東京高等裁判所 昭和59年(行コ)49号 判決 1986年3月27日
群馬県前橋朝倉町一丁目五番三号
控訴人(附帯被控訴人)
布施愛夫
同県同市同町一丁目七番地の一
控訴人
有限会社中央タクシー
右代表取締役
布施愛夫
同県同市同町一丁目八番地の六
控訴人
有限会社中央交易
右代表取締役
布施愛夫
右三名訴訟代理人弁護士
戸所仁治
東京都千代田区大手町一丁目三番二号
被控訴人(附帯被控訴人)
関東信越国税局長
大須敏生
右指定代理人
中西茂
同
三浦道隆
同
高野郁夫
同
池田寛三
同
村岡篤志
同
新津重幸
右当事者間の納税告知処分取消請求控訴、同附帯控訴事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 本件附帯控訴に基づき、原判決主文第一項を次のとおり変更する。
被控訴人(附帯控訴人)が、控訴人(附帯被控訴人)布施愛夫に対し、昭和四八年一一月二六日月納付通知書をもつてなした株式会社前橋中央自動車教習所の滞納国税につき第二次納税義務を告知した処分のうち、金額八四八五円七二三九円を超える部分を取り消す。
三 訴訟費用中、控訴人(附帯被控訴人)布施愛夫と控訴人(附帯控訴人)との間に生じた分(附帯控訴費用を含む)は、第一、二審を通じこれを二〇分し、その一を被控訴人(附帯控訴)の、その余を控訴人(附帯被控訴人)布施愛夫の各負担とし、控訴費用中、控訴人中央タクシー、同中央交易両名と被控訴人との間に生じた分は同控訴人両名の負担とする。
事実
第一当事者の求める裁判
控訴人(附帯控訴人)布施愛夫(以下「控訴人布施」という)、同有限会社中央タクシー(以下「控訴人中央タクシー」という)、同有限会社中央交易(以下「控訴人中央交易」という)(以下「控訴人ら」という)代理人は、「原判決を次のとおり変更する。被控訴人が各控訴人に対し昭和四八年一一月二六日付納付通知書をもつてなした株式会社前橋中央自動車教習所の滞納国税につき第二次納税義務を告知した各処分を取り消す。訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、控訴人布施代理人は、附帯控訴について、「本件附帯控訴を棄却する。」との判決を求めた。
被控訴人(附帯控訴人、以下「被控訴人」という)代理人らは、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする。」との判決を求め、附帯控訴として、「原判決中被控訴人敗訴部分を取り消す。控訴人布施の請求を棄却する。訴訟費用中、被控訴人と控訴人布施との間に生じた部分は、第一、二審とも同控訴の負担とする。」との判決を求めた。
第二当事者の主張
当事者双方の主張は、原判決事実摘示は同一であるから、ここにこれを引用する。
第三証拠
証拠関係については、本件記録中の書証目録、証人当目録各記載のとおりであるから、ここにこれを引用する(ただし、原審書証目録の認否欄中、書証の写しの申出に対する認否が、単に「認」ないし「不知」となるのは、いずれも原本の存在及び成立の認否の趣旨である。)。
理由
一 当裁判所は控訴人布施の本訴請求は、本件告知処分のうち八四八五万八二三九円を超える部分の取り消しを求める限度で理由があるが、その余は失当であり、また、控訴人中央タクシー、同中央交易両名の本件係争各年分訴各請求は、いずれも理由がないものと判断するが、その理由説示としては、原判決の理由(第一項ないし第五項)説示を、次のとおり加除、訂正し、かつ一部変更したうえ、ここにこれを引用する
1 原判決一九枚目表八行目の「第三二号証、」の次に「第三八号証、」を、同一二行目「結果」の次に「(原審)」を、同裏一行目の「結果」の次に「(原、当審)」を、同二〇枚目裏末行の「決算期」の次に「(昭和四六年一月二五日)」を同二一枚目裏六行目の「趣旨の」の次に「「営業件及び株式譲渡契約書」と題する」を、同二二枚目裏一一行目の「債務」の前に「足利銀行に対する右同額の手形貸付金」を、同行の「充てられていた」の次に「(この事実は当事者間に争いがない。)」を同二三枚目表六行目の「散し、」の次に「代表清算人に訴外山田福次郎が就任し、」を、同七行目の「教習」の次に「支」を、同行の「変更」の前に「、設置者を「佐々木志か」から「佐々木義治」にそれぞれ」を、同一〇行目の「東群馬」の前に「訴外横浜銀行を根抵当者、」を、同一二行目の「のため」の次に「同日付」を、同末行の「もつて」の次に「同年六月二五日付」を、同行の「とする」の次に「滞納会社から」を、同二三枚目裏四行目の「三月」の次に「二五日」を、同九行目の「布施愛夫」の次に「(原、当審)」を、同二四枚目裏一一行の「結果」の次に「(原審)」を、同二五枚目表二行目の「原告布施本人」の次に「(原、当審)」を、同五行目の「内容」の前に「目的、」をそれぞれ加える。
