東京高等裁判所 昭和60年(ラ)48号 決定 1985年2月22日
抗告人 ファインクレジット株式会社
右代表者代表取締役 有馬俊一郎
右代理人弁護士 荒木孝壬
同 福屋登
相手方(債務者) 有限会社日研精機
右代表者清算人 大須賀邦男(ただし、商業登記簿上大須賀邦夫)
相手方(所有者) 大須賀邦男
相手方(第三債務者) 佐藤博
<ほか二一名>
主文
原決定を取り消す。
本件を前橋地方裁判所桐生支部へ差し戻す。
理由
抗告人は、原決定を取り消す、との裁判を求め、別紙のとおり抗告の理由を述べた。
よって、判断するに、記録によると、抗告人は、昭和五九年一一月一日、前橋地方裁判所桐生支部に対して、抗告人は相手方(債務者)に対し別紙担保権・被担保債権・請求債権目録2記載の債権を有しているが、その弁済がないとして、同目録1記載の根抵当権(物上代位)に基づき、相手方(債務者)が相手方(第三債務者)に対して有する別紙差押債権目録記載の債権の差押命令を求めたところ、同裁判所は、昭和六〇年一月八日、「抵当権は目的物の交換価値を把握するものとはいえ、使用、収益権限自体は所有者のもとに残した非占有担保権であるから、原則として、目的物利用の対価は抵当権の把握する目的の範囲外であり、これらが抵当権による物上代位の客体となりうるものではないと思料する。」として、右申立てを却下したことが認められる。しかしながら、民法三七二条により抵当権にも準用される同法三〇四条は目的物の売却、賃貸、滅失又は毀損によって、債務者(抵当権については所有者)が受けるべき金銭その他の物に対しても抵当権を行うことができる旨を定めているのであるから、抵当権の目的たる不動産が賃貸されている場合においては、物上代位に関する右規定により、当該不動産の所有者が賃借人に対して有する賃料債権に対し抵当権の効力が及ぶというべきであり、抵当権者はその被担保債権の弁済を受けるため右賃料債権の上に抵当権を行い、民事執行法の規定に基づいてその差押え並びに取立命令を求め得るものというべきである。
したがって、右と異なる原決定は失当であり、本件抗告は理由がある。
よって、原決定を取り消し、本件を原裁判所に差し戻すこととし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 森綱郎 裁判官 高橋正 小林克巳)
<以下省略>