東京高等裁判所 昭和60年(ネ)3199号 判決
控訴人は、民事執行法八七条二項の規定は、同法の制定・施行前に設定されていた本件建物についての控訴人の抵当権の効力を否定若しくは制限するものであるから、憲法二九条一項に違反し、無効である旨主張する。
しかしながら、ある債権者の申立てにより競売手続が開始された場合に、この手続により他の債権者にもできるだけ平等の満足を得させようとするいわゆる平等主義の下において、当該不動産につき、差押え若しくは仮差押えにより処分禁止の効力が生じた後の債務者の処分行為(たとえば、抵当権の設定)により権利を取得した者の地位をどのように扱うかは、憲法二九条二項に照らし、もっぱら立法政策ないしは立法裁量の問題と解されるところ、民事執行法八七条二項は、不動産の強制競売手続に関する定めの一環として、同条一項四号所定の債権者の権利が当該不動産に対する仮差押えの登記後に登記されたものである場合について、その債権者が、他の債権者の申立てに基づくその不動産に係る強制競売手続において、なお配当を受けることができる場合を限定的に定め、これにより強制競売手続における関係人の利害を合理的に調整し、同法施行前における立法上の不備から、具体的事案において配当順位を定める際に生じることのあった矛盾・疑問・難点を解消し、手続の明確・安定を図ることを目的とするものであるから、いまだ憲法二九条一項違反の問題が生じる余地はないというべきである。
したがって、民事執行法八七条二項の規定が憲法二九条一項に違反する旨の所論は採用することができない。
(後藤 奥平 尾方)