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東京高等裁判所 昭和59年(行ケ)69号 判決

(争いのない事実)

一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本願発明の要旨及び本件審決理由の要点が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いのないところである。

(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 原告は、本件審決は、第二引用例記載の一定数の球の自動補給制御手段に関する技術的事項を第一引用例記載のものに採用したものから、本願発明の定量補給制御手段を想到すること、及び第三引用例記載の自動打止制御に関する技術的事項を第一引用例記載のものに採用したものから、本願発明の自動打止制御手段を想到することは容易である旨誤認し、かつ、本願発明の格別の作用効果を看過した結果、本願発明は、第二引用例記載の一定数の球の自動補給制御に関する技術的事項及び第三引用例記載の自動打止制御に関する技術的事項を、それぞれ第一引用例に記載のものに採用することによつて当業者が容易に発明をすることができたものとの誤つた結論を導いたものであり、違法として取り消されるべきである旨主張するが、原告の右主張は、すべて理由がないものというべきである。すなわち、

1 前示本願発明の要旨に成立に争いのない甲第二号証(本願発明の特許願書並びに添付の明細書及び図面)、第三号証(昭和五三年四月二八日付手続補正書)、第四号証(昭和五四年四月六日付手続補正書)、第五号証(昭和五五年三月一八日付手続補正書)及び第六号証(昭和五八年一〇月三日付手続補正書)を総合すれば、本願発明は、パチンコ遊技機の管理装置に関する発明であつて、パチンコ遊技機においては、打込球よりも景品球として遊技客に供給する球数の方が多くなつて、景品球貯留タンク内の球が次第になくなつてくると、補給球供給装置から景品球貯留タンク内へ球が補給されることとなつており、従来は、補給球供給装置からの小刻みの球の供給を避けるために、機械的な歯車構成の定数カウンタを用いて、例えば四〇〇個とか五〇〇個とかいうような一定数の球の供給がなされていたのであるが、このような定数カウンタは、大きなスペースをとり、故障しやすく、摩耗や球詰りが生じやすいことから、補給が円滑に達成され得ないという問題点があり、また、機械的な定数カウンタに代えて、電磁カウンターを用いても、応答速度が遅いため、正確な定量補給ができないという問題点があり、加えて、従来は、補給球供給装置の駆動制御と打止制御とを別々に行つていたことから、装置の構成が複雑かつ高価になるという問題点があり、こうしたことから、リードスイツチ等を用いて景品球貯留タンク内の景品球量があるレベルより少なくなつたことを検出して補給を開始し、該レベルを超えると補給を終了する方法も考えられるが、この方法では、一回の補給球数が比較的少量に制限され、補給球数を可変できないという問題点があることから、本願発明は、補給球供給装置の駆動により、一回の補給動作で高精度に定量補給でき、しかも、定量補給制御と打止制御を共通の管理装置で管理して、その簡略化をはかり、かつ、安価にできるように改良すること、並びに一回の補給球数を比較的少ない数から多い数まで広範囲に、かつ、容易に選べるようなパチンコ遊技機の管理装置を提供することを目的として、本願発明の要旨(本願発明の明細書の特許請求の範囲の記載と同じ。)記載のとおりの構成を採用したものであり、右構成を採ることにより、補給球供給装置を電子的に駆動制御して一回の補給動作で高精度に定量補給することができるとともに、予め設定した打止球数に達すると、定量補給中であつても補給制御を禁止するので、予め設定した打止数で正確に打止制御でき、また、定量補給と打止制御とを共通の管理装置で管理できるため、回路構成を簡略化できるので、装置を安価に作ることができ、更に、電子カウンタを用いるため、応答性が速く、それだけ高精度な定量補給や打止制御を達成することができるとともに、カウンタの形状が小さいことから、パチンコ遊技機の設定スペースを小さくでき、球詰りや摩耗などの故障が生じるのを防止することができ、また、第2の電子カウンタによる一回の補給球数を任意の数に設定できるので、営業方針に基づいてパチンコ遊技機のいわゆるスランプ状態を作ることが可能となり、各々の遊技場によつて、また、同一の遊技場であつても、営業日や営業時間によつて、球の出具合の波を大きくしたり、小さくしたりすることにより、その地域又はその店の遊技客の好みに合わせた営業が可能となり、更に、打止後、再度パチンコ遊技機が使用可能となるので、連続して打止者又は他の遊技者が遊技できる等の作用効果を奏するものと認められる。