2 同二六枚目表三行目の「第三五号証」の前に「成立に争いのない乙」を、同行の「及び三、」の次に「第三八号証、」を同四行目の「三四号証、」の次に「弁論の全趣旨により成立を認める乙第三五号証の一、第三六号証、」を、同二七枚目表八行目の「(群銀当座預金)」の次に「を、同年一月二八日から同年二月九日までに五〇万三〇七七円を払戻したうえ、同年二月一〇日右当座預金を解約して」を、同行の「円」の次に「合計一一一万九五三一円」をそれぞれ加え、同九行目の「受けた。」の次に左の部分を加える。
「なお、右群銀当座預金一一一万九五三一円については、前掲乙第三三号証、第三四号証、第三五号証の一ないし三及び原審証人小林行の証言並びに弁論の全趣旨によると、次の事実が認められ、他にこの認定を覆すに足る証拠はない。
右一一一万九五三一円は、昭和四六年一月二八日の当時の群銀当座預金残高五二二万六六六〇円から滞納会社振出の未決済小切手六通の額面合計一六万二七〇〇円を控除した五〇六万三九六〇円について、さらに滞納会社作成の振替伝票四枚(前掲乙第三五号証の三)に基づいて右当座預金から同月二八日ないし三一日の間に支払われた合計三九四万四四二九円(内訳、給料三四一万四二九円、支払手形四〇万三〇〇〇円、雑費一〇万、地代家賃三万円)を控除した残額であるところ、控訴人布施は、右残額一一一万九五三一円について、当期群馬銀行当座預金勘定元帳(前掲乙第三五号の証の二)の同年二月九日付欄記載の同日現在の預金残高六一万六四五四円を翌一〇日に右預金を解約して全額払戻しを受けてこれを取得したほか、その差異五〇万三〇七七円についても、次のような事情に徴して、同月九日までにこれを取得したものと認められる。すなわち、滞納会社が、昭和四六年一月二八日から同年二月九日までの間、群馬銀行当座預金から払い戻した金額のうちには、滞納会社が自己振出小切手を自ら持参して現金化したもの(前記当座預金勘定元帳の出金欄に〇と記載されているもの)が、前記二月一〇日に払戻しに係る六一万六四五四円を除いても四五〇万円近く含まれていること、滞納会社の右当座預金に関する振替伝票は、前記振替伝票四枚以外にないこと、すでに判示したとおり、控訴人布施は、東群馬から、本件売買契約に基づいて、昭和四六年一月二五日ないし同年二月九日の間滞納会社の本件教習所に関する営業売上金の保管を委託されていたこと及び控訴人布施は、滞納会社の資産のうち本件契約書(1)に基づき東群馬に譲渡された本件教習所の営業用資産及び控訴人中央タクシー、同中央交易に対する後記(二)の各貸金債権を除いた全資金を無償で取得したものと推認されること等を総合して判断すると、前記群銀行当座預金の差額五〇万三〇七七円については、滞納会社が昭和四六年一月二八日から同年二月九日までの間、右当座預金から振替伝票によらずに払戻して現金化した金員中より控訴人布施が無償で取得したものと推認される。」
3 同二七枚目表一一行目の「九八九〇」を「九八八〇」に訂正し、同裏一行目の「同期間に、」の次に「什器備品(二一万六四二一円相当)、車両(二七二万八六〇六円相当)」を加え、同三行目の「受けた。」の次に左の部分を加える。「なお、右什器備品、車両については、前掲乙第三三号証、第三四号証、第三六号証、第三八号証、及び原審証人小林行並びに弁論の全趣旨によると、次の事実が認められ、この認定に反する原、当審におけける控訴人布施本人の供述は、前掲各証拠に照らしにわかに信用できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
