大判例

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東京高等裁判所 昭和60年(ネ)3034号 判決

これまでに認定した諸事情、殊に売買契約成立と同時に代金支払と土地の引渡が完了し、前記消滅時効完成の前後を通じて控訴人が本件土地を事実上自己の所有物と同様に支配してきたことを前提として考えると、被控訴人において本件土地の固定資産税を控訴人が負担する旨の控訴人の申入れに応じたこと及び控訴人の要請により本件土地につき自己と何ら係わりのない根抵当権設定登記手続に協力したことは、本件土地に対する控訴人の事実上の所有者としての支配を前記消滅時効完成後においても肯定し、ひいては控訴人がなお被控訴人に対し所有権移転登記請求権及びその前提たる農地法三条の許可申請協力請求権を有することを黙示的に承認したものとみるのが相当である。そして、被控訴人において前記時効完成の事実を知っていたことは弁論の全趣旨によって推認されるから、被控訴人において前記消滅時効の利益を放棄した旨の控訴人の主張は理由がある。なお附言するに、右のように消滅時効完成後に債務の承認をした以上、かりに被控訴人において時効の完成の事実を知らなかったとしても、その後に時効の援用をすることは信義則上許されないと解すべきである。

前記認定のとおり、控訴人は本件土地を事実上所有者と同様に支配してきたのであり、かつ被控訴人側に前記のとおり消滅時効の利益の放棄とみるべき事実が存在する以上、控訴人の右権利の行使をもって権利の濫用とみることは相当でなく、また権利失効の原則が適用される余地もないものと解される。被控訴人の右主張は採用することができない。

(森 高橋 清水)

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