一方、成立に争いのない甲第七号証(第一引用例)によれば、第一引用例は、本願発明の特許出願前に国内において頒布された、名称を「パチンコ遊技台における追加球、引球の計数表示装置」とする発明の特開昭四七―第二四四二九号公開公報であつて、そこには、(1)球溜2、管3、7、補給管4、関所的制限装置5、計数装置6、8、リードスイツチ9が設けられたパチンコ遊技台1と、電気的記憶装置10、11、常開型スイツチ12、13、これを操作する押釦、電気計算装置14、表示部15からなる、各パチンコ遊技台を管理する管理装置、及び右管理装置をパチンコ遊技台とは別体に設けたこと(この点は原告の認めるところである。)が記載されているほか、(2)パチンコ遊技台の球溜の球が一定量以下になつたことの検出出力により、一定数の球を自動補給するとともに、打止めのため等に使用するために、追加球と引球との計数差を求めるという技術的事項、具体的には、パチンコ遊技台1上の球溜2内の賞球が所定の最少量になると、球溜2内に近接して設けられたリードスイツチ9が閉じ、電源Eからの電流が関所的制限装置5の電磁石の励磁コイルに流れて同電磁石が励磁され、決まつた数、例えば一〇〇個の追加球が、補給管4から計数装置6を経て球溜2に追加され、また、パチンコ遊技台1において、遊技者が遊技のために消費した引球は、管7、計数装置8を経て、パチンコ遊技台1から適当な場所に送られるが、計数装置6、8を通過した追加球、引球の数は、電気的パルス信号として電気的記憶装置10及び11に送られて記憶され、一個の押釦で同時に操作される常開型スイツチ12、13を、押釦を押して閉じることにより、前記記憶された追加球と引球の数に相当する出力信号a、bが電気計算装置14に送られるとともに、表示部15に送られて、その数A、Bが表示され、また、電気計算装置14は上記信号aとbとの差を計算して、その差信号cを表示部に送り、追加球と引球の差数Cを表示する旨の技術的事項及び(3)遊技場の管理者は、所望の遊技台に対応する押釦を押すことにより、当該遊技台の追加球数と引球数及びその差数を知ることができるので、開店営業中においては、右情報を打止めの判断をする資料とすることができる旨が記載されていることが認められる。そして、前認定のとおり、補給管4、管7を球が通過するたびに、計数装置6、8から発生される電気的パルス信号は、いずれも電気的記憶装置10、11に送られて電気的に記憶されるのであるから、第一引用例記載の電気的記憶装置10、11は、計数(カウント)を電子的に行う電子カウンタとみることができ、また、前認定のとおり、第一引用例記載の発明においては、追加球の計数は、計数装置6と電気的記憶装置10とによつて行つており、関所的制限装置5は、追加球の数を計数したり、更には、その計数に従つて追加球の数を制御するカウンタとしての機能を有するものとは認められないが、電磁石の作動ごとに、例えば一〇〇個の追加球の通過だけを許すものであるから、これを補給球供給装置とみることができる。

