常である。かかる観点に立てば、聴者は前記のような両者の称呼を一連のものとして聴取した場合これを類似のものと感じ、両者を混同するおそれがあるものということができる(特に引用商標中の「ユビキ」に原告主張のような意味があるとしても、「湯引き」なる語は日常頻繁に用いられていないから、聴者がこれを意味のある語として感得するということは通常あり得ないところというべきである。)。

したがつて、原告の右主張は両者の類似性を否定する根拠とはならない。

3 原告が援用する成立に争いのない甲第九ないし第二六号証、第二八ないし第四四号証の審決はいずれも本件と事案を異にし、また、判断の相当性に疑問のあるものもないではないから、これら審決の存在が前記判断を左右するものではない。また、本願商標及び引用商標が薬剤の商標なるが故にその類否判断について特別な扱いをしなければならない理由は見出しがたいし、両者が混同されたことがないとの主張についてもこれを認めるに足りる証拠はない。

4 更に、原告は審決後引用商標をその商標権者から譲受け近く移転登録される予定であるから、本願商標の登録を拒絶すべき事由は消滅した旨主張する。

しかし、審決の適否は審決時を基準として判断すべきであるから、本願商標出願前に他人により登録された本願商標に類似し、かつ指定商品を同じくする引用商標が審決時においてもなお他人に帰属していると認められる以上、商標法四条一一号により本願商標の出願を拒絶すべきものとした審決は適法であつて、後日審決取消訴訟の段階において原告が引用商標を譲受けたとしても、右拒絶事由は消滅するものではなく、右譲受けの事実によつて審決が違法なものとなるものでもない。

5 以上のように原告の主張はすべて理由がない。

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