右乙第三六号証は、滞納会社の昭和四五年一月二六日から同四六年一月二五日までの事業年度の法人税確定申告書添付の減価償却資産の明細書(以下「明細書」という)であるところ、右明細書の期首記帳価額に記載された当該事業年度開始日(昭和四五年一月二六日)の什器備品、車両の帳簿価額は、什器備品五八万五九二九円、車両一〇七七万五三五七円であり、右は滞納会社の昭和四五年一月二五日当時の貸借対照表(前掲第二二号証)の什器備品、車両の各価額と同額である。そして、右明細書の期末帳簿価額欄には、同四六年一月二四日現在の帳簿価額として什器六六万二一五六円、車両七五三万三九八八円と各記載され、さらに備考欄には、同月二五日現在の帳簿価額として、什器備品四四万五七三五円、車両四八〇万五三八二円と各記載されている。ところで、右昭和四六年一月二五日は、前判示のとおり、本件売買契約に基づき滞納会社から東群馬に本件教習所の営業用資産が引渡された日であり、また、右明細書上の本件教習所に関する教習用コースについては、その価額が、右期末記帳価額欄及び備考欄とも同一であること等に鑑みると、右明細書の備考欄の各記載は、昭和四六年一月二五日滞納会社が、が本件売買契約に基づき東群馬に引渡すべき資産についてその価額を記載したものと推認される。しかもこれらの事情に加えて、前判示のとおり、本件売買契約に基づき滞納会社が東群馬に引渡すべき教習用車両は二七台であるところ、右明細書の備考欄に価額が記載されている教習用車両はほぼそれに見合う台数であること及び控訴人布施は、滞納会社の資産のうち、本件契約書(1)に基づき東群馬に譲渡された本件教習所の営業用資産及び控訴人中央タクシー、同中央交易に対する後記(二)の各貸金債権を除いた残余全資産を無償で取得したものと推認されること等を総合して判断すると、昭和四六年一月二五日滞納会社が、本件売買契約に基づき本件教習所の営業用資産を譲渡した後に保有する資産価額のうち、什器備品、車両については、前記明細書の什器備品及び車両各欄の各期末価額欄及び備考欄に記載された各合計額の差額をもつて、控訴布施が無償譲渡により取得した価額と解するのが相当である。してみると、控訴人布施は、前記同期間に、滞納会社から、什器備品二一万六四二一円、車両二七二万八六〇六円各相当の資産を無償で取得したものと推認される。」
4 同二七枚目裏一〇行目の「原告布施本人」の次に「(原、当審)」を加え、同一三行目冒頭から同二九枚目表四行目末尾までの部分を全部削除し、同二九枚目表五行目の「そして」を「なお」に改め、同行の「前記」の次に「(1)ないし(3)、同七行目の「あるから、」の次に「たとえ、右各預金が短期間の間のうちに払戻されて滞納会社の整理資金原として使用可能な状態で通知預金されていたとしても、右」を同行の「足利預金」の次に「七〇〇万円」を、同行の「前信預金(1)」の次に「二〇〇万円」を、同八行目の「通知預金」の次に「一〇〇〇万円」を、同二九枚目裏三行目の「各預金、」の次に「什器備品、車両、」をそれぞれ加え、同三、四行目の「一〇三万六二〇二円」を「三九八万一二二九円」同五行目の「一七五万六二四八円」を「二二五万九三二五円」に、同六行目の「八五五〇万二二二八円」を「八八九五万〇三三二円」に、同九、一〇行目及び同三二枚表六行目の「八一四〇万九一三五円」をいずれも「八四八五万七二三九円」にそれぞれ変更する。
二 以上の次第で、控訴人布施の本訴請求は、右認定の限度で理由があるから、これを認容し、その余は失当として棄却すべきであり、控訴人中央タクシー、同中央交易両者の本訴各請求は、いずれも理由がないから、これを棄却すべきであり、これと一部(控訴人布施に関する部分)趣旨を異にする原判決は一部失当であるから、本件附帯控訴に基づき原判決主文第一項を変更することとし、本件控訴はいずれも理由がないから、これを棄却し、訴訟費用の負担につき、控訴人布施に対し行政事件訴訟法七条、民訴法九六条、八九条、九二条本文を、その余の控訴人両名に対し行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条、九三条一項本文を各適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官中島恒は転補のため署名押印することができない。裁判官 佐藤繁 裁判官 塩谷雄 裁判官 佐藤繁)