2 叙上認定の事実に基づいて、本願発明と第一引用例記載のものとを対比してみるに、第一引用例記載のパチンコ遊技台の球溜2、関所的制限装置5、計数装置6、計数装置8及びリードスイツチ9は、その機能からみて、本願発明のパチンコ遊技機の景品球貯留部材(景品球貯留タンク)20、補給リレー11と補給ソレノイド12とシヤツタを含む補給球供給装置10、不利益球検出手段13(補給球検出装置13)、利益球検出手段45(回収球検出装置45)、景品球量検出手段26(景品球容量検出回路(リミツトスイツチ)26)にそれぞれ相当し、したがつて、本願発明のパチンコ遊技機自体の構成は、第一引用例記載のパチンコ遊技台の構成と変わるところはなく、また、前認定のとおり、第一引用例記載の管理装置に設けられる電気的記憶装置10、11は、電子カウンタとみることができ、更に、電気計算装置14は、右記憶装置10の出力信号と記憶装置11の出力信号との差数を計算するものであるから、電気的記憶装置10、11、電気計算装置14からなるものは、本願発明の第1の電子カウンタに相当するものとみることができるから、第一引用例記載のものが本願発明の第1の電子カウンタに相当するものを備えている点においても変わることなく、更に、第一引用例記載の発明においても、パチンコ遊技機全体を管理する管理装置を、パチンコ遊技機とは別に設けているという点においても本願発明のものと変わるところはないが、本願発明が、(1)不利益球検出手段の出力があるごとに、その計数値を歩進し、その計数値が予め設定された補給球数に達したときに補給停止指令信号を導出する補給球数の設定数を可変可能な第2の電子カウンタ及びその補給停止指令信号に応じて補給球供給装置の駆動を停止させて、前記第2の電子カウンタで設定された球数だけ定量補給する補給制御手段を備え、(2)第1の電子カウンタが、予め設定された打止球数に相当する差数を計数したことに基づいて、補給制御手段の補給制御を禁止する打止制御手段及び右打止制御手段をリセツトして、再度パチンコ遊技機を使用可能状態にするための開放指令信号(リセツト信号)を導出する開放指令手段を備える、という構成を有するのに対し、第一引用例記載の発明は、そうした構成を有しないという点で相違するものと認められる。

