大判例

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東京高等裁判所 昭和60年(ま)2号 決定

請求人 本田弘信

〔抄 録〕

そこで、関係記録を検討すると、請求人は昭和五八年一〇月一九日詐欺(以下「詐欺(一)」という)の事実により緊急逮捕され、引続き同月二一日勾留され、同年一〇月二九日身柄勾留のまま同事実により宇都宮地方裁判所真岡支部に起訴され、その勾留期間中の同年一二月八日及び昭和五九年一月一三日それぞれ別件の詐欺(以下「詐欺(二)」という)及び窃盗の各事実により追起訴を受け、審理の結果同年五月一七日右各事実につき有罪の判決を受けたが、請求人は同日これに対して控訴し、その結果同年一一月一九日当裁判所において、原判決の全部を破棄し、請求人を詐欺(一)(二)につき懲役一〇月に処し、原審の未決勾留日数中一二〇日を右刑に算入するとともに、窃盗については請求人を無罪とする旨の判決をなし、同判決は上告期間の経過により同年一二月四日確定したこと及び請求人は緊急逮捕された昭和五八年一〇月一九日から当裁判所の判決確定の日の前日である昭和五九年一二月三日までの間詐欺(一)により逮捕勾留されていたものであるが、その間同年七月四日から同年八月九日までの間は前刑の懲役刑の残期間の執行をも併せ受けたことをそれぞれ認めることができる。

ところで、右にみたとおり、請求人に対する逮捕勾留は詐欺(一)につきなされているものの、本件各事実の捜査及び公判審理の経過によれば、窃盗につき請求人に対する最初の取調がなされたと認められる昭和五八年一一月一一日から当裁判所の判決がなされた昭和五九年一一月一九日までの合計三七五日の期間につき、詐欺(一)の勾留は窃盗の捜査及び公判審理のため実質的に利用されたものと認められ、したがって、無罪となった右窃盗の刑事補償の関係では、右期間は窃盗につき逮捕勾留がなされた場合と同視されるべきである。

しかし、右期間のうち、(1) 前記のとおり請求人が前刑の執行を受けた昭和五九年七月四日から同年八月九日までの期間は刑事補償法にいう抑留又は拘禁に該当しないことは明らかであり、また(2) 当裁判所の判決において詐欺(一)(二)の刑に裁定通算すべきものとされた未決勾留の期間(この期間は、請求人の利益に考えると、詐欺(一)の未決勾留中窃盗に対する実質上の利用関係が認められない昭和五八年一〇月二一日から同年一一月一〇日までの二一日をすべて裁定通算の対象となる一二〇日に含まれるべきものとして算出するのを相当とするから、結局、同年一一月一一日から昭和五九年五月一六日までの間のうちの九九日となる)及び(3) 刑訴法四九五条により詐欺(一)(二)の刑に法定通算すべきものとされる同年五月一七日以降の期間(但し、前記の残刑の執行期間を除く)もそれが刑の執行とみなされる以上前記抑留又は拘禁に該当しないと解すべきである(最高一小決昭三四・一〇・二九刑集一三巻一一号三〇七六頁参照)。したがって、無罪となった窃盗につき刑事補償をなすべき期間として残るのは、昭和五八年一一月一一日から昭和五九年五月一六日までの期間から前記(2)の九九日を差引いた八九日となる。

そして、請求人は緊急逮捕された当時住居及び定職を有していなかったこと及び請求人に対しては形式的に逮捕勾留がなされている詐欺(一)の事実についてはもとより詐欺(二)の事実についても実質的に逮捕勾留の要件は存したと認められることその他刑事補償法四条二項の諸事情を考慮すると、請求人に対しては同条一項所定の金額の範囲内において、一日金三、〇〇〇円の割合で合計金二六万七、〇〇〇円を交付するのが相当と認められる。

(萩原 小林 奥田)

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