東京高等裁判所 昭和60年(ラ)126号 決定
右事実によれば、内(編注・申立外内俊孝)が本件建物について抵当権と併せて賃借権を取得し、その仮登記を経由した目的は、飯島(編注・申立外飯島幸雄)に対する金銭債権の履行確保のため、右抵当権設定登記後の第三者の短期賃借権の出現を阻止することにより、本件建物の担保価値を保全しようとしたものであって、用益自体を目的としたものとは認められず、内が同建物を相手方に転貸したのも、ひっきょう、右賃借権を利用して債権の満足をはかるためであると推認される。右認定を妨げるべき特段の事情を認めるに足りる資料はない。
このように不動産の用益自体を目的とせず、実質が担保権と異なるところのない賃借権又はその上に成立した転借権については、執行手続上もその実質にふさわしい取扱をすべきこと(右の各権利は買受人が売却代金を納付した時に消滅するものと解される。)及び民事執行法八三条一項の規定の法意に即して考えると、右のような賃借権又は転借権に基づく不動産の占有者は、差押えの効力発生前からの占有者であっても、同条一項本文にいう「事件の記録上差押えの効力発生前から権原により占有している者でないと認められる不動産の占有者」又はこれに準ずる者として、引渡命令の相手方となるものと解するのが相当である。
そうすると、右の転借人である相手方は、本件引渡命令の相手方となるべき者であるから、他に要件の欠缺が認められない本件引渡命令の申立ては、相当として認容すべきであり、これを却下した原決定は、その余の抗告理由について判断するまでもなく、取消しを免れない。
(中島 佐藤 塩谷)