そこで、まず、右の相違点(1)について検討するに、第一引用例記載のものに設けられる関所的制限装置5(前示のとおり、本願発明の補給リレー11、補給ソレノイド12及びシヤツタを含む補給球供給装置10に相当)は、前認定のとおり、追加球を計数したり、更には、その計数にしたがつて追加球数を制御するという機能を有するカウンタではないが、球溜内の賞球がなくなるか、又はそれに近い状態になると、電磁石の作動により、自動的に毎回決まつた数(例えば一〇〇個)の追加球の通過だけを許容するものであるから、その意味で、そこには、決まつた数の追加球だけを自動補給するという定量補給制御の技術的思想が示されていると解することができる。そして、成立に争いのない甲第八号証(第二引用例)によれば、第二引用例は、本願発明の特許出願前に国内に頒布された、名称を「パチンコ機の賞球自動計数・補給装置」とする発明の特公昭四九―第一二三〇五号特許公報であつて、そこには、(1)電磁カウンターAは、一位から万位までの単位を有する数字ドラムを有し、その上部に接点機構Bが設けられていて、右数字ドラムの歯車14と接点機構Bの歯車11との噛み合わせ方により、賞球の補給球数を自由に設定、変更し得るものであること、(2)右電磁カウンターAは、パチンコ遊技機の側に設けられたコントロール・ユニツト部Dではなく、これとリード線により接続されたカウンター・パネル部Cに設けられていること、及び(3)賞球タンクに球がなくなると、接点Sw5の動作でゲート4が開き、カウンターケース2から球が流出して賞球タンクに補給され、同時に、カウンターケース2の出口に設けられる球計数接点6が球の流出により接触するごとに電磁カウンターAの数字ドラムが回転し、予め設定した補給球数まで回転すると、接点機構Bの歯車11に取り付けられたドラム12の中心導体接点15が、接点端子13と13とを導通して、電磁ストツパーリレー5を作動させて、カウンターケース2内のゲート4を閉じて補給球の補給を制御するという、電磁カウンターを用いて、予め設定した数の補給球を自動補給制御するという技術的事項、これを機能的に説明すると、賞球タンクに球がなくなると、接点Sw5が閉じ、リレーM2が励磁されて接点M2a(別紙図面(三)の第3図のm2a)が閉じ、リレーM2が接点Sw5が開いても接点M1b(別紙図面(三)の第3図のm1a。なお、右m1aは、m1bの誤記と認める。)が開くまで励磁されたままに保持され、一方、接点M2b(同じくm2b)は開いて、電磁ストツパー・リレーAR(前記電磁ストツパー・リレー5に相当する。)の励磁を解き、ゲート4が開いて、カウンターケース2から球が流出して賞球タンクに補給され、同時に、カウンターケース2の出口に設けられる接点Sw6(前記球計数接点6に相当する。)が球の流出により接触するごとに電磁カウンターMC(前記電磁カウンターAに相当する。)を励磁して流出球数を計数し、その数が予め設定した補給球数に達すると、電磁カウンターMCは、その接点Sw2(前記接点機構Bに相当する。)を閉じて、リレーM1を励磁し、接点M1bを開いて、リレーM2への通電を解き(補給により、接点Sw5は既に開いている。)、これにより接点M2bが閉じて、電磁ストツパー・リレーARを再び励磁してゲート4を閉じ、球の補給を止め、賞球の補給を次回まで停止するという技術的事項並びに(4)電磁ストツパー・リレーARを励磁状態に保持することにより、ゲート4を閉めて、賞球タンクへのカウンターケース2からの賞球の補給を停止して打止めを行うことができるという技術的事項が記載されているものと認められる。右認定事実によると、第二引用例には、任意に補給球数の設定数を変更することのできる電磁カウンターを使用することにより、所定数の賞球を自動補給し、かつ、打止めを行うことのできるパチンコ遊技機の賞球自動計数補給装置が記載されており、リレーM2は、電磁カウンターMCが計数動作をしている間励磁されていて、その接点m2bを開き、電磁ストツパー・リレーARの励磁を解いてゲート4を開き、カウンターケース2から賞球タンクへ球を補給するものであり、右電磁カウンターは、補給球と球計数接点6との接触があるたびに、すなわち、カウンターケース2から賞球タンクへ球の補給があるたびに、その計数値を歩進し、その数値が予め設定した補給球数に達したときに、接点Sw2が閉じてリレーM1を励磁してリレーM2の励磁を解き、カウンターケース2からの球の流出を停止するのであるから、接点Sw2が閉じてリレーM1を励磁することは、電磁カウンターが補給停止指令信号を発することと技術的には同じものとみることができ、右の電磁カウンターの機能は、本願発明の補給球数の設定数を可変可能とする第2の電子カウンタの機能と何ら異なるところはなく、本願発明の第2の電子カウンタに相当するものと認められ、かつ、第二引用例の右補給制御手段は、本願発明の補給制御手段に相当するものと認められる。そして、パチンコ遊技機において、球の通過を電気的に検出し、その検出信号を計数するのに電子カウンタを用いることが前認定のとおり第一引用例に記載され、また、後記認定のとおり第三引用例にも記載されているのであるから、右電磁カウンターに代えて、本願発明の第2の電子カウンタの機能を有する電子カウンタを用いることも、格別困難なこととは認められず、また、右の電子カウンタを管理装置に設けることも、前認定のとおり、第一引用例に記載され、また、後記認定のとおり第三引用例にも記載されて公知であるから、右の電子カウンタだけをわざわざパチンコ遊技台に設ける理由はないから、何ら困難なこととは認められない。

