大判例

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東京高等裁判所 昭和60年(ラ)365号 決定

一 本件抗告の趣旨及び理由は、別紙記載のとおりであるが、要するに、質権設定者である抗告人を審尋することなくなされた本件電話加入権換価命令は、民事執行法一六一条二項に違反するので取消されるべきであるというのである。

二 そこで、検討するに、電話加入権質の実行は、民事執行法一九三条一項の「その他の財産権」を目的とする担保権の実行として、同条二項の準用する同法一六七条一項により、債権執行の例により行なわれるべきところ、債権の通常の換価方法である取立又は転付命令によりこれを行なうことはできないので、同法一六一条一項により特別の換価方法を命じてこれを実行することになるのであり、電話加入権質に関する臨時特例法(以下、特例法という。)一一条の換価命令も、民事執行法一六一条一項所定の特別な換価方法のひとつに該当するものである。そうすると、民事執行法一六一条二項は、同条一項の規定による決定をする場合には債務者を審尋しなければならないものとしているので、執行裁判所が特例法一一条の換価命令をなす場合には、予め質権設定者を審尋する必要があるようにもみえる。しかし、民事執行法一六一条二項は、差押えられた債権について特別の換価方法を命ずる場合には債務者に不測の損害を生ずるおそれがあることを考慮し、これを防止するため債務者を審尋しなければならない旨規定したものにほかならないものであるところ、電話加入権の換価については、取立又は転付命令の方法は本来考えられず、かえって、譲渡命令、売却命令及び質権実行の場合にはこの他に特例法一一条の換価命令が通常の換価方法なのであり、債務者(質権設定者)としてはこれらのうちのいずれかの方法が採られるべきことを当然予期できるのであるから、執行裁判所が債務者(質権設定者)を審尋することなくこれらのいずれかの命令を発したとしても、債務者(質権設定者)に対し不測の不利益を与えるものではない。したがって、民事執行法一六一条二項の前記趣旨に鑑みると、執行裁判所が電話加入権についてこれらの命令を発する場合には、同条同項の準用はないものと解するのが相当である。そうすると、原裁判所が抗告人を審尋することなく本件の換価命令を発したことは相当であり、抗告人の前記主張は、理由がない。

(横山 菅本 加藤)

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