叙上のとおりであるから、本願発明が、相違点(1)の構成を具備した点は、第一引用例及び第二引用例の記載から容易に推考できる範囲のものということができる。原告は、第一引用例記載の関所的制限装置5又は第二引用例記載の電磁カウンターを電子カウンタに変更し、その設置場所をパチンコ遊技機側から管理装置側に変更し、更に、そのような電子カウンタを他の構成とともに電子的にまとめた管理装置を実現することは、極めて大きい困難性を伴う旨主張し、その理由として、設置場所の点については、第一引用例記載の関所的制限装置5も、第二引用例記載の電磁カウンターも、ともに従来からパチンコ遊技機側に設置するのが普通であり、これらを管理装置側に設置するという考えは全く存しない旨述べているが、第一引用例記載の関所的制限装置5及び第二引用例記載の電磁カウンターを電子カウンタに変更することに格別の困難性がないことは前認定説示のとおりであり、管理装置の設置場所の変更の点は、第一引用例記載の関所的制限装置5は、パチンコ遊技機側に設置されているが、本願発明の第2の電子カウンタに相当するものではないことは明らかであり、また、第二引用例の電磁カウンターは、パチンコ遊技機の補給側に取り付けられたコントロール・ユニツト部Dではなく、これとリード線により接続されたカウンター・パネル部Cに設けられているのであるから、少なくとも、パチンコ遊技機に取り付けられていないことも明らかであるから、原告の右主張は、その前提となる事実を誤認したことに基づく主張であるといわざるを得ず、更に、電子カウンタを他の構成要件とともに電子的にまとめた管理装置を実現することは、パチンコ遊技機において、管理的な手段をまとめて管理装置として集中化し、かつ、これらを電子化して自動化することが、前示第一引用例及び後記認定の第三引用例の記載からみて、本願発明の特許出願前公知であることに徴すれば、格別に困難なことということはできず、したがつて、原告の右主張も、採用することができない。また、原告は、本願発明のように、第2の電子カウンタを採用するに際し、その入力を、第1の電子カウンタの入力と共通な不利益球検出手段から得るようにすること、すなわち、一つの入力信号を、二つの電子カウンタの入力信号として使用するようにすることは困難である旨主張するところ、第一引用例にも、また、第二引用例にも、不利益球検出手段の出力を補給球数用カウンタ及び不利益球数と利益球数との差数計数用のカウンタの入力として使用するという考え方について、これを示唆する記載はないが、第一引用例記載のものにおいて、関所的制限装置に代えて、第二引用例に記載されているような賞球自動計数・補給装置を用い、かつ、電磁カウンターに代えて、これと同じ機能を奏する電子カウンタを用いる場合には、この電子カウンタが、そのつどの賞球の補給数を計数し、記憶装置10が補給された賞球の合計数を計数、記憶することから、右電子カウンタと記憶装置10が、それぞれ、そのつどの賞球の補給数に相当する入力信号と補給された賞球の合計数に相当する入力信号を必要とし、そのためには、賞球の補給数を検出する手段と補給された賞球の合計数を検出する手段とを必要とすることは明らかであるが、第一引用例における補給される賞球の通過を検出する手段(計数装置6)は補給管4に、第二引用例におけるカウンターケース2から補給される賞球の流出を検出する手段(球計数接点6)は、賞球の通路出口に設けられていて、賞球の通過ごとに検出信号を出力するもので、それぞれの検出信号は同じものであるから、右の場合においては、記憶装置10の計数装置6からの入力信号を右電子カウンタの入力信号として用いれば足り、記憶装置10のための計数装置6とは別に、右電子カウンタのための、第二引用例の計数接点6のような検出手段を新たに設けることが無駄であることは明らかであり、したがつて、両者のための入力信号を、同一の検出手段による検出信号をもつて当てるとすることに格別の推考力を要するとは認められない。更に、原告は、第2の電子カウンタの設定数の変更を可能にすることは困難である旨主張するが、前認定説示のとおり、第二引用例記載の電磁カウンターも、その設定数を任意に変更することができ、それにより、補給球数の設定数を自由に設定、変更し得るのであつて、原告の右主張は、その前提となる事実を誤認したことに基づく主張であつて採用し得ない。原告は、更に、本願発明の補給制御手段の構成に想到することの困難性を主張しているが、前認定説示したとおり、第二引用例には、本願発明の補給制御手段と機能的に異ならない補給制御手段が示されているのであるから、右の点に困難性があるとはいい得ず、したがつて、原告の右主張も採用するに由ない。

次に相違点(2)について検討するに、前認定説示のとおり、第一引用例には、賞球の追加球数と引球数をもつて、営業中の打止めの判断資料とする旨の記載があり、また、第二引用例には、打止めは、電磁ストツパー・リレーARを励磁状態に保持し、ゲート4を閉めて、賞球タンクへの賞球の補給を停止することによつて行う旨記載されており、右記載に前認定の第一引用例及び第二引用例の構成を総合すると、第一引用例記載のものにおいて、打止めを行う場合には、球溜2へ球の補給を行う関所的制限装置5からの球の補給を禁止すればよく、また、第二引用例に示される電磁ストツパー・リレーAR及びゲート4を含む自動計数・補給装置を用いたものにおいて打止めを行う場合には、右補給装置の作動を禁止するようにすればよいことは明らかである。また、成立に争いのない甲第九号証(第三引用例)によれば、第三引用例は、本願発明の特許出願前に国内に頒布された、名称を「パチンコ遊技機に於ける自動打止め装置特許」とする発明の特開昭四九―第八六一三九号公開公報であつて、第三引用例記載の装置においては、(1)計算機6、デイスプレイ装置10、演算記録印刷装置11がパチンコ遊技機の全体を管理する管理装置を構成しており、右管理装置は、パチンコ遊技機とは別体に設けられていること(この点は、原告の認めるところである。)、及び(2)アウト球数、景品球数の計数は、電子カウンタを用いて行われていること(この点は、後記認定のとおり、アウト球、セーフ球の通過ごとに、計数機4、接点7が作動して、アウト球数、景品球数が電気的に計算機6に記憶されるとの事実から推認することができる。)のほか、(3)景品球と打込球との計数差に基づいて自動的に打止めをするという技術的事項、具体的には、セーフ球が一個通過するごとに、一個のセーフ球によつて排出される景品球数から一個を引いた数を計算機6に記憶させ、また、アウト球樋2の玉受樋3の出口に設けた計数器4を計算機6に電気的に接続し、計数器4を通過するアウト球を一個ごとに記憶させ、景品球とアウト球の差が所定値に達した際に、演算記録印刷装置11より打止信号の発信を行わせて、ソレノイドバルブ13を作動させて、補給樋12を自動的に閉塞させるという技術的事項が記載されていることが認められ(右事実のうち、打止信号の発信で、補給樋12に設けたソレノイドバルブ13を自動的に閉塞作動させることが記載されていることは、原告の認めるところである。)、右認定事実によれば、前認定の第一引用例における関所的制限装置5並びに第二引用例における電磁ストツパー・リレー5及びゲート4は、それぞれに第三引用例におけるソレノイドバルブ13に対応するものと解することができる。以上認定したところによると、打止操作を手動で行う代わりに、打止制御手段を設けて自動的に行うようにすることは、格別の推考力を要することとは認められず、その場合に、具体的には、打止制御手段によつて、関所的制限装置5の電磁石(第一引用例)あるいは電磁ストツパー・リレー5(第二引用例)の励磁を制御すればよいことは、容易に想到し得るものと認められる。また、第一引用例には、打止めの後、パチンコ遊技台を再び使用可能状態にすることに関しての記載はないが、パチンコ遊技台を打止状態にした以上は、これを再び使用可能の状態にする必要があることは明らかであるから、第一引用例のものにおいて、自動的な打止制御手段を採用した場合には、必然的に打止制御を解除ないし開放するための手段が必要になることも明らかであり、その場合に、具体的には、打止信号の発信を停止し、第一引用例における関所的制限装置5あるいは第二引用例における自動計数・補給装置が球の補給を行い得るようにすればよいことも、また明らかである。

叙上のとおりであるから、本願発明が、相違点(2)の構成を備えた点も、容易に推考できる範囲のものということができる。原告は、定量補給のための補給制御手段を打止制御に兼用することの困難性を主張しているが、右に兼用とは、補給制御装置を駆動して景品球貯留部材へ球を補給させ、補給停止指令信号に応じて補給球供給装置の駆動を停止させるという補給制御手段の補給制御を、第1の電子カウンタの出力の累積数が設定された定数に達すると導出される打止指令信号によつて禁止するという技術的手段のことを意味しているものと解されるところ、第一引用例記載のものにおいて、打止めを行う場合には、球溜2への補給を行う関所的制限装置5からの、あるいはこれに代えて第二引用例記載の自動計数・補給装置を用いて打止めを行う場合には、右各装置において行う球の補給を禁止するようにすればよく、その具体的手段としては、打止制御手段により、関所的制限装置5の電磁石あるいは電磁ストツパー・リレー5の励磁を制御すればよいのであるから、格別困難なこととは認められず、したがつて、原告の右主張は採用し得ない。また、原告は、第三引用例記載のものにおいて、打止制御が行われる場所は、本願発明における景品球貯留タンク20に対応する部分であるとの理解のもとに、打止制御の対象を景品球供給制御の禁止から補給球供給制御の禁止に変更し、打止制御を行う場所を、景品球貯留タンク20の出口から補給球供給装置10に変更することの困難性について主張するが、第三引用例のものにおけるソレノイドバルブ13は、景品球タンクの補給樋12に設けられており、景品球タンクへの球の補給を停止するようにしたものであることは前認定説示のとおりであつて、右事実からすれば、ソレノイドバルブ13を設けた補給樋12は、景品球貯留タンクの入口側に設けられているものと認められ、補給球供給装置であるから、本願発明と第三引用例記載のものにおける打止制御の対象及び打止制御を行う場所は、何ら変わるものではなく、したがつて、原告の右主張は、第三引用例の記載事項を誤認したことに基づく主張であつて、採用の限りでない。また、原告は、打止制御手段をリセツトする開放指令手段を設けることの困難性を主張するが、右手段を設けることに困難性があるとは認められないこと前認定説示のとおりであつて、右主張も採用し得ない。そこで、更に、作用効果の点を検討するに、本願発明の奏する作用効果は、前記1で認定したとおりであるが、右作用効果は、電子的に作動するカウンタを採用して補給制御及び打止制御を行うこととすることにより、当然に予測し得る作用効果であつて、それらの作用効果を超える格別のものとは認められないから、本件審決が本願発明の格別の作用効果を看過した旨の原告の主張は、採用することができない。

3 叙上認定説示したところによれば、本願発明は、第一引用例に記載のものに、第二引用例及び第三引用例記載の一定数の球の自動補給制御及び自動打止制御に関する各技術的事項を採用することによつて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとみるのを相当とし、本件審決の認定判断は正当というべきである。

(結語)

三 以上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法があることを理由に本件審決の取消しを求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却することとする。

〔編誌その一〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

パチンコ遊技機の稼働状態と球の補給を管理するためのパチンコ遊技機の管理装置であつて、前記パチンコ遊技機は、打込球がセーフ球となつた場合に与えるべき景品球を貯留するための景品球貯留部材と、前記景品球貯留部材に貯留される景品球容量が予め定める一定量以下になつたことを検出する景品球量検出手段と、前記景品球貯留部材へ球を補給する補給球供給装置と、前記補給球供給装置から前記景品球貯留部材へ補給されかつ遊技場側にとつて不利益となる球を検出する不利益球検出手段と、前記パチンコ遊技機へ打込まれかつ遊技場側にとつて利益となる球を検出する利益球検出手段とを含んで構成され、前記パチンコ遊技機に関連して設けられる管理装置は、前記不利益球検出手段出力と前記利益球検出手段出力(本願発明の明細書に「検出手段手段」とあるのは「検出手段出力」の誤記である。)とに応答して、不利益球数と利益球数との差数を計数する第1の電子カウンタと、前記不利益球検出手段の出力がある毎にその計数値を歩進し、その計数値が予め設定された補給球数に達したとき補給停止指令信号を導出する補給球数の設定数を可変可能な第2の電子カウンタと、前記景品球量検出手段出力に応じて前記補給球供給装置を駆動して前記景品球貯留部材へ球を補給させ、前記補給停止指令信号に応じて補給球供給装置の駆動を停止させて、前記第2の電子カウンタで設定された球数だけ定量補給する補給制御手段と、前記第1の電子カウンタが予め設定された打止球数に相当する予め定める差数を計数したことに基づいて、前記補給制御手段の補給制御を禁止する打止制御手段と、前記打止制御手段をリセツトして、再度パチンコ遊技機を使用可能状態にするための開放指令信号(リセツト信号)を導出する開放指令手段とから構成されることを特徴とする、パチンコ遊技機の管理装置。(別紙図面(一)参照)

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面(一)

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